第61話 蒼字 VS 大司教オーリン
「オーリン様落ち着いて下さい。祝福の儀式が終わったばかりで御座いますから……」
「オーー分かった分かったそれでは明日にしよう。気合いを入れるために軽く走るか!オ〜〜〜」
「あ!オーリン様ーそんなこと言って仕事しないつもりですね!待ちなさーい!」
大司教様とシスターは走ってどこかに行ってしまった。
なんか俺の思っていた大司教様と大分違う。
「オーリン様は戦闘狂なのよ」
「大司教が戦闘狂っておかしくありませんか?」
「オーリン様は理由あってこの道に入ったって聞いてるけど今でも身体を鍛えていて並の冒険者じゃ手も足も出ないわよ」
「セレーナ様、断って貰えませんか?」
「それは無理ね!オーリン様はああなったら話を聞かないは、どうしても嫌なら逃げるしかないわね」
帰りたい……
「今日はもう休みましょ、私も疲れたわ。まさか女神様が現れるなんて……」
セレーナ様は嬉しそうにしている。他のみんなも儀式が成功したことで嬉しそうにしている。今日は良かったな!うん!大司教様の件は明日考えよ。
………………▽
ここは修練の間、聖神教会の騎士が訓練するために造られた修練所、ここで何故か俺と大司教様が模擬戦をすることになってしまった。
それで……なんでみんな居るの?
今ここに居るのは昨日祝福の儀式に立ち会った人達、アルヴィア姫まで居るよ〜意外と暇なの〜……緊張する〜
俺は心の中でボヤきつつも、仮面を着けているので誰にも表情が見られないので助かる。
それにしてもどんだけガチな模擬戦なんだ?目の前に上半身裸でガントレットを着けてジャブをしながらウォーミングアップをしている。
「フゥ〜いや〜燃えたぎる〜楽しみでしかたないわい」
大司教様はとてもいい笑顔をこちらに向けて話をするが、熱血タイプでもなければ戦闘狂でもない俺にとっては正直萎える展開である。
「ホワイト、お前は剣でも槍でも何でもいいから武器を使え、俺はこのガントレットでお前と戦う」
近くには武器置き場があり、使えと言ってるのは模擬戦用の木剣、木槍ではない。刃がマジで付いている武器を使えというのか?
「どうした?固まって………あ〜そういう事か、ホワイト大丈夫だ!もしも怪我をしてもうちの優秀なシスターが治療魔法をかけてくれる。最悪腕が取れてもセレーナが治してくれるから気にすんな!」
はぁ〜模擬戦と言いながらこれはほぼ実践だな。気合入れないと大怪我するぞ。
そんなことを考えているとセレーナ様がこちらにやって来た。
「どうするの?オーリン様気合い充分みたいよ。あれで殴られたら痛いわよ〜」
「も〜う他人事ですか!何でこうなるんですか!」
俺は文句を軽く言う。セレーナ様の所為ではないが出来れば止めて欲しかった。
「ま〜良いじゃないの、お年寄りは大切にしないといけないのよ!」
「どの辺がお年寄りなんですかね〜?」
オーリン様を見るととても70オーバーの肉体ではない筋骨隆々と言うべき肉体美がそこにあった!その辺の一般人の100万倍元気にしか見えん!
「本当にいつまで経っても元気よね〜」
「大司教様って何者です。お祈りだけであんなに筋肉つかないでしょ!」
「ちゃんと説明してなかったわね。オーリン様は元傭兵なのよ!」
「よ…傭兵?」聖職者が意味がわからん。
「普通驚くでしょうね。オーリン様は異色な経歴を持っているから、色々と転々としていたみたいだけど一つだけ言えるのは強い人と戦うのが好きってこと!」
話をしているといつの間にか隣にシスターさんが来て教えてくれた。
「ホワイト様が使徒様であることと先日の魔王軍との戦いの話を聞いて戦いたくてウズウズしていたそうです」
ちなみに俺は使徒様じゃないですよ〜と言ったが聞いてくれなかった。
「おーい早くやろうぜー」
おっさんが元気に手を振ってウキウキした目で俺を見ている。………萎える〜
俺は重い足取りで大司教様の前に立ち、
「本当にやるんですよね」
「当たり前だ!やーるーぞ〜」
ガンガンと音をたてガントレットをかち合わせている。
「分かりました。やるからには負けませんよ!」
俺は気合を入れる。
先程のシスターがやって来て、
「それでは、両者準備は宜しいですか?」
オーリン様は「オウ」と返事をして、俺は無言で首を縦に振った。
「それでは簡単ではありますがルールを説明します。もちろんですが相手を死に至らしめる行為は違反とします。勝負の判定は相手が戦闘不能になるか降参した場合とします。魔法、魔道具の使用は問題ありません。最後になりますが大怪我も私が治しますので頑張ってください」
可愛らしいポーズをとってシスターさんが離れていった。オーリン様もデレデレしている。聖職者にも色々いるものだ、堅苦しくなくていいか……
「では、始めるとしよう………オゥーー」
雄叫びと同時に突進する大司教様、剛腕の右腕が振り抜かれ、俺の顔面を狙う。俺は腕をクロスさせカードするが、「ぐぁー」カードしたにもかかわらず、軽くぶち抜かれた。10m以上吹き飛ばされ倒れる。
「おーい、まさかそれで終わりじゃないだろうな?」
大司教様はつまらなさそうに声をあげる。
あぁ……痛い、なんだよーこの老人、どんだけパワーあるんだ、ぜんぜん耐えれなかった。これは当初考えていた通りやるしかないか、準備しておいて良かった〜
今ここにアルヴィア姫達がいなければいいのだが筆を使えない。何故ならキャリーちゃんの件で思いっきり見られているから、黒ずくめの男と同じ人物とバレたら捕まる。それは避けなければいけない。そこで事前に色々と考え試したのが………
「ふ〜それじゃーもういっちょ頑張りますか!」
俺は立ち上がり走り出す。
「よ〜し良く立った!さー来い!」
大司教様は避けずに受け止めるつもりのようだ。
それじゃ〜遠慮なく……「剛力」……『ストロングアップ』
俺は右腕を振り上げガードしている大司教様をぶん殴った。
「うぉーー」大司教様はぶっ飛んでいった。………しかしすぐに立ち上がり、ニヤリと笑い突撃してきた。
ダメージがないのか?笑いながら殴りに来る。ある意味恐怖でしかない、戦闘狂とはこういう人なのだろう。今度は力負けせず連打を捌きながら俺は拳を繰り出す。
まさにこれぞ肉弾戦と言うべき戦いとなった。殴られたら殴り返す。攻撃のヒット数で言えば俺の方が多いのだがぜんぜん有利にならない。ここが大司教様の恐ろしい所、殴られる事をまったく恐れない、守りに執着がないと言える。ゆえに思い切っり攻めて来るので、痛いのなんのって、いつまでもつき合ってると身体が持たないな!攻撃方法を変更だ!
「剛腕演舞、『火焔太鼓』」
ボッ、ボッ、ボッと火が手に灯る。火の力を加え高速連打を繰り出す。
「お!!良いぞ。もっと来い!」
大司教様のテンションが上がっておられる。なんでよ?手がかち合うたびに火傷を負ってるはずなのに、気にせず殴ってくる。なんでだ?
よ〜く見るとそれが分かった。手の甲は火傷をしている。しかし腕を引いて再び殴る時には火傷が治っていたのだ!これは手の甲に纏っている魔力の効果、殴りながら常に回復魔法をかけている。痛みにさえ堪えればダメージはないので全力で殴り続ける事が出来るわけだ。
あ〜戦闘狂はこえーよ!何でこの人が大司教やってるのよ。俺は一旦バックステップで距離を取る。
「ホワイト、良いぞ!その調子だもっと来い!」
大司教様のテンションはさらに上がっている。
目がギラギラしている。
さて……どうしたものか、筆が使えないのは俺にとって、かなりのハンデになるな。事前に腕に『火』『力』の印を書いてその力を使ったが攻めきれない。まだ他にも準備をしておいたけど、恐らくは倒せない。今ここで考え直すしかないか……
『火炎弾』
1メートルくらいの大きさの火の玉を飛ばす。
「ふん!」
正拳突きで吹き飛ばされた。
全員視線が大司教様にいったな!チャンス
懐に手を入れ即座に一枚の札を書く。
「ぐっ」…苦痛の声が漏れる。今回の札はMP(魔力量)の消費量がハンパじゃない。思いつきで作ってみたけど上手くいくか……チャレンジだな!
俺はその札を片手に再び大司教に立ち向かう。




