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第48話 『聖女様』と『アビス』


 『聖女様』

 

 女神様の恩寵を受けて奇跡の力を授かりし女性、この世界で数人しかいない特別な女性達はどの国にも属すことはなく、世界の平和の為に動く、まさに神の代行者と言われている。




◆さくらの視点


「聖女様が来られます」

 

 アルヴィア姫が嬉しそうに私達に報告をしてくれるのだが、先日攫われたばかりなのになんでこんなに元気なのだろうか?私達はアルヴィア姫を助けることが出来ずに落ち込んでいたのに、当の本人はむしろいつもよりも明るいくらい。一体何があったのか?

 陽菜乃ひなのが聞いてくれたけど教えてはくれなかった。正直色々とモヤモヤしている。


「ね〜アルヴィア、なんで聖女様が来るの?」

 陽菜乃ひなのが目をキラキラさせて聞いている。きっと聖女様が気になって仕方ないんだ。


「そうですね!説明をしておりませんでした。聖女様は勇者である陽菜乃ひなの達に祝福を与える為に来て頂けるのです」


「「「祝福?」」」

 私達3人は首を傾げる。


「祝福とは簡単に言うと運です。皆さんもステータス中に運があることは知ってると思いますが、レベルが上がっても運が上がらないことに疑問を持ったことはありませんか。運はレベルではまず上がることはありません。上げる方法としては一般的には教会で神様に祈りを捧げること、これはかなりの年月をかけて10前後上がれば良いくらいで大して上げることは出来ません。他にも運を上げる方法をがありますが、同じ様に効果は少なく、そんな中で急激に運を上げる方法が『聖女様からの祝福』です。


「つまり私達の運を上げる為に聖女様が来て頂けるんですか?」


「その通りですさくらさん」


「でもアルヴィア、運って上げると具体的にはどんな良いことがあるの?」

 陽菜乃ひなのはワクワクしている。


「そうですね。敵との戦闘では遠距離の魔法攻撃が当たりにくくなったり、接近戦では周りの環境が自分の有利な環境になったりすることがあります。他には良い出会いに恵まれるとも言われてますね!」


「ふ〜ん、そうなんだ凄いじゃん!私達ラッキーだね!」

 やった~とを手を上げて喜ぶ陽菜乃ひなの


「でもなんで私達の為にわざわざ聖女様が来て頂けるんですか?とても偉い方なのですよね」


「そうです!聖女様は私と同じ王族と同じくらい発言力がある方達になります。お会いしたくても簡単には会うことは出来ません。しかし勇者は特別です!勇者召喚が成功の後速やかに聖女は勇者に会い祝福を与えなければなりません!」


「それは何故ですか?アルヴィア姫」


「魔王軍から貴方達を守るためです!勇者は特別な力を持ち強い存在ではありますが、初めから強いわけではありません!経験値を積み技を磨き、レベルを上げ、スキルに至る。今の貴方達の力では魔王軍を相手にすることは出来ません。その為の祝福です」


「そっか、確かに今の私達は弱いよね。先日の戦いで痛感したよ!私はさ、この世界に来て超人みたいに強くなったと思っていたけど、もっと強い人がたくさん居るんだね」

 陽菜乃ひなのが少し落ち込んでいる。私も一緒、アルヴィア姫に危害を加えられなかったから良かったけどもしも何かがあったとしたらきっと自分を許せなかった。


「お二人共そんな顔をしないで下さい。私は無事なのです。それにとても良いことがあったんです!お話が出来ないのが残念ですが、私は元気です!」

 アルヴィア姫は私達を慰めるために言ってくれていると思ったのだが本当に嬉しそうに………私達はホッとした。


「アルヴィアありがとう、今度は負けないからね!」

 ぐっと力こぶをして気合を入れる陽菜乃ひなの


 そんな陽菜乃ひなのを見て、フッと私は笑みをこぼした。


「でも、聖女様か〜どんな人なんだろう……きっと綺麗な人なんだろうな〜」


「はい、もちろん綺麗で慈愛に満ちた方です。楽しみにしていてください」

 

「コンコン」ドアを叩く音がした。外から声がかかり入ってきたのはこの国の第一王女アルヴィア姫の姉にあたるミネルヴァ様でした。


「アルヴィアはここに居たのね。悪いんだけど来てくれる。聖女様の護衛の件、大体話が固まったみたいだから、この後会議をするんですって」


「お姉様今からですか?明日でも宜しいのでは」

 

「聖女様が想定していたより大分早くこちらに来られるそうなの、少しでも早く対応したいとアルバート団長からの連絡よ。仕方がないわ!」


「分かりましたわ!お姉様すぐに行きます」


「悪いわね!アルヴィアお願い」

 ミネルヴァ様は部屋を出ていった。



 私は少しミネルヴァ様が苦手だった……

 ミネルヴァ様は綺麗な方、アルヴィア姫ももちろん美人だけど、なんて言ったら良いのか、アルヴィア姫はまだ幼さみたいなものが残っているけどミネルヴァ様は大人の女性でまさに絶世の美女と言った感じ、顔を見た瞬間心臓が鷲掴みにされたみたいに苦しく感じてしまう。だから悪い人じゃないけど疲れるからあまり会いたくない。




………………▽

 あれから数日後、先日の事件は特に公の場では一切公表されていない。姫様は約束を守ってくれたみたい。

 俺はほっとして久々に冒険に行くことにした。

今日はどんな依頼があるかな〜。


 依頼ボードの方に歩いていくとキャンベルさんがこちらに歩いてきたので挨拶をする。


「キャンベルさんこんにちは、相変わらず忙しそうですね」

 キャンベルさんは大量の資料を抱えて歩いていた。


蒼字そうじ様、お久しぶりです。今日は依頼を受けられるのですか?ここ最近リル様と商売の件でお忙しくされていると聞きましたが!」


「少し店が軌道に乗ったのでちょっとくらい冒険してもいいかな〜と思いまして」


「そうですか、おめでとうございます!蒼字そうじ様は期待の冒険者ですので、私共としては是非とも依頼をこなしてランクアップして頂きたいと考えていますので定期的にギルドに足を運んで頂けますと嬉しく思います」


「いや〜キャンベルさんに期待されていると照れますね!」

 アハハハと笑いながら照れる俺……


「あ!そうだ!ちょっとお聞きしたいことがあって、今時間あります?…じゃないですよね!忙しいですよね!」

 おいおい何言ってるんだよ俺は、大量の書類を持っている人に言うことじゃなかった。照れてテンパったか。


「大丈夫ですよ!こちらの仕事に関しては急ぎではありませんし、それに冒険者の疑問に答えるのはギルド職員の責務ですから」


「本当ですか!ありがとうございます!えっとてすねちょっと小耳に挟んだんですが、『アビス』って組織知ってますか?」


 この一言を言い切った瞬間マズッたか?と思い至る。何故ならあれ程冷静沈着のキャンベルさんの顔が憎悪を孕んだ怒りの顔となり殺気を発した。


 周辺にいる冒険者は全員こちらを注目し、中にはあまりの圧力に腰を抜かして倒れている者まで居た。


「キャンベルさん、すいません!」

「キャッ」

 俺は墨帯を使いながらキャンベルさんを抱きかかえてギルドの外へと走って逃げた。


 しばらく走っていると肩をトントン叩かれた。

 走るのをやめて止まると、「降ろして」と小さな声でキャンベルさんは言った。



 キャンベルさんを降ろすと顔を真っ赤にしている。

 これはまたしてもやらかしてしまったか?



 よく見るとキャンベルさんが無茶苦茶可愛い顔をしている。男性に抱きかかえられてきっと恥ずかしいんだな!うんうん………死んだかも!


「あ、あの〜その〜ごめんなさい!私なんてことを」

 キャンベルさんがモジモジしてる。


「あの〜キャンベルさん可愛いくてとても良いんですけど違和感が半端ないんで戻って来てくださ〜い!」


 キャンベルさんは湯気が出そうなくらい真っ赤な顔になったと思うと「ガン」っと額を殴った。

 動揺する俺を余所にキャンベルさんの状態はさらに変化、バチバチと音をたて僅かに光っている。


「キャ、キャンベルさん………だいじょうぶですか?」

 恐る恐る声をかけると、キャンベルさんはいつもの

キリッとした顔に戻り。

「申し訳ありません、少々動揺してしまいました」


「………………少し?」


「ゴホン、その話はもう良いのでは!」

「はい、分かりました!」

 ほんの少しさっきと同じ殺気が出たのでそくざに黙る。


蒼字そうじ様、何故アビスの名を………その組織は非常に危険です。絶対に関わらないで下さい!」

 まただ、いつもと違って感情が強く出ている。

「いえ、別に関わるつもりは無いんですけど、この間、話を聞く機会がありまして、その組織が聖女様を狙うのではないかなんて話していたので気になって」


「誰ですか!そんな話をしているのわーー」

 キャンベルさんが再び怒りぷるぷる震えている。


「ま〜ま〜落ち着いて下さい!

キャンベルさん、一体アビスって何なんですか〜」

 


「………『アビス』この組織は………

       …………()()()()()の集まりです」


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