第112話 複数の血の匂い
「お〜い!蒼字トラブルみたいだ。起きろ」
蒼字は1日お姫様達のエスコートをして神経をすり減らし疲れたので、ベットで寝ていると横からワンワンと煩い。
「はぁ〜眠いのに、何があった?」
蒼字は目を擦りながら風太の方を向く。
「血の匂いがする。しかもかなり濃い、死人が出ているかもしれん」
風太の言葉に一気に目が覚めた。
「冗談だろ!ここは城の中だぞ!そう簡単に賊が入ることなんてないはず」
「そんな事は分かっておる。………とにかく急いだ方が良さそうだ。近くで致死量レベルの匂いがする。こいつは………」
………▽
「あぁーレミさん!? 大丈夫……じゃね〜よな」
懐から筆を出し『治癒の朱墨』をレミさんにかける。
「くっ……」
レミさんの傷口を治すことが出来た。それなのに一向にレミさんが目を覚まさない。
「まさか!?……血を流し過ぎた」
レミさんが倒れていた場所には大きな血溜まりが『治癒の朱墨』では血液の補充までは出来ない。
「顔色が……くそ!」
レミさんの状態は改善せず、顔色は青白くなり呼吸も緩やかに静かになっていく。このままではレミさんが死ぬ。
何か、何か、助ける方法はないのかぁー!
蒼字はイラつきのあまり床を殴りヒビが入る。
「何やってるんですか〜」
横に居たルビーがつぶやく。
「そんな顔の蒼字は面白くないです」
ルビーはレミさんの腕を持ち、ガシッと蒼字の首を鷲掴みにする。
「ルビー、なんのつ、いた〜」
首に何か刺さった。
「うんうん、合致します。血液が使えそうなので輸血を行います」
「ルビー……お前まさか、そんなことまで出来るのか?」
「………………」
ルビーは何も言わず作業を続けていたので、蒼字も黙ってそれを見ていた。
「おぉー」
ルビーの顔色に徐々に赤みがかっていき呼吸もしっかりとしている。症状は確実に改善していた。
「ルビーありがとう、助かったよ!」
蒼字がルビーに感謝を伝えるが反応がない。プイッと横を向き黙ったまま……テレてるみたいだな!素直じゃないんだから……
蒼字は僅かに笑みを溢したが、見られるとルビーが不貞腐れそうだったのですぐに元の顔に戻した。
「んっ…、んー!?、あれ私、確かにアインに切られたはず」
レミさんは切られたところを触りながら確認、ヒラヒラと服がめくれて胸の丸みが分り、蒼字はドギマギしたが、仮面のおかげでレミさんには見られていない。つまり見てもバレない…
チラチラと蒼字は傷口(胸)を確認する。
蒼字はある程度確認に満足すると、マントを外しレミさんに渡す。
「使徒様が助けてくれたのですね。ありがとうございます。死ぬのを覚悟したんですけど、傷口が全く無いほど綺麗に治ってます。本当に凄いのですね」
「そんな事ないですよ!今回は私一人ではあなたを助ける事は出来なかった。こちらにいるルビーが協力してくれました。」
「ルビーさんありがとうございます」
「(T_T)ノ気にすんな!」
ルビーは淡白な返事を返した。
……………▽
「それで一体何があったんです?」
蒼字が聞くと、事の経緯をレミさんが
説明してくれた。
「何をしたかは分からないが、ペトロスが得体の知れない力を使ってアインさんを操っている」
「私もそうだと思う。あいつとは長い付き合いだけどあんなこと私にするわけがない!」
レミさんは確信を持って言っていた。長い付き合いからお互いの事を良く知っているのだろう。
「しかし、そうなるとアインさんを早く止めないと被害がでるかもしれない………いやその前にペトロスを確認しよう」
蒼字はアイン以上にペトロスを放置した方が被害が出ると思い取調室を確認する。そこには干からびて亡くなっているペトロスの死体が倒れていた。ここで気になったのはペトロスの状態、大量の血を流したはずにも関わらず床には一滴の血もなく死体は干からびていた。レミさんの話からすると血が何らかの変異をして移動した可能性がある。
「ヤバいな〜早くそいつを探さないと、風太!探せるか?」
「あ〜すぐに追える!急いだ方が良さそうだ。城の中で複数の血の匂いがする」
「分かった行くぞ!」
風太が走り出しそれを蒼字そしてレミが追っていく。
………………▽
◆アルヴィア姫の視点
血痕が部屋中に飛び散っている。でもお姉様の死体はここにない、それならまだ生きている可能性はある。こんなところで座り込んでいる暇はないわ!早く立ち上がりなさい私!
心の中を整理し私は心を奮い立たせ立ち上がった。その時、「ドサッ」と後ろから音が、振り向くと護衛の兵士が剣に刺され倒れていた。私は刺したその者達を見て驚く。何故なら同じ国王軍の兵士だったから、
「あなた達一体何を………」
あまりの行いに怒りが込み上げたが、それはすぐに収まる。兵士達の姿は血で真っ赤に染まっており目は真っ赤に充血、正気とは思えない姿だった。
私を囲うように近づいてくる。隙をついて逃げなければ殺されてしまう。一歩、二歩と後ろに下がる。
「!?」壁に当たりこれ以上逃げられない。
「ウガァー」雄叫びを上げ剣を振り上げる兵士達、
「アルヴィアから離れなさい!!」
兵士達の後ろが光、バチバチと音をたて倒れた。
「陽菜乃!?」
「お待たせだよ!アルヴィア逃げよう」
陽菜乃は兵士達に雷属性の銃弾を打ち込み倒すと、アルヴィアの手を掴み走って逃げた。
その後ろをゾンビのように揺れながら追ってくる。
「アルヴィア、あのくらいの速さなら余裕、さっさと巻いちゃお!」
「陽菜乃、前から赤い人が!?」
「赤い人?って何あれ!?」
前から赤い人がぞろぞろと歩いてくる。
鉄臭い喉にくる強烈な血の匂いが広がり気分が悪くなりそう。前から徐々に近づいてくる。そして後ろからは暴走した兵士達、私達は逃げ場を失い絶体絶命になってしまった。




