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第80話 女は怖い?


◆蒼字の視点


「はい次!はい次!はい次、あ!感謝とか良いんで」

 俺は来る患者を片っ端から治していく!ちょくちょく感激して、感謝を述べたり抱きついたりする患者がいて時間を取られるが順調に進んでいる。


「おい、蒼字そうじ大丈夫か?」


「え!?…なに…が…です…ガルムさん」

 

「いや、さすがに疲れただろう。MPも持たないし、しんどそうだぞ」


「大丈夫…まだ…まだ余裕ですよ」


「そうか……無理すんなよ」


 俺は笑顔で答えた。

 MP(魔力量)には余力がある。大体四分の一ほど、しかし大怪我ばかりを治していれば疲労も溜まってくる。


「あと何人居るか知らんが……やるしかないだろ〜」

 俺は無理やり気合を入れ次の患者を待つ。



◆キャンベルの視点

 

 多くの怪我人が寝かされていたのに今はほとんどいなくなった。この絆創膏ばんそうこうはすごい!手軽でかつ効果が高い、貼り付けて30分もすれば骨折が治ってしまう。



「うそ!?さっきまであんなに酷い怪我をしていたのに……」

 大怪我で生死の狭間を歩いていたような人達が、あの部屋に入り出てくると、涙を流しながら笑顔で出て来る。


「あの部屋で一体なにが起こったの?」


「ご主人様が治療を行なっています」


「えっ蒼字そうじが、回復魔法が使えるの!?それにあんな大怪我を治せるなんて上級魔法しかないわよ」


「フフッそうです。ご主人様は偉大な方なのです」

 ジャンヌは手を組み神でも祈るように崇めている。


 私は好奇心からその部屋のノブに手をかけドアを開けた。


「おい!ちょっとは休め!」

「はぁ〜はぁ〜大丈夫です」

 黒ずくめの男が荒い呼吸で地面に膝をついていた。


「ご主人様どうされましたか!?いま回復魔法を……」

 黒ずくめの男は手でジャンヌを制止させ、

「ジャンヌ、大丈夫だ!ちょい疲れただけだから」と言うがどう見ても苦しそうに見える。


 この黒ずくめの男が蒼字そうじなの?

 何でこんな格好をしてるの?



「お〜い、キャンベルからも言ってやってくれ!すでに100人近くの重傷患者を治しているんだ。少しくらい休んでも問題ないってよ〜」


「ガルム、患者を治しているのはやはり蒼字そうじなのですか?」


「あーそうだ!奇跡を目の当たりにしている気分だぜ。まるでお前の兄貴を見ているようだ」

 その一言は私の心に鋭く突き刺さった。

 兄さん…アレス兄さん……私がもっと強ければ…


「お、お〜いなんか言ってやってくれ」

 ガルムの声を聞いた私は、無言で蒼字そうじに近づき、


『バチバチ』……「バタン」

 蒼字の首筋に手刀を当て電撃を当て気絶させた。


「おまえ、それは流石にやり過ぎじゃないか?」


「いいの、蒼字そうじはきっと言っても無理をするわ。これ以上はダメ!」


「カタン」………一瞬体が凍ったかと思う程強い殺気を感じ体が硬直する。


「キャンベル、ご主人様へと無礼を誰であろうと許しません!今回はご主人様のためを思っての行動と判断しまが、次はありません!貴方の首を飛ばしてしまうかもしれませんから以後気をつけてください」

 ジャンヌから放たれた殺気は徐々に薄れ消えた。


「ジャンヌ……ごめんなさい」

「……いえ、少々言い過ぎました。これではまたご主人様に怒られますね……」

 ジャンヌはそう言って蒼字そうじをベットに運んだ。




蒼字そうじの視点


「ん〜……ダッル〜」

 目が覚めると身体がダルくて動く気がしない。

 俺はどうなった?

 確か……あ、そうか俺は治療している途中で…

 

「ご主人様、お目覚めですか?」

 恐る恐る覗き込むようにジャンヌの顔が見えた。


「あ〜……俺はどれくらい寝てた?」


「5時間程です」


「そうか、すまないな」


 キャンベルさんが横から入ってきた。

蒼字そうじあなたは悪くないわ……私が」


「キャンベルさん、ありがとう、」


「え!?」キャンベルさんは驚く。


「疲れた過ぎて頭が回ってなかった。あのままやってたらきっとぶっ倒れていた」

 俺は頭を下げお礼を言った。

 

「いえ、あれは私の我儘でやってしまいました」

 キャンベルさんの言っている意味がわからなかったが、なにか思い詰めた顔をしていたので、深く突っ込むのはやめる。


「キャンベルさん良いですよ。それで患者はあとどのくらいいます?」


「え、ええ、軽傷患者は全員治ってる。重傷患者が数人いるけど命に関わる人はいないわ」

 

「そうか、了解、もう少し休んだらやれるから連れてきてください」


「また、あなたは無理はダメです!」


「アハハハ、今なら無理ではありませんよ。お願いしますね」


 それから2時間後、残り16人の患者を治療し、俺は再び眠りについた。




……………………▽


「ギルドを代表して感謝する。本当にありがとう」

 サマリンのギルマスナトリさんが深々と頭を下げてお礼を述べる。



「いえ、気にしないでください。やれることをやっただけですら」

 

「いや、そうなことはないさ。君の働きでどれだけの人が助かったか、今も外では君にお礼が言いたいと待っている者もいる。なぜかは知らないが君は正体を知らてたくないようだ。誤魔化してはいるがなかなか帰ってくれないよ」


「アハハハ、ご迷惑をおかけします」


「いや、気にしないでくれ、それで君達はこの後どうする?しばらくはここにいてくれるのか?」


 俺はキャンベルさんに目線を移す。


「それについては私からお話させてください。私は王都のギルドで受付嬢をしていますキャンベルと申します。ギルドマスターの命により視察に来ました。状況は想定よりかなり悪いと言わざるを得ませんね」


「あ〜そうなんだ3日前から魔物達がより活発に動き出している。しかも、ここを含めた周辺の町、村も襲い始めた。すでにいくつもの村が壊滅状態したと報告を受けている。このままではこの砦も1ヶ月もたないだろう。それだけに君達には感謝しかない」


「そうですか……」

 キャンベルは少し考えて、

「ナトリ様はこの魔物の増加についてどうお考えでしょうか?」


「あ〜それについてだが、やはり裏では魔王軍が絡んでいると思う……これが自然発生とは考えられない」


「私としても同感です。魔物達の動きには何らかの意思を感じられます。恐らく強力な魔物使いがいるかと」


「ん〜それはどうだろう……通常魔物使いは精々5〜6体の魔物を操るくらいだ、しかも強力な魔物ほど制御が難しい」


「そうですね……しかし私の経験から言わせて頂きますと群れの長に当たる魔物を使役出来れば、その魔物の配下をある程度制御することが出来ます。それにより多くの魔物に命令ができるのです」


「なるほど!!確かに……そうだ!気になっていたのだが、君はまさか『電影の騎士』じゃないのか?」


「え!?」

「ブフッ」

 キャンベルさんは驚き、ガルムさんは吹き出して笑う。


「えーっとですね」

「さすがは電影の騎士様だぜ!有名人は辛いね〜」

「ガッハハハ」とガルムさんは笑い。キャンベルさんの指先が「バチッ」と音を出す。


「そうかやっぱり!その佇まい、そして美しさ、決して捉えることが出来ない電影の騎士は健在だったのだな。私の息子と娘がファンでな、後でサインくれると嬉しい」


「二人共……真剣にやらないと魔物の餌にしますよ!」

 その一言にでガルムとナトリは背筋を伸ばし無言で頷く。

 

「話を戻しますけれども、蒼字なら捜せますか?」


「え!?お前そんなことも出来るのかよ」

 ガルムは驚きの声をあげた。


「出来るかは分からない、条件を何にするか、ピンポイントの条件は俺が死ぬしな」

 条件が厳しいと魔力というか俺の気力がもたなくって気を失って倒れるうえに検索出来ない。大損になる。


 俺が考えていると、


「ご主人様、それではこんなのはどうでしょうか……」


ジャンヌの出した条件は3つ

①サマリンから半径50キロメートルで魔物が多くいる方向

②ゴブリンキング、もしくはゴブリンジャネラル

③レベルが50を超える魔物



「さすがはジャンヌ、的確な条件です。これならある程度発生源を絞ることが出来そうです」


「どういう事だよ!キャンベル」


「少しは頭を使ったらどうですか?ガルム、ジャンヌはいまの3つの条件はとても理に適っています。


①サマリンと魔物の発生源との延長線に多くの魔物が通るはずです。発生源の方向はこれでは分かります。

②敵の中に居る魔物使いは魔物をまとめ役を何匹か作っているはず、その魔物は知能が高く統率力のあるゴブリンキングかジェネラルが好ましい。

③発生源には犯人と発生源を守るため レベルの高い魔物が配置されている。


 そこが発生源であり、今回の騒動を起こした犯人がいるわけです」


「それは分かったが、そもそも出来るのか?」

 ガルムは苦笑いをする。


「ご主人様に不可能はありません!ふざけたことを言う口は切り裂きます」


「……………なんでここの女はこえ〜んだよ!」

 ガルムさんはコソコソと俺の耳のそばに来て呟くが……



「ガルム、口は災いの元って知らないの?」


 ガルムさんの後ろから空を切る鋭い音が聞こえ、振り返ると、数十の剣撃が顔の前1cmで寸止めされ、ガルムさんは腰を抜かした。


 ……ホント怖いよね!ガルム。


「ジャンヌ、やり過ぎだから、それに実際出来るかはやってみないとわからないけどな」


 俺は魔力を高め筆に徐々に送る。


「結構ヤバそうだからじっくりと込めるか」

 訓練の結果、時間をかければより効果の高い検索が出来ることが分かっている。今回は検索範囲が広いから。


「1つ目だー『リアルマップ 転記』」

 紙の上に墨が伸び広がる。

 魔物を検索することが出来た。


「良し!すげぇ〜疲れたけど出来た!」

 紙にはたくさんの黒丸が点在している。

「これは、分かりやすかったな!」

 黒丸は明らかに北面の方角が多かった。


 ギルマスのナトリさんは地図を広げ、

「どうやら迷いの森、イスブルが怪しそうだ」


「OK!検索範囲をイスブルにしてゴブリンキングとジェネラルを検索する。『リアルマップ 転記』」


 紙の上にイスブルと同じく黒丸がいくつか現れた。


「は〜……これで間違いないな」

 イスブルには多数の黒丸が……この数の魔物が集まることはまずない。ここから魔物をが来ているのは間違いない。まずはここに行くか!


「ナトリさん、俺達はこれからイスブルに向います」


「ちょっと待ってくれ!?いくら何でも急すぎないか準備する時間をくれ!」


「大丈夫ですよ!行くのは俺達だけですから」


「待て待て!それこそ許可できない!君達だけ、危険過ぎる。慌て過ぎだ!こちらも急ぎ準備をするから待ってくれ!」

 ナトリさんは慌てて部屋を出ようとするが、


「ナトリさん待って、俺達は戦いに行くんじゃなくて偵察に行くだけだから」


「偵察?……しかし魔物が多数徘徊する森だぞ!リスクが高過ぎるだろう」


「…………いや〜大丈夫です。こちらには『電影の騎士』がいます!なにかあっても蹴散らしますよ!」


「なるほど、確かに『電影の騎士キャンベル』彼女ならやってくれる!そうだな!すまないが行ってくれるか」


「もちろんです!イスブルの偵察任務行かせて頂きます」

 ナトリさんか握手をを求めていたので、がっちりと手を握った。


蒼字そうじ、からかってますか?……「バチバチ」」


 冷や汗がダラダラと出る。


「キャンベルさん……いまのはからかったつもりではなくてですね」

 急ぎ否定するとキャンベルさんはニッコリ。


「そうですか……では……ちょっとだけ制裁しますね!」


「えっ!?」…………「ギャーー」

 俺は電撃(微弱?)を受け、手を繋いでいたナトリさんと一緒に叫んだ!


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