第110話 ペトロス大臣
おのれおのれおのれ〜絶対に許さんぞ!
ペトロスは兵士に連行されながら怒り心頭であった。
ペトロスの当初の計画はあいつのせいで完全に失敗に終わった。これで私の取るべき手段はあれしかなくなった。
ペトロスはこれまで数々の悪事を働き、今の地位を手に入れたが、それでもある一線だけは越えてこなかった。それは人の命、ペトロスは金欲しさに人身売買に手を出したのだ。取引相手は闇の組織アビス、もちろんそいつ等のことは知っており、どう扱われるかは大体想像がついたが、そんな事はどうでも良かった。私は誰よりも金を持ち贅沢をして上に立つ、どんな相手でも文句など言わせん!そしていつかは私がこの国の王となってくれる。そう思っていた。
ペトロスの欲望は自分で抑えられない程に肥大化した。そんな矢先のこと、人身売買が国王軍の調査によって見つかった。このままでは私の身も危険だとすぐに取引を切り捨てだが、考えは甘かった。アビスの奴らは私が裏切ったことを逆手に脅してきたのだ。「おのれ〜クズの分際でー」しかし今は従うしかない。奴らからの指示はミネルヴァ姫を攫い受け渡すこと、アビスはミネルヴァ姫を生贄にでもしたいのだろう。
ミネルヴァ姫には呪いがかかっており城から出すと呪いが放たれるが知ったことか!自分の身の安全が守れれば良い。魔術師のアルルナージャにでも言っておけば何とかなるであろう。そしてペトロスはミネルヴァ姫を攫う計画を実行した。
ここは城にある取り調べ室、一辺が5メートル程の小部屋にペトロスと二人の兵士が居た。
「どうもペトロス大臣、こんなところでお会いすることになるとは思っておりませんでしたよ!」
「なんだ、私の取り調べをするのはアインとレミか」
ペトロスが座っている前に椅子を持って来てアインが座り、その後ろにレミが立って待機する。
「ペトロス大臣、あなたにかかっている容疑は大きく分けて二つ、一つはミネルヴァ姫様の殺害容疑と人身売買、ミネルヴァ姫様の件についてはこれから検証して行くけど人身売買については概ね証拠が上がっているわ」
「ほぉーどのような証拠かね。聞かせて貰えるかな」
ペトロス大臣は足を組み替える。
「あなたは知らないと思うけど、一人逃げた人がいたのよ。人身売買の会場から」
「その者が私がその場に居たと?それは本当なのかな?そいつの証言だけでは証拠としては不十分だな」
ペトロスは直接人身売買の現場には出向いておらずそいつの証言は間違っている。会場には証拠になるような物は作ってはいない。
「そうです。それだけでは不十分ですが、あの人は頭ではなく身体を使って証拠に辿り着きました」
「ん?レミよお前は何を言っている。意味が分からんぞ!」
「そうですね!私としてもこんなやり方で証拠を見つけるなんて偶然も良いところですが、見つけたのはリードです」
「リード?誰だそいつは」
顔をしかめるペトロス
「覚えておりませんか?ペトロス大臣も間接的には被害を受けているはずですが、それは関しては今話すことではありませんので本題に入ります。前日深酒をしたリードは、その辺で寝ていたところを捕まり人身売買の会場に連れて行かれました。本人は鎖に繋がれていたのですが、自力で脱出、普通なら逃げたし屯所にでも行くのでしょうがリードはそのような男ではありません!会場を見て状況から犯罪者と判断し、全員倒してしまいました。さらにここで通報してくれればまだ良かったのですが、リードはそのまま現場にいる者を締め上げ黒幕を一人で探しました。つまりあなたです!」
「おい、ふざけているのか!そんなことで見つかるわけがなかろう。そんなに簡単に喋るような輩ではないはずだ」
「そうですね……リードと言う男はとても凶暴な男でして、あそこまでする人はそうはいませんから」
「んんん、どうなったのだ」
先程の事もありペトロスは冷や汗をかく。
「四肢に関してはすべて変な方向に曲がり身体中は腫れ特に顔などは手をグゥにしたみたいになっていました」
ペトロスは青ざめ足をガクカクと震わせている。
「貴様ら!まさかそれを私にしようとは思っておらんだろうな」
「ご安心下さい。そのような事は致しません。そのような拷問まがいなことをする前にペトロス大臣の邸宅を捜索させて頂きます!」
アインの一言にペトロスは興奮し立ち上がる。
「そのような事が許されると思えているのか!」
「もちろん私共ではどうにもなりませんので、アルバート団長が国王に許可を頂く予定となっております」
「何だと!?アルバート団長が動いているのか!」
ペトロスはうろたえる。
アルバート団長が動けば恐らく許可が下りる。それなれば何かしらの痕跡が見つかるやもしれん。そうなれば完全に私の人生は終わる。
「くっハッハッハ」笑うペトロス
もう迷っている暇などない、やるしかない!
ペトロスは持っている宝石を胸に当てると魔力を込める。宝石は鋭い槍となり胸を貫いた。




