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くすのき君は妖怪が見えるけどそれはともかく趣味の人である。  作者: くずもち
第二章

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どんなものでも使い方次第

 僕、楠 太平はパッチンパッチンと、ランナーを2回に分けてニッパーで切る作業に勤しんでいた。


 こうすることでランナーの切り取った部分が白く変色しないようになるのだとか。


 ランナーに強く負担がかかるとプラスチックは白く濁る。


 少しでもその負担を軽くするために考えられた先人の知恵というやつだろう。


 切り取ったゲート後を、紙やすりで綺麗に削ればツルリという寸法である。


 ちなみにこれだけやっても跡自体は残ることが多いのだが、下地を塗れば傷は消え、塗装をすれば作品は僕色に染まるわけだ。


 僕は塗装派なのでゲート跡自体はそこまで気にならないが、下処理は丁寧にやった方が完成の見栄えが良くなるのは料理もプラモデルも同じである。


 ご清聴ありがとう。まぁ趣味の話なので聞き流してほしい。


 そして作業は終了した。


「ああ……癒される。やっぱりロボット物は最高だな」


 僕はひとまず形になったそれを恍惚とした表情で眺めた。


 説明書通りに作れば、クオリティの高い物が出来上がるこの精度は普通にアガる。


 組むだけであれば、これほどお手軽に工作欲を得られるものは少ないだろう。


 いそいそと素組の棚にそれを並べて、しばしささやかな達成感に浸っていると、妙に視線を感じて僕はそれを見た。


「……どうした白?」


「いや、完成したなら、使わせて欲しいわけだが?」


 ニンマリと笑う白狐に、僕はやんわりと首を横に振った。


「どの口で言ってるのかな? ダメでしょ普通に。お前すぐ壊すし」


「壊さないよ? 前は相手が相手だったんだから仕方ないでしょうよ? というか未完成品を渡した君の落ち度では?」


「勝手に持ち出しておいてよく言ったよね……。まぁ、でもあんな大物と事を構える事なんてそうないのはわかる。……でもそれを踏まえてもやっぱりダメでしょ」


「なんでー?」


 不満そうにコロコロ転がり、遺憾の意を体いっぱい表現する白だがそりゃあ今作っているものがものだからに決まっていた。


「これ、ロボットだぞ? うっかりロボが街中うろうろしてたら普通にまずいだろ?」


「まずくないじゃん。むしろ町おこしになるんじゃないか?」


「そういうところが……気軽に貸せない原因なんだよなぁ」


「ええぇ。ロボ好きの風上にも置けないことを言うなぁ」


「……痛いところを突くなぁ。確かにロマンはあるけれども」


 個人的にはさっさと町中にロボットがうろうろして欲しい。


 しかし出所不明じゃ不気味過ぎる。


 とても心揺さぶられるが、僕にもわずかばかり自制する心はあったみたいである。


「それにだ。そんなのは今さらじゃないか?」


 ただ白の追い打ちに僕は口ごもった。


「……そんなことはないよ。自制は大事だし、忘れたことなんてないない」


「……」


 「それはどうだか?」みたいな態度で鼻で笑う白が気になると言えば気になるが、正直に言えば少しだけ僕だって懸念はあった。


 まぁ作った物を販売している以上、僕の場合はどこかの誰かが僕の作品を所持しているのは当然だ。


 しかし売った刃物の心配をしていたら金物屋が成立しないように、僕だってそれは同じである。


 心配しない訳じゃないけれど、手放した以上はお客を信じるのみ。


 だからまぁ、白には気軽に渡せないという結論は今のところ覆らなかった。

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