第111話 アインの狂気
「ゴハァ」ペトロスは苦しそうに血の塊を吐く。
「おい、何をしているんだ!くそー早く回復術師を呼んてくれ!」
アインが叫ぶように外に待機させていた兵士に指示、兵士は急ぎ通路を走る。
「ペトロスの野郎やりやがった!逃がすつもりはないぞ!」
アインが激怒する横でレミは広がる血の溜まりを凝視していた。その血は魔力を帯び徐々に模様に見えてくる。
「アイン、そいつから離れて何かがいる」
「はぁ!?」アインが振り向くと同時に血飛沫が飛ぶ。
「アイン!?」レミが叫ぶ。
「チッ、大丈夫だ!直前で身体をひねって躱した。腕をちょい切られただけだ!」
アインは腕を抑えレミの傍に向かう。
「なんだよ!あれは?」
真っ赤な血が細く鋭い刃となりそそり立っている。血の海はさざなみをたて、血の塊が徐々にせり上がり血の塊は形状を変化させ赤い人が現れた。
「何しやがったペトロスの野郎、面倒なことになりそうだ。レミこいつを焼き払え!」
「ファイアアロー」
レミの周辺に火の矢が複数生成され赤い人に飛んでいく。矢はグサリとすべて命中し赤い人は倒れた。
「ふーなんだか知らんが思っていたより大した事ことなかったな」
「そうね……でも……考えても仕方ないわ。とにかくこれはアルバート団長に報告しましょう」
レミは頭の片隅に引っかかるものがあったが、頭を振り考えるのをやめた。
「だな!行くか!」
「うぐ………な…んで……アイン…」
レミは何が起こったのか分からなかった。さっきまでいつものように話をしていたはずなのに、アインの剣がレミの腹部に刺さっていた。
レミはそのまま後ろに倒れ、それをアインが冷たい目で見下ろしている。アインは剣を引き抜くと通路を真っ直ぐ歩いていった。
………………▽
◆アルヴィア姫の視点
「アルバート団長は居られますか?」
アルヴィア姫はミネルヴァ姫の遠征と合わせて、ペトロス大臣の行いについて国王に報告する為、アルバート団長のもとに訪れた。
「どうされました?アルヴィア姫、ずいぶんと慌てておられるようですが」
「申し訳ありません、急ぎのお話がありまして!」
アルヴィアは事の経緯を話した。
「そうでしたか、分かりました!それでは今からでも国王のもとへ」
「はい!宜しくお願いします」
アルバート団長の了承を得ることが出来たので、国王のもとに向かう。
向かう途中、前から慌てて走ってくる兵士が現れた。
「報告致します!アイン兵長が城内で暴れており多数の被害が出ております」
「なんだと!?」
アルバート団長は驚き、すぐに鋭い目つきで兵士を見る。
「案内してくれ、私が対応する!」
アルバートは静かに剣を握り締める。
…………………▽
◆アルバート団長の視点
多くの兵士達が血を流し倒れている。その中央をゆらり、ゆらりと歩くアイン、他の兵士達かアインを囲んでいるが躊躇して攻めることが出来ずにいた。
「待たせた!」
その一言で兵士達は背筋を伸ばし敬礼、現れたのは数人の兵士を引き連れたアルバート団長。
「アインどうした?ずいぶんと調子が悪そうだな!」
「…………………」
アインから返事はなくゆらゆらと首を動かすばかり。
「……そうか!それがお前の答えか!」
言い終わると同時にアルバートは一瞬で接近、アインの脳天に強烈なゲンコツを叩き込み顔面が地面にめり込んだ!
周りの兵士は呆然となり、中にはアインを心配しやり過ぎなのではと声が聞こえた。
「騒ぐな!この程度でこいつはくたばらん!全く持って、嘆かわしい!私はお前をそんな風に育てた覚えはないぞ!」
倒れているアインの背中に拳を落とす。しかしアインは即座に体勢を変え躱し距離を取った。アルバートの拳は「ドカン」地面に突き刺さる。
「どうした!躱して終わりか〜そんな程度に鍛えていないバスだ!来い!来なければこちらから行く」
アインは剣を構え突撃、アルバートも剣を抜き激しい斬撃の攻防が始まった。その剣速があまりにも速く、周りの兵士にはまるで見えず慄いていた。
「ほーう、力、速さともに格段に上がっておる。どうやら操られバーサーカー状態となったか?しかし、以前にも言ったが!ただがむしゃらに剣を振れば良いものでは無い!剣筋がなっておらん!」
アルバートの鋭い斬撃がアインの剣を弾き、上段から剣を振り下ろしアインの肩口から切り裂いた。
アインは血をながし倒れていく。
「ムッ」
倒れかけたアインが踏み止まり剣を振る。
アルバートはそくざに後退し躱す。
「私もまだまだか……アイン必ず助けるからな」
アルバートの頬から血が滴る。あの状態で攻撃をするとは流石に思わなかった。本来ならばまともに動けない程のダメージを与えた。しかし今のアインの姿を見てそれは甘い判断だったと感じていた。アインの傷口から流れる血が変化し鉱石のように固い物になり止血している。
アルバートはゆっくりと剣を構えアインを救うため剣を振るう。
………………▽
◆アルヴィア姫の視点
私は数人の兵士を連れてお姉様のもとに向かっていた。兵士からの報告は二つ、アインの乱心とペトロス大臣の自殺、アインはペトロス大臣の尋問を行っていた。この事から二つの出来事には何らかの因果関係があると思えた。ますは最優先にお姉様の身の確保をしなければ。
「お姉様!!」
私はノックもせずに急いでドアを開ける。部屋全体に血が飛び散った跡がありショックのあまり私は立っていることが出来ずに膝をつく。
お姉様、お姉様、お姉様どこですの!?
アルヴィア姫はショックのあまり動けずにいた。
自身にも危険が迫っていることも知らずに……




