第51話 大司教ゾール
俺達は洞窟の通路にある窪みに隠れて作戦を考える事にした。
「二人共時間がないから簡単な作戦になるけど、今から説明するから変更した方が良いところがあったら言ってほしい」
セレーナ様と風太は静かに頷く。
「基本的には風太とセレーナ様は俺から少し離れた位置で隠れて欲しい。風太はその際セレーナ様を守ることに注力してくれ。俺があとは蹴散らす!」
「蒼字時間がないからと言ってもう少し作戦を練ったらどうだ。大雑把過ぎるだろう」
「え〜あんまり時間ないから役割分担だけにしたんだけど、それじゃ足りないか?仕方ないな〜せっかくこないだ頑張って作った護符だけど罠でも仕掛けるか……」
それから風太とどんな罠を仕掛けるか話し合っていると、「フフッ」とセレーナ様から笑い声が聞こえた。
「あれ?なんか変な事言いましたか?」
「いえ、そんな事ありませんよ。ただこうしてお二人がお話している姿を見て、とても貴重な体験をしていると微笑ましく感じておりました」
「どこに微笑ましさが?」
俺は首をかしげ、
「そうだぞ!犬と喋る変態の間違いだろ!」
風太から痛烈な一言。
確かに昔風太と喋っている姿を目撃されたことがあった。あの時は風太を見ることが出来ない人だったから、俺がひたすら虚空に向かって喋っていたから危ない人にしか見えなかったわ。
「そうではないですよ。仲の良い二人を見て何と言いますか…………和みました!こんな時に言うことではありませんがその様に感じたのです」
「「そ、それはどうも」」
俺と風太は同時に返事をしてまた笑われた。
「それじゃ〜改めて悪人退治といきますか!」
「はい!」
「ワン!」
二人から良い返事が帰ってきました!
…………………▽
「聖女がいない!逃げやがった!捜せ〜まだ近くに居るはずだ!」
どうやら逃げたのがバレたみたいだ。奴らが騒ぎ出している。俺は敢えてその中心、渦中の中へと降り立った。
「なんだコイツ!怪しいヤツが居るぞ!囲え!」
俺はあっという間に十数人の男達に囲まれた。
「お前らは今から俺が捕縛する!痛い目に遭いたくなければ動くなよ!」
「ふざけた事言ってんじゃね〜!」
怒号と共に数人の男が剣を振り上げる。瞬間……男達の腕が爆ぜ、痛みによる叫びと変わった。
「どう言う事だ!何が起こった?」
お!例の裏切り護衛兵じゃん!どうしてやろうか!
こちらにジリジリとタワーシールドを前に構え近づいてくる。守りが堅いが甘い、甘すぎるぜ!
筆を構え横一閃を繰り出す。護衛兵は墨帯に縛られぐるぐるになって倒れた。
無理して相手をする必要はない。動きを封じるだけで十分だ!あんた達は裁かれるべき場所で裁かれな!
「ちっ……どいつもこいつも役に立たないな!来い!デーモンども!」
ドリュー司祭と呼ばれていた男が悪魔を呼び出す。
「いち、にい、さん、しい………4体か、凄いな!」
レッサーデーモン(下級悪魔)とはいえ4体も出せるのか、この世界の人達は霊力(魔力)が高いからだろうな、普通ならお手上げだが、今の俺は遥かに強くなってる。こんな奴らは楽勝なんだよ!
『一文字 一閃 四連』
上半身と下半身に別れたレッサーデーモン達は煙になって消えていった。
「何だと!?お前何者だ!」
ドリュー司祭は驚きながらも威圧的な態度をとる。
「悪いが答えるつもりはない!俺はあんたを倒すだけだ!」
筆を振り墨帯の波状攻撃を放つ。
「舐めるな!餓鬼!」
ドリュー司祭から禍々しい魔力が放たれ、その姿を変貌させていく。体が一回り大きくなり筋肉が隆起している。そして目が赤く光、頭には2本の角………
「悪魔化したか、お前それをやることにどれだけのリスクがあるか分かってるんだろうな!」
俺は鋭い目を向ける。
「殺してやる!!!」
ドリュー司祭の声は化け物のような恐ろしく変わった。
ドンッと大きな音をたて地面を割り凄まじい脚力で接近、鋭い爪が俺の左上部から振り下ろされる。
「よっと!」
筆ブレードで爪を受け止め、ガラ空きの腹に拳を
叩き込む。
「ゴハッ」
ドリュー司祭は10m程両足を引きずり吹き飛ぶ。
「悪魔化は身体能力を格段に上げるが、精神が蝕まれる。使えば使う程悪魔に心を乗っ取られるんだぞ。お前分かっているのか!」
「一撃くれたくらいで調子に乗るな!俺様は貴様ら軟弱な奴らとは違うのだ!精神力が違う!悪魔を従えているのだ!アッハハハ」
「はいはい、分かりましたよ。お前みたいなヤツは皆同じようなことを言うんだよ!」
俺はガッカリして肩を落とす。
ガッカリしている俺を余所に、ドリュー司祭は魔力を高めていた。
「うぉおーー喰らえ『インフェルノ』」
あ!………これ前見たやつだ。
『破魔のふで払い』で魔法を消した。
「何だと!!」
驚いているようだが、俺からすれば大したことはない。前見た時の方が規模も威力も大きかった。使い手によっては同じ魔法でも威力が違うんだな。
「なに驚いているんだ!これで終わりなら今度はこちらから行かせてもらうぞ!」
『点撃 散らし墨』
筆を軽く振ると墨が無数に飛び散り、その墨はまるで銃の弾丸の如くドリュー司祭を襲う。
俺は散らし墨に耐えている所に接近し魔力を両腕に集中、連打で殴り飛ばした。
「ぐっは〜………バカな!この俺様が……」
そんなテンプレトーク言うのはザコ司祭。
ドリュー司祭は今の攻撃で立つことすら出来ないようで四つん這いになってこちらを睨みつける。
「諦めろ!あんたはもう戦えない」
ドリュー司祭を墨帯で縛り動きを封じている。
そこにセレーナ様が現れた。
「セレーナ様……まだ出て来ていいとは言ってないですよ!」
「ごめんなさい。どうしても彼とお話がしたくて」
一応既に全員捉えているから大丈夫だけど。
もう少し危機感を持って欲しいものだ。
「分かりました。あんまり近づかないでください」
いざとなったら助けに入れるよう距離を取らせる。
セレーナ様は俺の横に並び、清らかな白いオーラを強く放っていた。
「貴方には魔が取り憑いております。まずはそれを払いましょう」
セレーナ様はドリュー司祭に手をかざし
『聖魔法 ホーリーフィールド』を唱える。
ドリュー司祭の周りに光の円が描かれ、の柱光が昇る。悪魔化していた身体は元の姿に戻り、表情から力が抜け緩んだ顔になる。
「ほー流石は聖女と言ったところだな、魔の力を払ったか」
風太がなんか偉そうなことを言ってるけど見事に邪気が消し飛んでいる。これが聖女の力。
「いえ!まだです。居ますね。そこに……」
ぐったりとしたドリュー司祭に声を投げかける。するとガクンっと身体を起き上がらせ、こちらを見る。しかし、その目に生気はなく虚空を見ていた。
「やー久しぶりだね!セレーナ、また会えて嬉しいよ!」
ドリュー司祭は先程までとは違い子供のような声を発した。
「私としては会いたくありませんし早く貴方には居なくなってほしいのですが」
「相変わらず連れないな〜なんで僕には慈悲のある言葉を投げかけてくれないのさ〜セレーナは聖女だろ」
「そうですね。すべて人を救うことが聖女の役目と認識しております。しかし貴方は別です!貴方は罪を重ね過ぎました。生を受けたままではその罪を償うことは叶いません。ですので貴方には死んでやり直して頂こうと思います。大司教ゾール」
「酷いな〜死ねなんて……もしかしてセレーナは僕のこと恨んでるのかな〜アハハハ」
「必ず貴方のもとに辿り着き止めます!」
「良いよ!セレーナならいつでも大歓迎さ……おいでよ!今から連れていってあげるよ………おいで。
…………『デーモンロード』
大司教ゾールが何かを召喚した。現れたのは体長5mはあろう巨駆な悪魔。
俺は怒りをあらわにして言った!
「ゾールとか言ったか?お前最低だな!仲間の魂を生贄に捧げやがったな!」
感じた。この悪魔を呼んだ瞬間、ドリュー司祭の魂が消えた。
「ん?君勘違いしているよ!ドリューは喜んでいるんだ!生贄になれたことを、この世界の礎になれたことをね!」
「それはお前の理屈だ!そしてそう思っていても、それはまやかし、本当に望むべきことじゃない!お前みたいなやつが傍に居るから過ちを犯す!だからこの世界にお前は要らない!」
「へー君も強気だね!僕に向かってそんな事言えるなんて、良いよ!まずはこのデーモンロードを倒してみなよ!」
「当たり前だ!こんな奴倒して、いつかお前も倒す!」
俺はそこにいない遥か彼方に居るゾールに向かって
宣言した。
「待ってください!ここは逃げましょう!」
「へ?」セレーナ様の表情が変わり焦っている。
「どうしたんです?兵士達の亡骸を回収するから逃げないのではなかったのですか?」
「申し訳ありません。デーモンロードが現れた以上
引くしかありません。急ぎ増援を呼ばなければ多大な被害が出てしまいます」
「ふ〜ん、ま!それならここで倒しましょう。それなら被害が出ない」
「え!?………しかし相手はデーモンロードです」
セレーナ様は俺のことを心配してくれているみたいだな。それならはっきりと言わないと。
「確かにコイツは強い。けど勝てなくはないと思うんで頑張ります」
この一言にセレーナ様は唖然としていた。




