第47話 長髪強襲?
「ここまで来れば良いかな?風太」
「大丈夫だろう。追ってと思われる者の匂いはしない。追跡魔法でもかけられてなければ余っ程良いだろう」
クンクンと周辺の匂いを嗅ぐ。
「怖いこと言わないで欲しいけど可能性はあるか、呪いみたいな魔法なら気がつけるけどな〜」
ポリポリと頬をかく。
俺は顔を隠している墨帯を外した。
「蒼字その顔も取れ気持ち悪い」
風太は心底嫌そうな顔をする。
「そうだな!やっと取れる」
俺は顔に手にかけ引っ張る。
「ペリペリ」っと鼻から上の顔が剥がれた。
「ふ〜スッキリした。しかし上手く行ったな〜。風太どうよ俺の作戦」
俺はドヤ顔で風大に聞く。
「ま〜上手くはいったが偶然だろそんなの、ワザと顔を見せるとかリスクが高過ぎるんだよ」
「でもこれで謎の人物ではなくこいつが犯人として手配されるから俺は堂々と外を歩けるわけだ。アッハハ」
剥がした顔を振り俺は笑った。
………………▽
遡ること半日前
「すまん。協力してくれ………」
「………………」
俺は一人の少女に頭を下げている。
「その変装術って他人にも可能なんだろ。サクさんから聞いたんだ過去に逃走する際に歩行者の顔を全員同じにして撹乱して逃げたって!」
「何をするつもりだ?変装なんて良い使い方するなんて思えないんだけど」
「あ……ま〜そうだな。今回の使い方は良い使い方とは言えないな。確かに、でもやらないと行けないんだ。頼むミンク」
「あんたは兄ちゃんを助けてくれた。私はあんたに恩を返したい。だから協力する」
「本当か!ありがとうなミンク!」
ミンクは顔を赤くしているお礼を言われ慣れてないのかな?恥ずかしがるとはかわいい奴め!
「この能力もあんたの役に立つなら本望だぜ!」
真剣な顔でミンクは言っている。ありがたい!だからこそ一言言っておきたい。
「ミンク、その力は必ずしも悪い物じゃないと思うぞ!どんな力も使い手次第さ。ミンクがどう使うかでその力は良い事に使えるよ。だから嫌ってやるな。ミンクの正義に準じて使え」
この時ミンクはただ静かに聞いているだけでなにも言わなかった。彼女にとって良い方向に伝わってくれる事を願うばかりだ。
……………▽
「あ〜腹減ったな!風太屋台で飯でも食っていくか」
「そうだな!飯はいらないと言ってしまったから外で食べるしかあるまい」
俺達は冒険者が多く集う屋台街で食事を取ることにした。道の両サイドを隙間なく並ぶ屋台、なんか祭りみたいだ。お客の人は酒を飲み騒いでいる。その中でもひときは騒がしい所に目を向けるとそこにはオーバンさんとハゲーズが居た。
「あ!蒼字お前もご飯食べにきたのか!」
リッシュが俺に気がつきブンブンと手を振っている。
「おーい、一緒に飯食おうぜ!」
オーバンさんが言う前に既にハゲーズに取り囲まれている。逃げられん!
俺はオーバンさん達と食事をすることになった。
今日の集まりはどうやら特別だったようで、なんとオーバンさん達がAランクの冒険者に昇格したお祝いをしていた。俺って混ざって良いのか?
「何言ってるんだよ!蒼字が居たから俺達はAランクに上がれたし生きて帰ってこれたんだ本当はこの会に呼ぶつもりだったのに、ここ最近お前ギルドに顔出さないから仕方なく先にやったんだ。だから本当にタイミングが良かったぜ!」
オーバンさんはガッハハと豪快に笑いながら言う。
「そういう事、良いか蒼字だからお前はここに居て良いし俺達のパーティーに入れば良いと思うぞ」
リッシュはテーブルから顔を突き出し抗議する。
どうやら居て良さそうなので楽しく話をしながら飯を食べることにした。
この居酒屋は肉料理が多いかな、ゴロゴロ肉の野菜炒め甘ダレのステーキ、豚バラのちゃんちゃん焼きなどちょっと胃がもたれそうなメニューだがどれも美味しいし冒険者はこれくらい肉を食わないと身体が保たないかもな。
「お〜い食ってるかそう〜じ〜」
あれ?リッシュらしからぬ甘い声
リッシュは俺の隣に座り身体を寄せてくる。
「リッシュ!あんまりくっつくなよ」
リッシュは軽装で露出度が高めの服だからあんまりくっつかれると色々と当たって、どうして良いか困る。ま〜このままで良ければそれはそれで………
「いいじゃねーかよーなんだ照れてるのか〜かわいいな〜そう〜じ」
いかん明らかにおかしい?
「リッシュ、お前飲んでるのか?」
「なんだよ!お前も母ちゃんみたいに飲み過ぎだ〜とか言うんじゃないよな〜」
そうだったここは異世界、飲酒に年齢制限はない。
「ほら、蒼字も飲めよ!」
リッシュが今飲んでいるお酒を押し付けてくる。
「いや、しかしだな……」
「四の五の言わずに飲め!俺のお酒が飲みないのか!」
おう、まさか異世界で飲みハラ用語を聞く事になるとは、しかし、実際ここでは合法だ。他の国に行ったと思えば良いか、それじゃ飲んでみるか!
俺は初めてお酒を飲んだが美味いとも不味いとも言えない味、これならジュースのほうが良いかな。
それからリッシュだけではなくオーバンさんからも飲まされ、俺はいつの間にか寝てしまっていた。
「あっ………寝ちまったか……う〜っ……身体ダル〜」
あ〜もう、ガンガン飲ませ過ぎだよ!こっちは飲み慣れてないんだぞ!あの二人は〜。
「オーバンさん、俺はそろそろお暇しますは、飲み過ぎて結構身体がダルいっすわ!」
俺は横にいるはずのオーバンさんに声をかけるが、「おい、坊主、オーバンはあっちだ!良く見ろ俺はあいつらみたいにハゲてないだろ」
おっと、人違いしてしまった。本当だハゲどころか長髪で後に結んで整えられている。
俺はしばらく沈黙し固まる。この人もの凄く見覚えがあるんだけど、超さっきじゃん………
「ドゥわーー」俺はつい声を上げてしまう。
「なんだよ!お前、人の顔見て叫ぶとか失礼だぞ!」
ごもっともな意見です。
「酒弱いなら無理するなよ。酒が飲めるのが格好いいとか思ってる奴がいるが、良いか飲む量じゃないんだよ!飲み方が重要なんだよ。優雅にかつ上品に飲むやつが格好いいんだ!最低でも飲まれちゃ〜いけない。あそこで転がってるハゲ達みたいにな!」
長髪の男の言った先にはハゲーズが転がっている。
「確かに、あ〜はなりたくないですね」
「だろ〜あのハゲ共は節操ってものがない」
「うっせーな!相変わらずチビチビと飲みやがって、良いか!豪快にガブガブ飲むのが美味いんだよ!何度言ったら分かるんだ!リード」
「オーバンお前こそ分かってないんだよ!良いかそんな飲み方で味が分かる訳ないんだって本当はもっと美味く飲めるんだよ!」
お互い譲れないものがあるのか平行線をたどる一方で話が全然進まない。
それは取り敢えず置いておいて、この長髪の男、リードと言ったか?今のところはバレてないみたいだがびっくりさせるなよ!なんでこんな所で飲んでるんだよ!姫様を攫った賊を捜せよ!俺だけど………
「それにしても珍しいじゃないか!お前がこんな所で飲んでるなんて、いつもならオシャレなバーで飲んてるのによ」
オーバンさんに言われリードは黙る。
「………は〜そんだ!今日はこう言う騒がしい所で飲みたい気分なんだよ!」
リードはやや不貞腐れたような顔をして酒を一口飲む。オーバンさんは黙ってリードの横に座り、「らしくないじゃないか、話くらいなら聞くぞ!」
「は〜今日はため息ばっかり出るぜ!こんなハゲ親父しか聞いてくれる奴がいるなんてよ。美女に慰めてほしかったぜ!」
リードはそんな事を言いながら話をオーバンさんにする。
おいおい話をしていい内容かよ!リードも酔ってるな!
「そうか、お前を退ける程の相手………相当強いな!それにしても良いのか?こんな所で油を売っててよ」
「あ〜それが一番不可解で問題なんだよ!攫われた本人の姫様の命令で賊を追う事を止められている。兵士達全員が困惑しているよ!だからこうして飲んでいても問題がないんだ!」
「確かにそれは意味が分からないな〜アルヴィア姫様に何もなくて良かったが許せね〜あんなに良い人を襲うなんて………お前はそれでどうするんだ!」
「へっ聞くまでもないだろ!絶対捕まえてやるよ!」
「流石はリードだ!そうこなくっちゃな!なんなら俺も手伝うぜ!」
「ありがたいがオーバンあんたは冒険者だ!これは俺の仕事だぜ!」
「そうか分かった!困ったらいつでも声をかけてくれよな」
なんか良い雰囲気でよろしいのですが、姫様が表立っての指名手配は止めてくれたけど、この男リードは止まらないか油断は出来ない。これはしばらくは大人しくしておくしかないか!
「そうだ!ここに居る蒼字が多芸なんだよ!もしかしたら役に立つかもしれないぞ!」
ウォーイ何言ってるんだよ!オーバンさん、俺は大人しくしてるんだよ!黙ってろよ!
「ありがたい話なんだが…………さっきはああ言ったが、奴を捕まえるのは後回しだ。今はそれよりも優先する事がある」
「ん?何だよそれ」
「オーバンも知ってると思うが、勇者召喚が行われて
二人の勇者が現れた。つまり…………聖女様が来られる」




