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くすのき君は妖怪が見えるけどそれはともかく趣味の人である。  作者: くずもち
第二章

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その時何かが起こった

 会場がどよめく。


 無理もない。あの迸る力強さは僕ですら想定外だった。


 しかし実際に中身が入ればこの通り、筋肉に神は宿ったという事だ……まぁ実際に宿ったのは河童の三瓶君だが。


 僕は腕を組み、ムフーと鼻息を荒くした。


「どうだろう? 筋肉と血管の表現にこだわったんだが?」


 こだわりを披露すると神木さんがじとっとした視線を向けて来た。


「それは見たらわかるんだけど……こだわりが戦闘力に直結しちゃってない?」


「……その可能性はなくはないけど……まぁビームとか出ないし?」


「そんなものなにから出ても困るよ?」


 そうだろうか? まぁそうか。


 ひとまず日常生活でビームを出せなくて困った経験はないけど。


 河童の三太夫は、しかし鬼哭き三瓶を見てもまだ闘志が萎えてはいない様子だった。


 片足を高々と上げ、しこを踏んだ姿は、誇り高くさえ感じてしまった。


 対して鬼哭き三瓶も地面を揺らしながら土俵入りして、四股を踏み、腰を落とした。


 一度踏み込むだけで大地が揺れるそのパワーは、河童の常識を逸脱していた。


 はっけよい―――のこった!


 行司役の河童が軍配を上げ、試合開始の合図をすると、まず動いたのは三太夫だ。


「カアアアア!」


 気合と共に、恐ろしく強靭な足腰から生み出される突撃はまるで重戦車のような迫力だ。


 村長さんは不敵に笑って、解説した。


「三太夫の得意技はあのぶちかましですじゃ。アレを耐えられる河童は村にもそうはいない」


「……やっぱり三瓶君勝たせる気ないよね? 相撲が見たいだけだよね?」


「……しょうがない。だって三太夫の相撲は中々見れないんじゃもん」


「チャンプっぽいしね……安売りしないのかな?」


 その割にお試しにホイホイ来てくれるとは、三太夫はいい河童の様だった。


 しかしそれを黙って見つめる三瓶は不沈の戦艦のようにその場から動かずに、張り手を一発その場で繰り出した。


「な、なにぃぃぃぃ!」


「これは!?」


 とたん手のひらが飛ぶ。


 冗談でもなんでもなく、手のひら型の衝撃波が大砲のように打ち出されると、飛び出した三太夫の身体を容赦なく反対にぶっ飛ばした。


「ビームは飛ばなかったけど……ツッパリは飛んだね」


「なんてことだ……僕は何て化け物をこの世に生み出しちまったんだ」


「……」


 そんなに冷めた目で見ないで? 


 だが直撃を受けたはずの三太夫は土俵に残った。


 本当にギリギリだが、確かに踏みとどまった三太夫に会場が沸いた。


「すげぇ! なんて根性だ!」


「うおおおおお! 三太夫!」


「……村長、単純に三太夫ファンだな?」


 勝てないことは明らかだったが、三太夫はそれでも踏みとどまった。


 だがすでに大砲張り手は深刻なダメージを三太夫に与え、膝はガクガクと震えていた。


 鬼哭き三瓶の全身の筋肉は更に隆起して、妖気を迸らせるとその場から動けない三太夫にとどめを刺すべく再び腰を深く落して今度は両手を構えた。


「ま、まさか……さっきのを両手で?」


「そのまさかだ……そしておそらく左右一発ずつじゃない」


「「!!」」


 打ち出す突っ張りを連続で繰り出す荒業。


 命名千手突っ張りは他ならぬ僕の入れ知恵だったが、正直やりすぎだったかもしれない。


 普通張り手は飛ばないのだが、無数に飛ばした飛ぶ突っ張りは、もはや大砲の一斉掃射と変わりはしない。


 三太夫!


 僕もうっかり応援する方を間違えてしまいそうだ。


 手に汗握る展開に、神木さんも自分のバックを握り締める。


 だがその時、いきなりまばゆい光が家の庭を照らし、あっという間に真っ白な光に包まれていた。


「え?」


「え? なに?」


 突然のことに騒然となる相撲会場だったが、ただのドッキリというわけでもなく、変化は確かにあった。


 鬼哭き三瓶の手はピタリと止まり、強大な妖気が風船がしぼむ様に一気に抜けてゆく。


 そして、筋肉隆々だったそのボディが砂となって崩れた。


「…………へぁ?」


 僕はなんかここ最近で一番間抜けな声が出た。


 僕の傑作はなんだかよくわからないうちに砂となり、三瓶本体はコロリンと転がり出て砂の上で首をかしげていた。


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― 新着の感想 ―
犯人は神木さん君だ!(消去法) くすのきの作品を壊した咎で、損害の賠償と慰謝料の支払いを請求する!
神社の模型だから、特定の条件以外のバフを無効にする神域をつくるとかなのか。
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