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くすのき君は妖怪が見えるけどそれはともかく趣味の人である。  作者: くずもち
第二章

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開門 アヤカシバトル

「……」


 神木杏樹はコンビニに買い物に行く途中で、なんとなく公園のベンチに座って休憩していると、子供達が遊んでいるが目に入った。


 最近では珍しい光景だなと和んでいた杏樹はなんとなくその子供の声に耳を傾けていた。


「……よく来たな。ビビってこないかと思ったぜ」


「笑止。貴様程度を恐れるようなことあるわけがあるまい……今日こそ捻り潰してくれるわ!」


 ……最近の小学生の会話はずいぶんエキサイティングしてるなぁ。


 彼らの手には、カラフルな人形のようなものが握られていて、右手首には丸い画面のタブレットのようなものが装着されていた。


 妙に凝った作りのおもちゃに、少年達は手に持った人形をぶっ刺す。


「言ったな! 行くぞ犬衛門! お前の力を見せてやれ!」


「凡愚が……格の違いを見せてやる! 猿助、出番だ!」


 火花でも散らしそうなバチバチの荒っぽいセリフと共に、謎のおもちゃに謎のオーラが立ち上る。


 杏樹が目を疑っている間に現れたのは、おそらくは少年達にもバッチリ見えている、ホビーアニメ風の犬と猿だった。


『任せろケンイチ!』


『下らん……3分で終わらせてやる』


 ボンと燃え上がる犬と、雷を纏った猿が形になって空中で睨み合う。


「「開門! アヤカシバトル!」」


 開始の合図と共に激しいバトルは始まった。


 それを小学生が取り囲んで大盛り上がりである。


「うおおお! 妖術! 火炎餓狼陣!」


「受けろ! 妖術! 雷帝双爪!」


 ズバン! ズバババン!


 炎が舞い、雷が轟く。


 まったく偽物には思えない迫力なのに、子供達には一切怪我がない仕様であるらしい。


「……!」


 杏樹はいつしか物陰に身を隠して、食い入るようにそれを見ていた。


 立体映像のように空中に浮かぶおもちゃなんて聞いたこともなければ見たこともない。


 更には明らかにコミュニケーションをとっているアニメキャラもどきの最新技術など全く知らなかった。


 何よりこの気配……杏樹には妙に身に覚えがあった。


「あれは……」


 言いかけた杏樹のセリフに応えたのは、鬼ストラップのヒガンだった。


「アレは妖怪だな。間違いない。弱い動物霊だと思うが……面白いことになっていたな」


「……そうだよね。あれ妖怪だよ。でも、めちゃくちゃホビーとして定着しすぎじゃない?」


 鬼神のヒガンが言うのなら、もう間違いはない。


 一体何があったのか? ちょっと意味が分からなかった。


 ここで取り乱し、子ども達に突撃したら通報されかねない熱狂っぷりだったので引き下がったがもう少し状況を整理しないといけない。


 杏樹は慎重に情報収集することにした。




 子ども達はごく普通に遊んでいるようにも見えた。


 それはあのおもちゃが一般的に普及しているという、恐ろしい可能性を示唆していた。


 ならばなにか聞くべきは一般人だろう。


 ひとまずは身の回りのクラスメイトの真理に尋ねてみると、思ったよりずっと簡単にその名前は出て来た。


「え? ああ、知ってる! 去年くらいから、親戚の子がやってたと思う。えっと確か……『アヤバト』だよね?」


「……そ、そうなの?」


 一般流通は確定か。しかもかなり広まっている。


 杏樹は信じられないと頭を抱えたくなったが、真理のアヤバトに対する好感度はそんなに悪くもないようだった。


「そういえば、アニメとか見ないよね? なんか漫画か何かなのかな? 杏樹は元居たところではやってなかったの?」


「……し、知らないかなぁ」


「そうなんだ。じゃあマイナーなのかな? ここド田舎だし、そういうこともあるよねー」


「ど、どうだろうね。私も男の子の遊びに詳しいわけじゃないからなー」


 ごまかすように杏樹は言う。


 まぁそういうのもあるんじゃない? と笑う友人に杏樹は思う。


 確かにそういうこともあるかもしれない。しかし、それは妖怪が関わっていなければという話だった。




「……うーん。これは確定かなぁ」


 杏樹の疑惑は深まった。


 しかしこういう時、答えはとても近くにある。例えばそれは模型部部室なんかに特に。

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