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第104話 職業柄


 猫耳食堂を出たあと、商店街の大通りを歩いていた。二人の姫様は先程と同じ様に周りをキョロキョロ、アルヴィア姫は色々行事やお仕事で外に出ていた経験があるので、まだ落ち着いて周りを見ているが、こうした監視体勢でない自由な環境は初めてだろうからすごく楽しそう。ミネルヴァ姫は何を見てもキラキラと目を輝かせて見ていた。彼女にとってはこれ以上ない幸せを感じているかもしれない。


蒼字そうじあれを食べてみたいのですが、買って頂けませんか?」

 ミネルヴァ姫の指差す先にはおまんじゅうを売っている店が、目の前には家族で美味しそうに食べている人が居る。きっとあれを見て食べたくなったな。


「ヨッシャー食べに行こ〜」

 俺は二人を連れてまんじゅうを三つ頼む。


「はいよ!」おっちゃんがせっせと準備をする。


「旨そうだな〜」

 他の商品を覗いていると、

「あんた!サボってるんじゃないだろうね!」

「どぁー!?なんでサリーさんがこんなところに!」


 屋台の裏から突然現れたのは商業ギルドのサリーさん。


「あんた!リルの手伝いはどうしたんだい!サボっているんじゃないだろうね〜承知しないよ!」

 杖をブンブン振って怒っている。


「はぁーなんでサリーさんがここに居るんですか?」


「なんだい!私がここにいちゃ〜いけないとでも言うつもりかい!」


「そんなこと言いませんよ。純粋な疑問ですから」

 俺はガクッと肩を落とす。


「いつも書類ばっかり見てると現場の勘が無くなるからね〜、定期的に視察をしてるんだよ!案外こう言う仕事が重要だったりするのさ、現場の生声は上までは届かないからね」

 

「へーそうなんですか、大変ですね!サリーさん、お仕事頑張ってください。それじゃ〜」

 俺はまんじゅうを片手に店を離れようとする。

「話はまだだよ!」

「グェー」

 蒼字そうじが後ろを向き一歩踏み出した瞬間、後ろから杖で首を引っ張られた。


「何するんですか?痛いじゃないですか!」

「慌てて帰えるんじゃないよ!どうせ仕事をサボってるだろ。ちょっと付き合いな!」

「いえ……今は忙しいんで……」

「何が忙しいだよ!こんな昼間っから女連れで遊ぶとは、今後リルとの関係は改めさせて貰う必要がありそうだね〜」


 サリーさんは二人の女性をまじまじと見ながら蒼字そうじを説教するが、数秒後顔が青ざめていった。


「ん!サリーさんどうしました。顔色が良くないですよ?ん〜今日は日も強いですし、年齢とかも考えて行動した方が、いいと思いますよ」

 

「何言ってるんだい!私は元気だよ!ちょっとこっちに来な!」

 

 サリーさんに引っ張ら路地裏に連れて行かれる。


「どう言う事だい!なぜお前さんがあの方々と一緒に居るんだい!」

 怒っている…とは違うか?物凄く焦って興奮したサリーさんが怒鳴るように話をして来た。そしてこの内容からすると……

「サリーさん、あの二人のこと分かるんですか?」

「この国に居て知らないわけないだろう!アルヴィア姫とは何度か交渉する機会があったんだよ。ミネルヴァ姫とは喋った事はないけど、近くで見る機会は数回ある。あんたが一緒に居てよい方達じゃないよ!」

 

 蒼字そうじは、おー!と内心驚き、パチパチと手を叩く。


「あんた馬鹿にしてるんじゃないわよね!」

 あ!今度は怒られた。

 

「いや、驚いているんですよ。何で分かったんです?見た目で判断するのは難しいと思うんですけど」


「見た目で判断したわよ!見れば分かる」


「え〜そんな〜、完璧な変装をしたつもりなのに〜」

 蒼字そうじは肩を落とす。


「ちなみにどこがダメか教えて頂けます?」


「全部だよ!」

 あ〜この答えだよ!何も分からん!問題点が分からんから結局改善できへんやん。

 

「あの〜もう少し詳しく〜……」


「見た目さ!顔で言えば口の形、見える範囲にあるホクロ手の形、足の太さ、胸の大きさ、他にも見れば分かる事は多くあるわさ」


「え〜そんなの覚えてないスよ」

 物凄く想定外、そこまでの対策なんて打てない。

 …………うん!諦めよう


「職業柄人を覚える必要があるからいつの間にか一度見たら特徴と人の名前は絶対忘れなくなったのさ!

 それで、あれはどう言う事だい!何をどうやったら二人の姫君を外に連れ出せるのかね〜あんたどんな魔法を使ったんだい!」


「ん〜ま〜お忍び視察と言ったところですか、出来ればそっとして頂けると助かるんですけど……」


「はぁー分かってるより突っ込んで良い話ではないね。ただし、商業ギルドに関わる問題は起こすんじゃないよ!もしも起こしたら、国だろうと口出しさせてもらうからね」

 ギロッとした目で釘を刺すサリーさん

 

「当然ですよ!トラブルはゴメンですから!」


「本当かね〜リルから聞いてるよ。あんたはトラブルを呼び寄せるって」

 

「なんて言われよう……そんな事ないですよ」

「王族を連れた一般庶民がそんな事言えるのかい?」

「………すいません」

 

 サリーさんの言う事はごもっともで、ここ最近王族とかギルドの重鎮の方と話す機会が多かったので、慣れたと言うか感覚が鈍ってるかもしれない。


「それでこの後どこに行くんだい」

「商店街の方をぶらぶら歩いて中央区の広場に行こうかと、あの辺演し物とか出ていて賑わってますし子供連れの家族も居て安心して遊べるように兵士の方が見張ってますから安心出来ますよね」

「そうさね〜あの二人には出来ればこの国をしっかり見て欲しい。分かった、協力しようじゃないか!」

 サリーさんはニャっとして拳を握り締める。

「あ、あの〜サリーさん何をするつもりです?出来ればそっとしておいて貰うと嬉しいのですが……」

「な〜に直接手はだしゃ〜しないよ!ただ楽しくしようと思っているだけさ!これは急がないとね!あんたは出来るだけじっくりと商店街を廻るんだよ!」

 サリーさんは高齢者とは思えない速さで走っていった。



「あれ……大丈夫かな。広場に行くのやめようかな」

 蒼字そうじは口ではそう言ったが、行かなかったら後で叱られるので行くしか無いと分かっていた。

 

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