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第35話 サクさんからのお願い


 あの日からリルは商売を始め順調に進んでいる。むしろ売れ過ぎて毎度売るものが無くなり早い時間で店を閉めている。

 新しい商品を入れるのも良いが商品を作る方に手が回っていない。これはどこかに発注することも視野に入れて考えなければならないと思う。


 それとダズ達誘拐犯のことだが、あの日のうちに全員が亡くなったようだ!牢屋の中で死んでおり全員特に外傷はなかったと聞いている。恐らく呪いを受けたのだろう。ひどい話だ。


「今日も早く終わったしご飯を食べに行こう!」

 商品が無くなり昼時となったのでレイチェルは目をキラキラさせながらご飯を要望、確かに腹は減ったしシナさんのところにまた行くか。



………………▽

「あー蒼字そうじさん、また来てくれたんですね!」


 シズナが俺に飛び込むように抱きつく。

 あの一件依頼、どうやら好かれたようで何かと首に巻き付いてくる。シーちゃんと違って歳も近いし、獣人は色々と育ちが良いので、俺は毎度ドキドキさせられる。


「シズナさん!蒼字そうじさんは疲れているんです。早く飲み物持ってきて下さい」


 リルはヒョイっとシズナを掴んで俺から引き剥がす。ここ最近このパターンが多い。

 

「リルちゃん離してよ!」

 バタバタと足を動かし抵抗する。


「ダメです!ちゃんと働きましょうね〜」

 リルに首根っこ掴まれ厨房の方に連れて行かれた。


「さ〜て何にしようかな〜」

 メニューを見て何にするかを考える。ただ読んでもイメージが湧かないものが多くチーちゃんに教えてもらいながら決める。


「よ〜し今日は日替わり定食にしょう」

「レイチェル達は決まった」

「決まった!僕は野菜炒め定食を5人前にするよ!」


 ……だから!どこにその量がいつも入るんだよ!

 レイチェルの身体はどちらかと言えば細い。いわゆるモデル体型なのに元の世界でもそうだけど、なんで細い身体で食べれるんだ?


「レイチェル、一杯食べなさい!」


 俺はなにか言おうと思ったが、錠剤をバリバリと食べる姿を思い出し今の方がよっぽど良いと感じたのでなにも言わなかった。


「ほい、沢山食べてくださいな!」

 シナさんが食事を持ってきてくれた。


「あれ?シナさん頼んでいない物もありますけど」


「なに言ってるんだい、サービスだよ!娘達を助けてくれたんだからこんなもんじゃ返したとは思ってないよ!」

 

 どんと背中を叩かれむせる。

 気持ちは分かるけど、こんなに出してお店大丈夫なのかな?

 

 目の前には頼んだ量の倍はある。

 レイチェルがいるから食べられはするか。


 とにかくどれも美味しいから感謝してもりもりと食べる俺達にシーちゃんがやって来て俺の足にくっつく!

 

 俺はいつも通り頭を撫でると目を細め気持ちよさそうにする。この辺はネコと同じなのかな?


 この食堂だけでも見渡せば色んな獣人がいるもんだイヌ、ネコ、ウサギ、タヌキ?等、異世界に来てバタバタしていて何となく流していたけど、これって凄いことだよな。


 俺が周りをジロジロと見ていると

蒼字そうじさんどうかしましたか?」


「いや……特には何でも無いよ!」

 いや〜ジロジロ見るのは失礼だったかな、

 ………そう言えばリルってり竜人族だっけ今のところ町では見かけないけど、もしかしてかなり珍しい種族なのかな?


「お!いた!いた!おーい」

 声が聞こえた方を見るとサクさんが居た。


「あれ?サクさん御無沙汰です。俺達になにか用ですか?」


「あ〜ちょっと君達に聞きたいことがあってな、この男について聞きたい?」


 サクさんは1枚の人相書きの紙を出す。


「こいつがどうかしたんですか?」


「こいつは今この辺に潜伏している指名手配犯でミンと言う。主には窃盗を繰り返し行い、この国内を転々としてもう15年以上逃げ続けている。

 

「15年!?それは凄いですね〜そいつなんでそんなに捕まらないんですか?」


「とにかくすばしいっこい。動きが速すぎて捕まらん。それとスキルで姿を変えられるらしい。その為人込みに入られれば追うことは難しい」


「なるほど、でもその割にはこの辺に居るって良くわかりましたね!」


「舐めてるんだよ!」

 その言葉の意味が分からず全員首を傾げる。


「そいつはワザと自分の顔を晒してからその土地で活動するんだよ!俺達衛兵をからかってるのさ!」


「成る程、ちなみに被害はもう出たんですか?」


「いや、まだだ、だからこそそいつをこの手でとっ捕まえたいのさ!だから協力してもらえないけと思ってここに来た」


 サクさんこの手で捕まえたいのでは?


「相手は超凄腕の盗賊、こちらが手をこまねいている理由にはいかないのだ!つまり手段は選ばん」


 どうもこの前の件で俺達の信頼度が高いな!

 

 シナさんの娘達の件のあと、偶然なのだがサクさん達がトラブルに巻き込まれている現場に何度も遭遇、ちょっとお手伝いしただけなのだが、えらく信頼されてしまったようだ。


「ま〜そう身構えなくて良い!私も少しでも捕まえれる確率を上げるために話をしているだけだから、それじゃー私はこれで行くから」


 サクさんは店を出て行ってしまった。



「盗賊ミンか〜どんな人なんですかね」

「ん?ま〜どうでもいいよ!俺達が被害にあってもその時対処すれば良いさ」


 俺はこの時もう少しで真面目に考えていれば、あんなことにはならなかっただろう。

 


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