第106話 帰城までの道のりは遠い
アルヴィア姫とミネルヴァ姫は広場で特別に行われた様々な演し物を見て楽しんでいた。その姿はどこにでもいる普通の仲の良い姉妹に見え、蒼字は満足していた。
「そろそろ時間かな」
空を見ると日が沈み始めている。残念な話だが彼女達の楽しい時間、自由な時間は終わりだ。
王女と言う決して逃げることの出来ない重責を担う彼女達は帰らなければならない。
さて、どう切り出すか………
「ん!どうした風太、何かあったか?」
スーッと姿を現す風太、
「あ〜大した問題にはならんと思うが事故があった。問題は事故を起こしたのが護送車のようで、中に居た盗賊どもか逃走している」
「そうか、一応警戒する…………ちなみにそれはどこだら辺だ?」
蒼字は前を見て風太に確認を取る。
「ここから東、百メートル程先の道路だ」
「!?おせぇ〜よ!よく見ろ!」
そこにはナイフを首筋に当てられているミネルヴァ姫が、ほんのほんの少し目を離しただけなのに……
「お姉ちゃんに手を出したらただじゃおきませんわよ!」
アルヴィア姫が突っ込もうとしているところをセラさんが羽交い締めにして止めている。
「おい、黙れ!この女が殺されたいのか!」
あっちはテンプレコメント言ってるよ。
なんでよりにもよってミネルヴァ姫を選ぶかね〜。
「えっとなんでこんなことになってるの?」
傍に居たガルムさんに確認する。
「悪いな〜まさかスッポリ盗賊の手の中に入っていくとは」
話によるとネコの獣人の子供を追いかけて走ったところに盗賊の男が現れぶつかる様に捕まったらしい。盗賊を含めた全員があ然と見過ごしてしまったとのこと。
「ま〜なんとかしますんで、良いですよ」
「余裕かよ。この状態だ。無闇には動けないぞ」
「あれなら、大丈夫でしょ〜風太宜しく!」
風太はスーッと消える。
「オラ〜近づくんじゃね〜、エヘヘ偶然だが良い女を捕まえだぜ、さっさと仲間を見つけてトンズラだー………………ウギャーー」
こっそりと近づき盗賊の腕には噛みつく風太、あまりの痛みに盗賊はミネルヴァ姫の拘束を解き腕を押える。ミネルヴァ姫はその隙をみて走って逃げた。
「おかえり、ミネア!もうちょっと前を見なよ。何があるか分からないんだから」
「えーこれからは気をつけますわ!貴重な体験をしました」
本人はあまり反省していない。そもそも怖くなかったみたいだな!王族ともなると並の胆力ではないのか?
「くそ〜そいつを返せ〜!」
盗賊は蒼字にナイフを向け突進する。
『影縛り』
懐から一瞬筆を出し一振り相手の影に墨を飛ばす。
「なんだ!?身体が動かん!!」
「お騒がせした詫びをしろ!デスマーチだ!」
『操影術』
「な!?なんじゃコリャー身体が勝手に動く〜」
盗賊は激しい動きでブレイクダンスを踊る。
盗賊があまりにも騒ぐから逃げた他の盗賊にも声が聞こえたようで集まって来た。せっかくなんで一緒に踊ってもらおう。
しばらくすると十人以上のダンス集団が完成、今日の催し物の一つになり観客までついている。俺達も見ていたが飽きたので途中で帰った。
蒼字はガルム達に飯の誘いを受けたが丁重にお断り、ガルムが最後まで引き下がらなかったが最後は今日一番の鋭いセラさんの一撃をくらい沈黙、ズルズルと引きずられ帰られた。
「予想より遅くなっちゃった。急がないと!」
「蒼字、そんなに急がなくても良いのではなくて、影武者をルビーさんがやってるんでしょ」
アルヴィア姫はあまり帰りたくないのか、早足を止めて欲しいようだ。
「そうなんですけど、なんか不安なんですよ!ルビーってたまにシャレにならない冗談とかするんですから」
「まぁ!それは面白そう、聞きたいわ!」
「そうですね、時間が合えば後でお話します」
ミネルヴァ姫の顔、さっきから笑顔のままだ。
顔が固まったか?マスクが壊れたかもしれん。
急がないと!
とにかく後はこの直線道路を歩けば城門に着く。
「今晩はこんなところで会うなんて奇遇ですね!」
「…………キャンベルさん慣れないことはしない方が良いですよ」
「どう言う意味です。私は全然変じゃないですよ」
「かたい!固すぎるんですよ!表情が!嘘をつき慣れていないから表情には出さない様にしているとしか思えないんです!俺に……いや、もしかして後ろの二人に用があるんですか?」
「はぁー分かりません。私はあなた達を連れて来るように言われただけですので、…それにしても、蒼字様、受付嬢のサポートとして言わせて頂きますが女遊びは程々にしてください」
キャンベルさん違うから!
なんか勘違いされてる。
「やぁー偶然!ご飯でもどうかな」
そこに現れたのは冒険者ギルドのギルマス
「貴方ですか?黒幕は!」
「ひどいな〜黒幕だなんて、何も悪い事はしていないよ。それに呼んだのは私ではないからね。悪いんだけど後ろの御二方を連れてこちらに来てもらえるかな」
「嫌だと言ったら」
なんとなくだが不穏な空気が流れた気がしたので断る素振りを見せる。
「ん〜そうだね無理矢理とか私の好みではないし、それに丸焦げになりたくないしね!」
ギルマスの横からバチバチと音がする。
「そう時間は取らせないから頼むよ〜」
手を合わせて頭を下げるギルマス、
貴方は偉い人なんだから俺如きに頭まで下げなくてもいいんですけど、仕方ない。
「分かりました。出来るだけ手短に行きましょう。
こちらに移動をお願いします」
ギルマスに誘われるまま移動、一軒の特に見立たない普通の家に通され二階に上り部屋に入ると、椅子に座り落ち着かないのか何度も足を組みかえているおばあちゃんが居た。
「なんだ〜黒幕はサリーさんか」
「何だい突然黒幕とは!ま〜良い、そんなところで突っ立ってないでさっさと座りな」
全員席に座るとキャンベルさんがお茶を配る。
「サリーさんあんまり他の人には話して欲しくなかったんですけど!」
蒼字はやや不機嫌そうにサリーを睨む。
「悪かったよ。だが仕方ないさね〜城からミネルヴァ姫が出ている。これは国を揺るがす大問題になりかねない。それをおいそれと見逃すほど私は神経図太くないんでね」
「サリーさんはどこまで知っているんですか?」
「全部さ」
サリーさんは端的に答えた。しかし蒼字は驚いていた。話によればミネルヴァ姫の呪いは国家機密いくらギルドの重鎮とはいえ教えて貰えるとは思えない。
蒼字が顎に手を当て考えていると、その重苦しい空気の中、話についていく為、キャンベルさんが質問をする。
「一つ質問を宜しいですか、ミネルヴァ姫とはこの国の第一王女で城から出ることを禁じられている。あの王女様のことでしょうか、あの方が外に出られるとは考えづらいのですが……」
ん?そう言えばキャンベルさんは元王国軍で副団長を務めていたんだっけ、だから多少はミネルヴァ姫のことも知っているんだな。
「ん!ん〜ん……あ!?思い出しましたわ!貴方はキャンベル副団長ではありませんか、お久しぶりですわ。お元気でしたか」
キャンベルさんは眉間にシワを寄せ、考えなにかに気がつきたじろぐ。
「そ、その声は……ミネルヴァ姫?」
「はい、そうですわ、こんなところでお会い出来るなんて、とても嬉しいですわ」
「え!?は?えー」
キャンベルさんの頭が追いついていないようで混乱している。
「キャンベルさん落ち着いて、ミネアそんなに簡単バラしたらダメだよ。何のための変装なのさ!」
「フフフッ、ごめんなさい、キャンベル副団長は私のお茶に付き合ってくれる数少ない友達だったの出て行ってしまったと聞いた時はすごく悲しかったわ」
「そんな〜畏れ多い、私など……」
「キャンベル副団長はずいぶんと変わられましたね。鎧姿も凛々しくて格好いいと思いますが、今の制服姿も可愛くてとても良いですわ!」
「姫様……」
キャンベルさんは股をキュッと閉めて恥ずかしがる。兵士の時はスカートは履かないだろうから、ミネルヴァ姫からすると新鮮な感じがしたのだろう。
ギルマスはもう一人の女性を見て、
「本当にミネルヴァ姫とは驚きだ、ちなみにそちらに居られるもう一人の方は……アルヴィア姫ですかな」
アルヴィア姫は少し考えてから頷いた。
「話が脱線したよ。私はまどろっこしいのは嫌いだよ!蒼字ミネルヴァ姫の呪いはどうした!
「封印した!」
その一言を聞いたサリーさんは酷く動揺し椅子から転げ落ちた。




