鬼の村の日常2
「にいちゃま、弓の魔法式を教えて」
翌日の朝、サトが魔法を教わりにきた。
昨日ついてこられなくて寂しかったらしい、かわいいやつ。
「物を動かす魔法の応用だ。弓が獲物に向かって飛んでいくように制御してみなさい」
「なかなか真っ直ぐ飛ばないのー」
「それは空気抵抗を考えてないからだ。
空には小さい粒がたくさん漂っていて、弓が飛ぶのを邪魔している」
魔法は世界の法則を書き換える技術だ。
だから法則を正確に理解しているほど効率の良い魔法を使うことができる。
運動方程式を理解している場合と、なんとなく弓を飛ばそうとしている場合では、魔法のエネルギーロスが全然違うのだ。
「あ〜、なるほどね!」
今の説明で理解できたのか、、。
前世の教養というズルなしにこの理解力、、恐ろしい子、、!
広場で練習していると、村の子供たちが集まってきた。
「エンとサトがまたなんかやってるー」
「ほんとだー、今度は何やらかすのかな」
「おーい、エン、サト!また魔法の練習してるのかー?」
「センリか、サトに弓の魔法を教えていた」
「ほう、、もうそこまで魔法が使えるようになったのか。サト、あそこの的を狙ってみろよ」
こらこら、サトを焚きつけるんじゃない。
「うーん、できるかわからないけどやってみる」
サトもすぐ乗らないの
サトが魔法をかけた弓を構え、的に向かって弦を放った。
ドーーンッッッ
嫌な予感がしたんだよ、、。
矢は木の的を貫通して、その先の木に突き刺さっていた。
「エン様、何事ですか!!!!」
「大事ない、騒ぐな」
「どう見ても大事でしょう。何があったか説明してください」
お目付役のランマが飛んできた。
面倒だ、実に面倒である。
この人、心配性なんだよな。
さて、どう言い訳したものか。
「俺は仕事に戻るわ。またなエン、センリ」
「にいちゃまに教わった魔法を使いました」
この裏切り者どもーー!!!
「なるほど、つまりエン様が原因ということですね?」
「、、そういう見方もできるな」
「魔力の多い子供に魔法を使わせてはいけませんと何度も言っているでしょう。殿にも報告させてもらいます」
とほほ、、おっしゃる通りです。