せっかく作ったんだから誰かに見せたい
「うーん……よし……」
神木杏樹は最後の一筆を入れ終え、満足いく出来に仕上がった神社の模型を見て、深く頷いた。
「出来た……ちゃんと神社だ……」
ひとまず手に持って、色んな角度から眺めてみる。
色まで塗った初模型は、中々の出来でどの角度から見ても間違いなくそれは神社だった。
「最初はそんなにでもなかったけど……いざ完成させてみるとこれは……中々楽しいかもしれない」
自分で作ったとは思えないその出来は、小学校の時のわずかに残った記憶の工作とは明らかに質が違った。
まぁそれはメーカーさんがすごいんだけれど、組み上げたのは間違いなく自分。
そこに何の間違いもない。
「……込めた思いが、力にもなるんだよね?」
コトリと机にプラモを置き、ジッと見つめる。
だがそれは残念ながらやっぱりただのプラモデルのようだった。
「まっ……そんなにうまくはいかないか」
霊的な効果はなさそうだけど、でもせっかくなので誰かに見せてみたい。
そこで付き合ってくれそうな心当たりに杏樹が思い浮かべた顔は一人だった。
そして次の日、出来上がったプラモデルを箱に入れ杏樹は楠君の家を訪ねた。
休みの日の朝から出かけるのは張り切りすぎな気もしたが、こういうのは早めに見せないと熱が冷めたら台無しである。
相変わらず山の中の道を抜けて、立派な門をくぐり、最近はハニワが沢山並ぶ道を進むと、楠君の家は見えてくる。
楠君は今日は模型作りではなく、庭で何かをしているようだった。
「こんにちはー!」
挨拶して手を振る。
しかし振り返った楠君の身体がこちらを向くと、彼に隠れていたモノが顔を覗かせ、杏樹はピシリと表情を強張らせた。
でっかいタライに浸かっていたのは、緑の身体と頭には大きな皿をのっけた、とても有名な妖怪だった。
「河童だ!」
「河童だよ?」
きゅうりを齧る河童は、こちらを見ながら不思議そうに小首を傾げた。




