第56話 聖女直属の護衛現る
「セレーナ様、それは無理です!」
「何故でしょうか?黒ずくめの件については冒険者として護衛していたたげれば気づかれる可能性は少ないと思いますよ」
「そうなんですけど冒険者の姿も見られると困るんですよ。出来る限り顔を見られたくありません」
「蒼字は色々なところでやましいことをしているのですか?懺悔されるのであれば私が聞きますよ」
聖女の慈悲のあるお言葉と言うよりかは、
からかわれてるなこれは……
「何にしてもバツが悪いことがあります。ですからお断りしても良いですか?」
申し訳ないけど難しい。
出来るだけ近くに配置して頂こう。
「ん〜〜あ!良いことを考えました!蒼字これを使いましょう」
セレーナ様は何かを取り出した。
「え!?マジですか?」
何度言っても聞き入れてくれない。
仕方ないのでセレーナ様の提案を飲むことにした。
本当に大丈夫かな〜
………………▽
俺は今、何事もないようにセレーナ様の横を歩いている。しかし実際は心臓がバクバクして動揺していた。
「セレーナ様これ逆に目立ちませんか?すごく見られてる気がするんですけど」
「そうですか?、私はとてもカッコイイと思いますよ。黒ずくめも良いですが、白ずくめも良いですね!さすが蒼字です。何を着ても似合います。よ!この色男!」
「何が色男ですか、上から下まで真っ白で顔も何も見えないじゃないですか〜。カッコイイも何もないでしょ〜」
俺は上下真っ白な服とマントを着て、顔を見られないために白い仮面を着けている。
「蒼字が言ったのよ。バレたくないってそれで考えたんじゃない!これで蒼字とも黒ずくめの男とも思われませんわ」
「そうですね〜今度は白ずくめの男ですけどね〜」
あれからセレーナ様が良い事を思いついたと言ったので聞いてみたけど、思いのほか単純な作戦、今度は黒じゃなく白で覆う。確かに分からないけどそれで良いのか。
………それにしてもセレーナ様は良くこんな物を持っていたな。この仮面もやけに凝った造りしているし、視認阻害効果まであるなんて助かるけど。
あ〜あと、オーバンさんには聖女様から特別な任務を頂いたので別行動すると伝えてある。最初はブツブツと文句を言われたが、聖女様からですからと伝えると黙るしかなかった。
「敵の動きは特にはないのですか?」
「今のところは特には……」
「アビスの目的はセレーナ様を殺すことではなく捕らえること、相手もこれだけ警戒されている中で行動に移すのはリスクが高いと思ってるのかも知れませんね」
セレーナ様はニッコリと笑う。
「皆様のおかげです。女神様と皆様に感謝です!」
「え!女神様は関係ないのでは?」
「………前も思いましたが蒼字は女神様がお嫌いのようですね」
「いいえ、そんなことありません」
俺はカタコトで喋る。
「貴方に何があったかはわかりませんが、女神様は我らを守護して頂ける素晴らしい存在です。いつかは分かって頂けると良いのですが」
セレーナ様は押しつけようとはしなかったけど、少し悲しそうな顔をしていた。
「分かりました。そうなると良いんですけど…」
今日は聖女様の歓迎パレード、国民に向けて演説をする予定になっている。そこで大胆にも狙っては来ないと思うが、もしかしたら聖女様に危害を加える事で、国民に対して国のイメージダウンを狙う者もいるらしく、警戒を強める必要があるそうだ。
「セレーナ様、お願いしますよ。俺は基本的に立ってるしか出来ませんからね!」
実はこの後パレードの演説の打ち合わせが予定されている。突然俺のような者が直属の護衛についたなんて怪しさ満点、セレーナ様に上手く言って頂かなければ………
「うふ、お姉さんに任せなさい!」
胸をドンと叩く勢いで自信をもって答えるセレーナ様、しかし、この間の一件でどうにも信用しきれない。うっかりミスではなくあえて嵌めるような事をされる気がしてならない。気をつけよう。
「お待ちしておりました。セレーナ様」
部屋に入るとアルヴィア姫がソファに座っており、その両サイドに護衛が二人、しかも以前城に侵入した時に戦った。確かアインという戦士とレミという魔法使い、これはより気をつけないと。
「アルヴィア姫、お待たせしてすいません。少々面白いことがありましたので、時間を忘れてお話をしてしまいました」
ん?セレーナ様面白いって何ですか!興味を持つ様な事を言わないでください!
「面白い事ですか?それはもしかしてお隣におられる方と何か関係があるのでしょか?」
ほーら言わんこっちゃない3人とも俺のことをガン見しているよ。ただで際目立つのに!
「え〜偶然王都で会いまして、かつて私の護衛をしていた者です。腕が立ち信頼における方です」
「まーセレーナ様がそこまで言われるのであれば、とても優れた方なのですね。是非ともお話がしたいですわ」
お〜い、セレーナさん興味めっちゃ持たれたじゃないですか、どうするんです!フォロー頼みますよ!
「うふっ、彼ね!恥ずかしがり屋さんなの、特にアルヴィア姫みたいな綺麗な方とは緊張して何も喋れなくなるの、ごめんなさい。慣れるまで少し待ってくれるかしら」
セレーナ様ナイス!成る程ワザとこの状況を作るために敢えて俺に振った訳ですね。これで俺が喋らなくても不自然じゃない。
「それは残念です。分かりました。少しずつお話していきましょう」
「アルヴィア姫、本当にごめんなさいね。もう少し気楽にしなさいって言ってるんだけど聞かなくって」
「可愛らしい方なんですね」
アルヴィア姫がくすくすと笑っている。
セレーナ様、もう俺のことは掘り下げなくていいから本題に行きましょう。
「そうだわ!いくらシャイだからって名前くらいは名乗るべきよね!ほらシャンとしなさい」
なにー!いきなり振ってきやかった。そんなもん考えてないぞ!ど、どうする。
脳内ではあたふたしてフル回転させ考える。
「ホ、ホワイトだ………よろしく」
「あら……見た目通りで分かりやすい名前ですね」
咄嗟過ぎてなんも思いつかんかった。自分の名前で時間をかける訳にはいかなかったし、失敗したかも。
そんな姿を見てセレーナ様は口を押さえて笑っている。チクショーやっぱり嵌められた〜
「アハッ、ご、ごめんなさいそろそろ演説の件と、祝福の段取りについて話しましょか」
それからやっと本題の話をすることになった。
アインから警護の状況について説明を受け、セレーナ様からの要望はただひとつ、演壇を含むすべての場所にホワイト(俺)を連れて行くこと、それ以外はお任せしますと回答した。
現状、敵が誰かが分からない為、出来る限り信用のおける者を傍におくしかないのだが、正直な話俺が最も怪しいのでアインとレミの目つきが怖い。姫の護衛としてこの二人も演壇に上がるから、俺への警戒はするだろう。
「それにしてもホワイトさんは話に出て来る使徒様の様な風貌ですが、その大丈夫でしょうか民衆も同じ様に思うかも知れませんが」
「そうですね!その時は使徒様が現れたことにしましょうか!」
「ふふっ、セレーナ様はご冗談がお好きですね!そんな事をすれば大騒ぎになりますよ!もちろん本当のことであれば大々的にやるべきですが」
「うふ、冗談です!そんな事は致しませんわ。ですが、ホワイトを見てそう思われた方がいたらいたで良いと思います。民衆にとってそれは希望になりますから」
アルヴィア姫はセレーナ様に言われたので、それ以上言う事は良くないと思い発言をしなかったが、空気を読まなかったアインが言ってしまった。
「発言をお許し下さい聖女様」
「どうぞ」
「申し上げにくいのですが、そのホワイトという男本当に信用に足る者なのでしょか、顔すら見せることが出来ない男など信用出来ません!」
バーンっと強い口調でアインは言い切った。
アルヴィア姫は少し顔を曇らせたが止めはしなかった。
「確かにそうですね。ではこうしましょう。もしもホワイトがアルヴィア様に危害を加えた場合は私が聖女を引退します!」
「…………………?」
全員が突然の予想外の発言にびっくりして無言になる。
「セレーナ様、何を言われるのです!貴方なしではこの世界を救うことなど出来るはずがありません。どうか考え直してくださいませ」
アルヴィア姫は立ち上がり叫ぶ様に声をかけるが本人はどこ吹く風の如く動揺せず、「いいえ、しません!この言葉は女神様に誓って変えることはありません」
アルヴィア姫はドスンと勢いよく腰をおろし、小さな声で「そんな〜」と聞こえた。
アインは勢いよく頭を下げ、
「聖女様申し訳ありませんでした。私の発言が間違っておりました。どうか私の発言などお気にせず、どうか聖女の任を辞めるなど言わないでください!」
アインはあまりの出来事に頭がついてきていない。混乱状態で身振り手振りで説得している。しかし、
「アインさん、私も貴方の言う通りだと思います。私はホワイトを信じているだけで、なんの保証もありません。アルヴィア姫のことを思えば当然の発言、それでは私はどうするべきか、責任の取ることで信頼して頂くしかないと思ったのです。ですからアインさんは悪くありません。全ては私のわがままなのですから」
全員が黙りどう言葉をかけるか悩んでいる。
「セレーナ様、まさか聖女に疲れて休みたいな〜とか思っての発言じゃないですよね!」
俺をセレーナ様に冗談を言うと、アルヴィア姫達はびっくりした顔をしていた。当の本人はポケーとしてすぐにクスッと笑い。
「そうね〜聖女に疲れてたまには休みたいな〜と思ったことはあるわよ!そうね〜そう考えると辞めるのも良いかもしれません」
「わー辞めたら駄目です!」
アルヴィア姫達は同時に声を上げた。




