第3話 牢屋の少女と脱出作戦
「私の名前はリル、リル・シャポットです」
リルは恐る恐る名前を教えてくれた。
「リルか可愛い名前だ。リルしばらく宜しくな!」
俺は努めて明るく接することにした。
「リル悪いんだけど。色々聞きたいことがあってさ。ここがどこでなんで捕まっているか教えてくれないか」
「私も詳しい位置はわかりませんがエーリュシオン共和国のタピオの大森林にいると思います。それで私がここに閉じ込められているのは…………」
リルは商人の娘で年齢は12歳、各街を転々と移動し品を仕入れては別の町で商売をする移民スタイルで生活していたらしい。先日突如獣人の盗賊に襲撃を受け捕まり牢屋に閉じ込められました。
「そっか、それは大変だったね」
こんな小さい子が盗賊に襲われたうえこんな薄暗いところに閉じ込められて普通の精神でいられるわけがない。この子は怖くて寂しいのを必死に我慢していたに違いない。ほんと良く頑張った!
俺は自然とリルに近づき抱き締め頭を撫でた。最初はびっくりしたリルも少しして俺の腹の辺りに顔をうずめ静かに泣いた。
「あの〜すいません」
リルは顔を赤くしてそっと離れる。
「いや、今のは俺が悪い、いきなり抱き締めてすまん」
「謝らないでください。すごく怖くて寂しかったんです。
蒼字さんに抱き締めて貰って、すごく落ち着きました」
「そうか〜それは良かった!アハハ」
リルの笑顔を見てつい照れてしまった。近くでリルを見て気がついたが、リルはとても整った顔をしている。これは将来美人になるのは間違いなしだな。
俺はついジロジロ見ているとあることに気がつく、リルは普通の人ではない。さっきも言ったがリルは美人でクリクリした大きな目に鼻筋が通って口も可愛らしい、髪は青色のロングで首に鱗………ウロコ!?よく見ると手の甲にも少しある、この子一体?
ジロジロ見ていたせいで不快に思ったのかリルは手を隠す。
「あの〜竜人族を見られるのは初めてですか?」
不安そうなリル
「いやそうじゃない。確かに竜人族を見るのは初めてなんだけどちょっとびっくりしてさ。リルのことを嫌いになったりはしないからそんな顔をするな」
「ほんとー………ごめんなさい変な事言って」
竜人族は珍しいのかな〜なんかリルが暗くなった気がするけど………なんにしても今はここから出ないと話にならないか。
「リル、俺はここを脱出しようと思う。なんかいい案ないか?」
子供に聞くなんてなんて奴だ!と思うかもしれないが暗くなったリルの気が紛れればいいなと思ったんだ。
しかし予想外にもリルから提案があった。話によると見廻りと食事を運ぶ時間が決まっており獣人が来るらしい。そいつが牢屋の鍵を持っているので、リルが囮になるので不意をついて俺に鍵を奪ってほしいとのことだ。シンプルだが相手からすれば俺と言う存在を知らないから不意がつける。なんて素晴らしいアイディアだ! 俺は小さい子に負けた気がしたので取り敢えずリルを撫でといた。
そしてリルが言う時間通りに誰かが来た。
「カッカッカッ」足音が近づいてくる。リルは部屋の隅に座ってもらい。俺は隠れるところがないのでベットのシーツの中に入った。薄暗いから見えないだろう。
「カッカッカッカツ」足が止まった。
「おい飯だ!………おい聞いてるのか〜!!」
「ウッウッウ」リルは体を震わせる。
「おい、大丈夫か?おい、チッ体調でも悪いのかよ!
しゃーねーな〜」
「ガチャン」鍵を開ける音がする。
良し予想通り。リルを売り飛ばす予定か分からないが最低でも死なれては困るみたいだ。あとはリルの方に行ったら後から襲って鍵を奪い脱出だ。
「カッカッカッカツ」良しリルの方に行った今だ!
「気づいていないと思ってるのか!」
その声に俺は出た瞬間硬直する。
「匂うんだよ!ここにいないはずのヒトの匂いがぷんぷんする。獣人を舐めるなよ!おい‼」
獣人の男がこちらに振り向き完全に俺を認識されてしまった。考えが足りてなかった。獣人なら嗅覚が優れている可能性があった。作戦は失敗。
俺は今から2m超えのゴツい虎の獣人を真正面から相手にしなければならないのか。
「これは死んだかね!」俺はまず間合いを取る。
獣人の男は楽しそうに舌なめずり余裕な顔をしてこちらを見据える。
「正直退屈してたんだ。八つ裂きしてやるから精々逃げて俺を楽しませろよ」
くっそ〜腹立つけど、こいつからすれば俺を切り裂くことは簡単なんだろう。でもただではやられん!俺はじいちゃんにしごかれてあらゆる武術を習ったんだ!躱し続けて隙を見て、締めて落とす!
「なんだ来ないのか、ならこっちから行ってやるよ!」
鋭い爪をたて走ってくる。速い!なんて速さだ!こんなの躱しきれるか!
「蒼字さん逃げてーー」リルの叫びがこだました時
「ドーン、あ、痛った〜……」何故か壁に激突した。
は〜今のはなんだ、俺は攻撃を躱すために横に飛んだだけだぞ!なんか想定以上に飛びすぎたのか……まさか‼
「てめぇー今何しやがった!」
あいつ俺が見えてなかった。良し試してみるか、あいつの動きをしっかり見て今度は加減して………
「なにブツブツ言ってやがる!無視するんじゃね〜」
獣人ってみんなこんなに短気なのか?
獣人の男が飛びかかって来た。
俺はそれを最小限の動きで回避する。
やっぱり速いけど十分見て躱す余裕がある。
脇腹がガラ空きだ。喰らいな、回し蹴り!
回し蹴りは見事に獣人の男に当たり吹っ飛んだ。
「えっ‼」獣人の男は鉄格子に激突、そのまま吹き飛び牢屋が壊れた。牢屋の外に出て獣人の男がのびているのを確認し改めて牢屋を見る。
「なにこれ……牢屋ってこんなに簡単に壊れたらダメだよね」
どうやら異世界に来て俺の身体能力が急激に上がったらしい。
「蒼字さんすごいです!」
テンション高めになったリルが俺に衝突するように抱きついて来たので優しく受け止めた。
俺はリルの頭を撫でながらその力に唖然としていた。




