第70話 ジャンヌの誓い
「終わったのですね」
セレーナ様がこちらに歩いて来た。
「セレーナ様、腕は大丈夫ですか?」
腕を見ると死のオーラは消えており、
「大丈夫よ!ほら!この通り」
腕を上げ手を動かし治っていることが分かった。
「さすがはセレーナ様、欠損した腕を治す魔法が使えたんですね。良かった」
俺は心の底からホッとした。
「でも、もうMP(魔力量)がなくなったわ!今は早くベットでゆっくりと眠りたい」
セレーナ様は清々しい顔で笑っている。
彼女が上がれて嬉しいんだよな!
「蒼字、君はやっぱり凄いよ!私の目に狂いはなかったね!彼女を助けてくれてありがとう」
レイチェルは彼女を救えなかったことが心残りだったみたいだからな、もしかしたら今回の目的はこっちがメインだった可能性すらある。
「それにしてもさっきので階層主まで消えちゃったね」
レイチェルが指差す方向を見ると、リッチさんが居ない。やり過ぎたようだな。
「あら?……アランさんも居ないわ」
「えっ!?」セレーナ様に言われて周りを見るがアランさんがどこにも居ない。
「…………もしかして、俺……やっちゃった」
「まとめておっさんも逝っちゃったみたいだね!」
おでこに手を当て見上げるレイチェル
あ〜アランさんすいません!力加減とか考える暇なかったんです。ごめんなさい〜〜。
俺は呆然と天井を見上げていると、
「良いんじゃないかしら、きっと気持ちよく上がれたと思うわ。出来ればお別れの挨拶はしたがったけど」
セレーナ様に怒られるかと思ったけど、良かった。
リルがこちらにトボトボと歩いてくる。
何故か元気がない?
「蒼字さん…ごめんなさい。
私…怖くて動けなかったです」
なんだそんなことか、まったくリルは気にし過ぎなんだよ。
「リル、もう終わったことだ。そんなことで落ち込まなくていい!元気出せよ!」
俺はリルの頭を撫でるため手を上げようとしたが、腕に負荷がある。なぜだ?
「蒼字……?手に……手がある??」
セレーナ様の言っている意味が分からん。
取り敢えず手を見ると俺の手を握る手がある。
普通は完全にホラー、絶叫が出るレベルだが、
俺は一応慣れているから大丈夫、大丈夫。
手に光の粒子が集まりだんだんと人形を成していく。そして強烈な光を発し目を瞑り、次に目を開けると、
「あれ?失敗してしまいましたか?」
目の前には仮面の女が戻って来ていた。
「すいません……戻ってきちゃいました」
申し訳無さそうに仮面の女は頭を下げる。
……………………▽
「あがらずに戻って来たみたいですけど、なんで?」
「それはちょっと言いにくいです」
何故か顔を押さえてクネクネしている。
でも片手は繋がりっぱなし、どうもこの手が俺と彼女の縁となったようで、今放すとあがってしまうらしいので、手はそのままにした。
「あの!私を使役して下さい!」
「…………は!?」
俺はいきなりのことに驚き呆然としてしまう。確かに霊能者である俺なら式神として彼女と契約することが出来る。風太のようにこちらの世界に呼ぶことも出来るけど……
「いや〜それって良いのかな。恩を感じて言ってくれてると思うんだけど、そこまで気にしなくていいよ………え〜っとそう言えば名前を聞いていなかったね。俺は蒼字君は?
「すいません自己紹介がまだでした。私の名前はジャンヌ・クルス、元ですが聖女の任を仰せ使っていました」
「あ〜やっぱり聖女だったんですか、セレーナ様、あってましたよ」
セレーナ様の方を向くと、セレーナ様が今まで見たことがない表情で驚いて、ワナワナと震えている。さらに「ありえません」っと言っておられる。どういうこと?
「お願いです。私を使役してください!」
必死にお願いされているけど、女性を使役するのにはかなり抵抗があるんだよな〜。だってそれは彼女を俺が色んな意味で縛ることになるんだぞ。
「ん〜〜〜」ジーーっと見つめられ、たじろぐ俺。
「良いんじゃないか、お前は式を扱えるのにあまり増やそうとしないからな、昔ならバンバン式神にして使役していたものだ」
風太が突然現る。
仲間を増やしたいのかな?
「あ、風太先輩宜しくお願いします!」
犬に向って頭を下げるジャンヌ。
そして予想以上に嬉しそうにニヤニヤする風太。
「はぁ〜分かったよジャンヌ、嫌になったらいつでも言ってくれ契約は解除するから」
俺は諦めた。
「はい、やったーー!」
嬉しそうに両手を上げて喜ぶジャンヌ。
「それじゃー始める!」
「はい!」
「俺とジャンヌは手を繋ぐことで縁になり強い繋がりを作る。だからここに契約紋を書く」
俺がジャンヌの手の甲に筆を当てると魔法陣が展開され、
「ジャンヌ…お前は俺の式となり、俺を助けてくれて」
俺は友達を作るように軽い言葉で契約を求めたかった。
「…………はい、宜しくお願いします」
その問にジャンヌは笑顔で答えてくれた。
その瞬間魔法陣は収縮、ジャンヌの手の甲に刻まれた。
「アッアッアッアーー」
セレーナ様が大声で叫び腰を抜かしている。
本当にさっきかららしくない。
何を驚いているんだ?
「大丈夫ですか?セレーナさん」
ジャンヌがセレーナに手を差し伸べる。
「あの〜本物なのでしょうか?」※小声
「それはどのような意味でしょうか?」
ジャンヌは首をかしげる。
二人は見つめ合う形で固まる。
そこでレイチェルが「腹が減った」と言って五月蝿かったので、食事をすることにした。
ジャンヌも俺の式として契約したおかげで当たり前の如く実体化して食事のお手伝いをしていた。
しかも意外と手際が良く楽しそうに調理をしている。
改めて見るとジャンヌは凛とした美しさを持った女性、美しい白髪のロングストレートの髪、目がパチリとして鼻筋の通ったはっきりとした顔立ち、格好はシスター服に似た白と黒を貴重とした法衣を着ている。少し気になるのが身体の動かし方が上手い、これは何かしら武術を学んでいたと思う。
「なんにしても助けられて良かった」
俺はホッとしながらジャンヌを見ていると、
「それでお前は大丈夫なのか?人の心配してばかりだと今度は俺が心配で過労死してしまうぞ」
「風太か、思っていたよりはなんともないよ。恐らくこれはただの目印みたいなもんだから」
俺の手の平に赤い丸印が一つ、それ程目立つ訳では無いがこの印から感じる気配、間違いない。邪悪アスタローネと同じ、ジャンヌと繋がった瞬間に聞こえた。『お前、美味そうだな』だけで呪印を付けられるとは迂闊だった。
俺は風太と呪印について話をしているさなか、
別の場所でも深刻そうに話をしていた。
…………………▽
◆ジャンヌの視点
「あの〜宜しいでしょうか……」
セレーナは恐る恐るジャンヌに声を掛ける。
「あ、はいセレーナさん、どうされました?」
鍋のスープを混ぜながら笑顔で答える。
「ジャンヌさんは初代様なのですよね?」
「初代?……私が亡くなってどれ程経ったのでしょうか?私は分かりません。きっとセレーナさんも女神様から使命と聖女の力を頂いたのですよね」
「そうです……そうか!?考えてみればジャンヌ様は自分の事をご存知ないのですね。貴方様は世界を救った救世主として語り継がれています。私達聖神教会では神にも等しい存在であり崇めるべき……」
「セレーナさん、やめませんか」
ジャンヌは途中で話を止める。
「ジャンヌ様?」
「セレーナさん、今の時代のことは何も知りませんが、今の私は蒼字様の式です。聖女ではもうないのです。ですから様付けは不要ですよ」
セレーナは非常に困った顔をして、
「し、しかしですね私達にとっては……」
「お願いします。私はただのジャンヌに戻りたいの、死んではいるけど今は生前の時より生き生きとして楽しく生きられそう」
「あ〜でもでも」
セレーナは頭を抱える。
「ご、ごめんなさい。私のワガママで」
「いえ、いいんです。気持は良く分かります。聖女という立場はとても窮屈ですから……しかしお許しください。出来るだけ善処しますけど、わたし……ファンなんです!」
「ほぇ?」
私はつい変な声が漏れてしまいました。
セレーナさんが私をギュッと抱きしめたのです。
とても大きな胸で苦しかったけど久しぶりの人との接触に嬉しく思いました。
「食事が出来ましたよ。皆さん集ってください」
私は皆さんに食事を配り、おかわりが直ぐにできるように鍋の横で待機していると、
「ん?ジャンヌも一緒に食べようよ!おかわりは自分で取るから気にしないでいいぞ!」
蒼字様は優しく声をかけてくれた。
しかし……
「蒼字様、私のことは気にせずお食べください」
「いやいや、気を使わなくていいぞ!ジャンヌ、あと様付けはいらないから、むず痒くならやめてくれ」
私はどうすればよいか迷っていると、
「ジャンヌさん、さっき私に言ったこと覚えてます。様付け禁止です!」
セレーナさんが笑いながら言った。
「しかし、私は蒼字様の式ですが」
「いいんだよ!適当で、蒼字の式は自由がモットーだ!基本だぞ後輩!」
「おい、先輩、後輩に変なこと教えるなよ!」
あれ?私の常識は今の時代とは違う?
蒼字様はご主人様です。普通にお話しても宜しいのでしょうか?
「ほら、ご飯も一緒だこっちに来いよ!」
蒼字様が私の手を取り席へと移動させる。あ〜私は死んでいるのにドキドキします。私は今は生きているのかもしれません。
そんなことを考えているといつの間にか蒼字様の横に座りスープの入った器を持っていました。
「食べろよ!美味いぞってジャンヌが作ったんだけ」
アハハハ〜っと笑う蒼字様、私は自然とスープを口に入れ飲んでいた。
「美味しい……とても温かい」
感動で目に涙が浮び、身体と心が温まっていく。
「ジャンヌは料理上手だな!こっちの野菜炒めも美味いぞ、今後より食事が楽しみになったな、レイチェル、それ俺のだからおかわりしろ!」
褒められた…凄く嬉しい!
私が舞い上がっていると、
「後輩、本当に美味いぞ!ただし俺の時はもう少し冷ましてくれ、俺は犬だが猫舌だ!」
式神の風太先輩、そうだ!聞きたいことがあった!
「風太先輩、あの〜何で私達食べられるんですか?私達は幽霊ですけど」
「ん!これは蒼字の式になったからな。俺達はこちらの世界に肉体を実体化出来る。俺はこっちの世界では当たり前だと思っていたが違うのか?」
「はい、私の知る限りではあまり聞いた覚えがありません」
「それならラッキーだったな。蒼字の式になれて」
私は心底そう思いました。蒼字様、私は一生着いていきます。あ!私は死んでいました。それでは改めて、死んでも着いていします。
ご愛読して頂いた方、本当にありがとうございます。
面白く書けるよう今後も頑張っていきたいと
思います。(*´ω`*)
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