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バスターバスター2

「その試験は……何なのですか!?」


「それはだね……」


 男は、もったいぶるように大きく間を取り、緊張感を演出してみせた。



「ゴクリ」



 シエラも男に合わせるように、大げさにツバを飲み緊張感を助長させた。



「その試験とは、ギルドメンバーの1人と戦うこと! そして、その戦いで勝利すれば合格だ!」


「ええー!」


「ははは。驚いたかい?」


 男はとても満足そうな顔をしていた。


「まあ、少しだけ驚きました」


 はたから見ればとても驚いていたように見えると思うのだが、シエラが言うには、少しだけ(・・・・)らしい。


「試験内容についてはわかりましたが、なぜこのような試験を行うのですか?」


「このギルドの仕事は魔物を討伐すること。だから、魔物との戦いで大怪我を負わない程度の実力があるかどうかを見る必要があるのさ」


「なるほど。そういうことですか」


「さて、話はこのくらいにして、そろそろ試験を始めてもいいかい?」


「はい。ところで、私は誰と戦えばよろしいのですか? あなたとですか?」


「いや、戦うのは俺じゃないよ。チョット待ってて」


 男はそう言うと、秘密基地の奥へと消えていった。



 しばらくすると、男は1人の青年を連れて戻ってきた。


 その青年は髪をツンツンとさせ、表情もツンとしていて、なんとも怖そうな雰囲気を放っていた。


「お待たせ。彼が君と戦うギルドメンバー、エイダンくんだよ」



 エイダンはシエラを見つめ「よろしく。オレはエイダン」とぶっきらぼうに言った。



「私はシエラです。よろしくお願いします」


「ふーん。シエラか。……ねえ、ケイフウさん」


 ケイフウというのは、このスーツの男の名前だろう。


「うん? どうしたの、エイダンくん」


「オレは手加減が得意じゃないんです」


 エイダンは至って真面目な様子でそう言った。


 その言葉に対し、ケイフウは「あはは」とヘラヘラと笑うだけで、それ以上は何も言わなかった。


「問題ないと思いますよ。私はそれなりに強いので」


 これは虚勢でもなく誇張でもなくただの事実である、といった調子でシエラは答えた。


「ふっ。そうか」


 エイダンは口の端をわずかに上げて笑った。


「よし。それじゃあ、試験を開始しようか。ついて来て」

 

 ケイフウの言葉を合図に、シエラたちは秘密基地から出て、ケイフウの隣にシエラ、その2人の後ろに少し距離をあけてエイダンという並びで、歩き出した。


「あの、どこに向かっているんですか?」


 シエラは素朴な疑問をケイフウに投げかけた。


「秘密基地の近くにある広場さ。あそこは障害物がないから戦いやすいんだ」


「そうなんですね」


 シエラはそう返事をした後、後ろにいるエイダンの方をちらりと一瞬だけ見た後、ケイフウにこう尋ねた。


「あの、ケイフウさん。もしかして、エイダンさんって怖い人ですか?」


 シエラがそう思った理由として、エイダンの放つ雰囲気、ぶっきらぼうなしゃべり方、表情の変化が乏しいことが挙げられる。


「あー、まあ、そう思うよね。でも、あのそっけない感じは緊張のせいなんだよ。エイダンくんは人見知りをするタイプの人なんだ」


「そうでしたか」


「ケイフウさん。今、オレの話をしていましたか?」


 シエラたちの後ろから、エイダンは声を上げる。


「あ、うん。エイダンくんは素っ気ない感じがあるけど、それは、エイダンくんがアンドロイドだからだよって」


「ちょ、ちょっと! 適当なこと言わないでくださいよ!」


 わかりやすく動揺するエイダン。


「はははっ。冗談、冗談」


「まったく……」


 にこにこと笑うケイフウと、あきれるエイダン。


 そんな2人の様子から、シエラはこのギルドの雰囲気をなんとなく感じ取っていた。




「さて、そうこうしていたら、広場に着いたみたいだ」

 

 ケイフウが言っていた通り、ここには障害物がなく、すっきりとした空間が広がっており、戦うのには都合の良い場所だった。


「それじゃあ、戦いを始めてもらおうか。この戦いの勝利条件は、相手にギブアップを宣言させるか、相手を戦闘続行不可能にした場合だよ。――そういうことで問題ないかな?」


「はい。問題ありません」


「では、お互い位置について」


 シエラとエイダンは歩き出し、距離をあけて向かい合った。


 ケイフウは戦いに巻き込まれないように少しだけ離れた場所に移動した。



「勝負開始!」


 ケイフウが大声で試合開始の合図を発すると同時に、エイダンの周りに魔法陣が浮かび上がった。



「燃やせ! ファイヤーボール!」


 エイダンが呪文を叫ぶと、火の玉がシエラに向かって飛んでいった。


「はっ!」

 シエラは攻撃を回避するのと同時に間合いを詰めるために、すぐさま斜め上に大きく飛んだ。


「さすがに当たらないか」


 とエイダンがぼやいている間に、シエラはエイダンの近くに着地し、そして、勢いよく腕を前方に伸ばし手を開いた。


根系捕縛(こんけいほばく)!」


 シエラがそう叫ぶと、シエラの掌から木の根っこのようなものが無数に現れ、エイダンに向かって伸び出した。


「ふっ!」


 エイダンは斜め上に大きく飛び、シエラの背中側に距離をとって着地し、振り返った。

 


 シエラもすぐさま振り返り、エイダンと目を合わせた。



「面白い魔法を使うんだな。木の魔法か? 初めて見たよ」


 エイダンは微かに笑っていた。


「そうですか。では、奮発して別の技もお見せしましょう!」

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