第82話 勇者と国王軍の戦い
「何でここにさくら達と国王軍が……」
俺は顔を引きつらせて戦場を呆然と見ていた。
オオカミ型の魔物に取り囲まれているが、
さすがは国王軍、上手く連携を取って着実に魔物を倒し
減らしている。
「蒼字どうします?加勢しますか」
「今は良いでしょ、被害もなければ苦戦もしていない。
様子見で、何かあったら加勢しましょう」
このまま行ったら俺の正体がバレる!それは
出来るだけ避けたい。もしもの事を考えておかないと……
◆アルヴィア姫の視点
冒険者ギルドで衝撃の情報を聞いた私達は、
イスブルと言う森に向かうことにした。
正直かなり唐突な指示をしてしまったと少し後悔を
している。あの後ギルドマスターに黒ずくめの男に
ついて聞いたのだが、守秘義務があり答えることが
出来ないと頑なに教えてくれなかった。しかしギルド職員
から一緒に治療を協力していた美人の女性が同じパーティ
だと思うとポロッと教えてくれた。当然の如く、
ギルドマスターにげんこつをくらっていたが、これは
黒ずくめの男に再び会うことが出来るかもしれない。
そう思うと居ても立っても居られなかった。
◆陽菜乃の視点
黒ずくめの男がその場所にいるかもしれない!
今度こそ負けないんだから!私はアルヴィア姫が
攫われた時、自分の無力さに嘆き落ち込んだ。
これ程落ち込んだことは過去になかったかもしれない。
これがさくらだったら、私は狂い修羅になっていたと思う。
ちょっと言い過ぎかもしれないけど、ここは何があっても
おかしくない異世界なんだ!私はさくらやアルヴィア姫
友達を守れる力が欲しい。そう思い私はアルヴィア姫の
紹介で王国お抱えの宮廷魔術師を紹介して貰った。
私は師匠から様々な魔術を教えて貰った。
ここで活躍したのが固有スキル『追求する者』、
これのおかげて新たな魔術を習得することが出来た。
ここはまずは因縁の相手、黒ずくめの男を捉えて、
私のステップアップの礎になって貰うわ!
◆さくらの視点
黒ずくめの男………一体何がしたいの?
初めて会った時は、アルヴィア姫を攫った最低の人だと
思ったけど、アルヴィア姫は何事もなく返してくれた。
そしてさっきの事だけど、多くの人達を治療して助けて
くれた。本当にただの悪人だったらしないと思うけど……
黒ずくめの男には何か目的があるのかもしれない。
それと黒ずくめの男と別に気になることがある。
さっきからお母さんの様子がおかしい?すごく落ち着きが
ないし、聞いたら聞いたでマンガで出そうなくらい震えて
動揺するし、お母さん……秘密をするの苦手だもんな!
何を隠してるんだろう。ずいぶん必死で頑張るな〜
◆一花の視点
どうしよう!どうしよう!どうしよう!
何やってるのよ!蒼字くんこのままだと
さくらと戦うことになっちゃうよ!どうしよう〜
ここは私が上手く誤魔化さないと、さくらを守りつつ
蒼字くんを逃がす作戦を考えないとね!
そんな事を考えていると、魔物の大群に囲まれた。
も〜う、こっちは忙しんたがら邪魔しないでよね!
私は魔物を念動力でぶっ飛ばした!
◆蒼字の視点
「さすがは勇者様、いい動きをする」
前戦った時より着実に実力を上げている。あれはただ
レベルが上がっただけじゃなくて技術も上がっている。
陽菜乃は前と同じ二丁拳銃スタイルだが
前とは違う圧倒的な安定感、それを可能にしているのが
連射性能の向上、陽菜乃の銃の回りを弾丸が円を動くように
回っている。撃つたびに弾丸が自動的に装填され
隙を作らず撃ち続けることが可能。
さくらと一花さんは単純に念動力パワーが
上がっている。周辺の魔物をほぼ同時にぶっ飛ばして
圧倒している。
ほぼ魔物を殲滅した所に2体の魔物が現れた。
オークキングとオルトロス
さくらと陽菜乃は分かれてそれぞれを
迎え撃つ。
陽菜乃VSオルトロス
「ワン公、私が相手よ!かかってきなさい!」
陽菜乃は銃をオルトロスに向け撃った。
オルトロスは横っ飛びで躱し、陽菜乃はそれを追う様に
連射、高速移動で躱されているが接近させない。
「もう〜早いはね!」
陽菜乃は戦法を変更、両腕を上に向け
『ファイアーレイン』
空に向かい赤い弾丸か放たれた。
オルトロスは隙が出来たと思い一気に距離を詰める。
「もちろん、ワザと隙を作ったんだよ!」
陽菜乃は笑顔で真正面の地面に弾丸を
放つ、地面に魔法陣が展開され土壁が迫り上がり、
壁が出来た。
オルトロスは壁を破壊しようと衝突する。
「無駄だよ!その壁かなり硬いから!
土壁に硬化魔法と金属化魔法のトリプルで
かかってるんだ〜」
オルトロスはあまりの硬さに頭に効いたようで
フラフラと足が動き、定まっていない。
「ドドメだよ!」
オルトロスの真上から赤い線が多数飛来し
オルトロスを貫ぬていき、雄叫びをあげ倒れた。
「ん〜まだまだね!あのくらいの魔物にこんなに
手こずってたらダメ、もっと訓練しないと!」
陽菜乃は倒し終わったか、やるな〜
さくら達の方はどうかな。
さくら、一花VSゴブリンキング
俺が見た時、ゴブリンキングは所々から出血して
膝を着いていた。
「さっすがさくら!余裕じゃん、こんなに大きい敵に
一人で戦いたいって言った時はどうしょうかと思ったけど
心配しなくても良かったわね!」
「う〜んそんな事ないよ!ゴブリンキングは
速さも力もすごくあるから油断は出来ない。……けど
対応出来ないほどじゃない。
ゴブリンキングは人よりも大きな大剣を片手で扱い
さくらに振り下ろす。さくらは槍の柄で受け止め、
槍を巧みに動かし力を受け流した。剣は地面に刺さり、
その隙にさくらは接近し、すれ違いざまに薙ぎ払い
腹部を切り裂いた。
「お母さん、もう十分かな、動き止めて!」
「は〜い、『念動力発動』」
ゴブリンキングの動きが完全に止まる。
さくらは少し腰を落として左手を前に右手を後ろに構え
身体を捻った。
『魔力大槍』
槍に魔力を込め突撃力を上げ放った一撃は、
ゴブリンキングの腹部に大穴を空け、
大きな音をたて倒した。
ゴブリンキング相手に余裕か、さすがさくら。
それに本当は一花さんと協力すればもっと早く
倒せたのに試したなこれは……
二人の実力は確かなものになっていた。これなら
このまま任せても良いかもしれないな!
「みんな聞いてくれ、俺達はこれから先行して
森の中央に向かおうと思う」
キャンベルは現状把握のため質問をする。
「蒼字それは100体近くの高レベルの
魔物とこのまま戦うと言うことですか?」
「そうだ!ただし俺達がやるのはおとりと間引きだ!」
「おとりと間引き?」
「俺達はまず先行して中央の敵陣に向かい攻撃を
仕掛ける。ある程度注意を引けたら、引きながら
敵を誘導しつつ敵を分断して残りの魔物と黒幕は
勇者達と国王軍に任せる。そんな感じ〜」
「そんな感じ〜でいけますか?敵の戦力が
あくまで50レベル以上と言うことが分かるだけで
80レベルクラスが数体いたら間違いなく殺されて
しまいます」
「ん〜じゃ〜どうしようかな〜自分よりレベルが
高い魔物は検索出来ないことが多いし、実際に行って
確かめるしかないか、了解!キャンベルさんの言うことも
もっともな話だ!先行して行くことには変わりはないが、
想定以上の魔物がいたら、勇者達と国王軍に知らせて
逃げる。これで行こう!」
「あまり作戦らしい作戦ではありませんが分かりました」
「すいません、頭悪くって……」
キャンベルさんの一言がグサリと刺さり
落ち込む俺……
こうしてそれぞれの思惑が動き出す。




