表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くすのき君は妖怪が見えるけどそれはともかく趣味の人である。  作者: くずもち
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/77

三瓶河童鬼哭きフォーム

 流れるように始まった相撲は、河童達が連れて来た相手と戦うことになるらしい。


「実況は僕、楠 太平と」


「村長の太郎河童がお送りしますじゃ」


「太郎河童さん、今回いったいどんな相手を用意したんですか?」


「そうですなぁ。大会前に三瓶には自信をつけてもらいたいですからなぁ。我が息子三瓶は体格に恵まれず、相撲大会もいつも初戦敗退で相撲に興味を失っております。私はしかしそんな三瓶に相撲の楽しさを思い出してもらいたいのです」


「……なるほど。村長さんの優しさが詰まった事前試合といったところですね」


 個人的な感想を言うなら、そこまで分かっているなら放っておいてあげればいいのにと思うが、河童の中ではそれだけ相撲が重要なのだろう。


 そして思慮を重ねたという対戦相手が土俵に上がって来た。


 しかし土俵に上がって来たカッパを見た僕は、思わずおや?っと方眉を上げてしまった。


 普通の河童の3倍はあろうかと言う体躯。


 色の肌艶も美しいが、それ以上に発達した筋肉は人間の格闘家の中に混じっていても遜色ないほどだ。


 ガッチリ仕上がっている彼を見た村長はふむと鋭く目を細めると、何やら語り出した。


「なるほど……更に仕上がっている。今年のためにかなり鍛え込んで来たのでしょう。三太夫の生まれは竜神川上流。竜神川の上流と言えば……ナガレさんの畑があった。まさかそんなことが……」


「ナガレさん?」


「そう、去年のきゅうり品評会で金賞を受賞したナガレさんですじゃ……つまりあの河童の三太夫はそのキュウリを食って育った。河童の里の最強キュウリが生んだ化け物だとそう言うことですわい」


「……あの、村長さん? 三瓶君に勝たせるつもり本当にあります?」


「……負けから学ぶことも多いいでしょう」


「言ってる事が違うくない!? なけなしの自信なんて木っ端みじんに砕け散るよ!?」


 ついツッコミを入れてしまったが、僕はあくまで冷静だと思う。


 あのマッチョ河童の三太夫は確かに強そうだ。


 しかしそれは一般の尺度の話でしかない。


 むしろあれくらい鍛え上げた対戦相手を用意してくれて本当によかったと僕は安堵していた。


「まったく……だけど、このお披露目で三瓶君を倒すことはそれでも難しいと思いますがね」


「……なんですと?」


「いや……本当に鍛え上げてくれていてよかったくらいだ。……でなければやりすぎてしまうところだった」


「!!」


「ねぇ何で実況席で意味ありげな、解説バトルを?」


「……楽しいかなって。それにハッタリばかりじゃないよ?」


 そして待ちに待った三瓶君の入場である。


 ズン。ズン。


 彼が一歩進むごとに土俵が揺れた。


 河童の三太夫も異変に気がつき、周囲を見回して、そしてそれを見つけて表情を強張らせた。


 現れた身の丈3メートルはある河童は、全身の筋肉と血管が脈打たせながら対戦相手を完全に見下ろして口から蒸気を吐いていた。


「……なにあれ?」


「三瓶君だよ。ただし僕の新作、鬼哭き河童フィギュアに入った三瓶君だがね」


 その特徴は、完全に筋肉である。


 逆三角形に発達しすぎた異常な筋肉。それはまさに格闘ゲームにでも出てきそうなファンタジー筋肉だった。


 腕は丸太のように太く、手のひらなんて大抵のウエストを片手で掴めることだろう。


 今の三瓶君はまさにオーガの皮を被った河童。


 無敵の具現だった。


「「誰あれェ?」」


「だから河童の三瓶君だってば」


 声を揃える神木さんはともかく、村長は依頼主でしょ? もっと喜びなさいよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
それはカッパじゃなくてガッパ!?
三太夫、太夫ということはこの姿で女性?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ