表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くすのき君は妖怪が見えるけどそれはともかく趣味の人である。  作者: くずもち
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/77

知っている顔がいた

 おすすめの町のおもちゃ屋は学校からそう遠くない場所にあった。


 杏樹は、楠君に描いてもらった地図を片手に噂のおもちゃ屋にやってくると、まず見た目に驚いた。


「……なんかすごく古風」


 『おもちゃの洋館』と書かれた看板には偽りはない。


 どこか魔女の館を思わせる木造の建物は、よく見ると新築らしく建物の様式が新しいのが分かった。


「……これは、なんというか、雰囲気を出そうとしている?」


 情報を仕入れて来たからか、そんな風に思えてしまう。


 ガラス張りのディスプレイの中にはきちんと見知ったおもちゃも沢山並べてあるわけだし、繁盛しているおもちゃ屋さんであることは間違いなさそうだった。


 杏樹は意を決して建物に足を踏み入れる。


 するとそこには思ったよりも沢山の子供達がいて、店内は異様な熱気に包まれていた。


「うおおおおお! 猫丸! 氷燐斬だ!」


 透き通る青い武者鎧を身に着けた猫の妖怪が氷の刃を片手に飛び掛かる。


 相手は猫よりも一回り大きな黒い龍で、相手のプレイヤーは小学生というには明らかに身長が大きかった。


「フン……。受けろ、龍ノ助。黒堰断葬」


 なんだかよくわからないけど、かっこよさそうなワードが飛び交っている。


 杏樹はなんとなく子供達の壁に近づき、対戦の様子を覗き見た。


 そこは専用のバトルフィールドのようなもので、みんなで観戦できるように広めにスペースがとってあるらしい。


「……ここが出所で間違いないか……あ、でも、あんなに氷とかビームとか出てるのに室内で大丈夫なんだな」


 なんとも不思議な現象である。


 とてもよく出来た立体映像にも見えるそれは、やはり妖怪の気配がした。


「こう……ホビーだとすれば、明らかにオーバーテクノロジーすぎる気がするけれど誰も疑問に思っていないのが不思議だ」


 だが、考えてみれば最新技術でないなら目の前のこれはなんなんだと言う話になる。


 出来ているものは出来ているのだし、細かい理屈がよくわからないものなんて世の中にはたくさんあるのはそれはそうだ。


 なんとも複雑な表情で杏樹が悩んでいると、大爆発が起こって猫の妖怪が地面に転がる。


 杏樹は勝負がついたかと対戦している人物に目を向けて―――目を見開いた。


「ふん……他愛ない」


「やっぱ、蘆屋にーちゃんつえー!」


「フハハハハ。そうだろうそうだろう。うん、お前は見所がある。健闘の褒美にこの新弾の未開封パックをくれてやろう」


「わーい」


 小学生を完膚なきまでに叩きのめし、気前よくおもちゃを買ってあげているその高校生に杏樹はとても、見覚えがあった。


「あれは……確か、蘆屋 満月君?」


「おお! そこにいるのは楠のところの部員ではないか。どうした?」


 困惑している間にすぐに発見されてしまった。


 杏樹は表情こそひきつってしまったが、ひとまず手を振って挨拶することだけには成功した。


「ど、どうも……」


「ふむ……よし! 今日はここまでとしよう。少し用事が出来た」


「ええー! もっと遊ぼうよ蘆屋にーちゃん!」


「うむ、名残惜しいが、今度は皆で遊ぶのだ。ほぅら! まだ持っていない者には、このスターターパックをくれてやるぞ!」


「「「わーい」」」


 なんなんだろこの人。いろんな意味ですごいな。


 惜しみなく子供を援助している蘆屋 満月は、ずいぶんとこのホビーを楽しんでいるようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ