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くすのき君は妖怪が見えるけどそれはともかく趣味の人である。  作者: くずもち
第二章

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踊るハニワ

「うおおおお!」


「なんじゃこりゃ!」


 すっかりマスコットから、大地の怒りを体現したような巨大怪獣へと変貌を遂げたハニワは鬼を容赦なく砲撃した。


 そして逃げ遅れた鬼の上にはとんでもない大きさの豆が鬼神を押し潰していた。


 土埃が収まり、咳込みながら僕と安綱先輩はひょっこり顔を出すと、結果に戦慄した。


「こんなことになんのか……やべぇなお前のハニワ」


 震える安綱先輩に、僕はテヘリと頭をかいた。


「まぁ鬼瓦のついでに作ったんですけど……うまくいったようでよかったですわ」


「ついでの割にギミックこりすぎだけどな。何で変形すんだよ? そんで何で豆だよ?」


「いやそりゃまぁ……鬼相手なんだから豆ぶつけるでしょう? そんで豆といえば鉄砲でしょう?」


「……そりゃあアレをぶつけりゃ効くだろうよ」


 ハニワが砲撃した弾は豆だけど、ハニワが大地の加護を授けた豆はただの豆なんてとても言えない質量兵器である。


 デカい豆に潰されて動けない鬼というシュールな絵面に戸惑いつつも、僕は恐る恐る歩み寄る。


 鬼は豆の直撃で相当弱っているようで、うめき声しか聞こえなかった。


「よいしょ」


 都合がいいので僕は予備のストラップ鬼瓦を鬼の額に押し付ける。


 すると順調に鬼の体がストラップの中に吸い込まれて、ミニ鬼瓦は動かなくなった。


 今度は罅はなし。成功である。


 これで一件落着。


 ようやくホッとしていると涙目で走って来た神木さんが刀を持ったまま詰め寄って来た。


「あんなことになるなら前もって教えておいてほしいんだけどな!」


「ゴメンゴメン。だ、だから刀を引っ込めてね」


 正直予想以上にハニワがデカくなった僕としてはえへへと作り笑いを浮かべるしかなかった。


「いやぁ。まさか僕もああなるとは思わなかったわけで」


 本当ならいったん離脱してハニワ達と交渉後、遠隔射撃の予定だったのだが、緊急事態ゆえやむを得なかった。


 さっきまで恐ろしい気配を立ち昇らせていた巨大ハニワは、心なしかスッキリしたような顔になっている気がする。


 よほど鬱憤が溜まっていたのか、それとも巨大化が楽しかったのか上機嫌で踊っているように見えた。


 地面が揺れるからやめてほしいが、残念ながら止める手段はない。


 ではこちらはこちらで僕らの仕事に移るとしよう。


 僕と安綱先輩は手早く鬼を回収して手順を確認した。


「よしじゃあ撤収ですかね? 一度弾かれたし、もう少しだけ浄化しときましょうか? 清めの水もあるから」


「それ便利だよな。俺にも後で出所教えてくださいお願いします」


「めっちゃ腰低くしてもダメですよ先輩。秘密です。……先輩、そんなことよりもうちょっときつく封印しときません?」


「……そうだな。俺のヌリカベでも閉じ込めとこう。あとは厳重に箱にでも詰めとけ。あ、封印の札のストックあるわ」


「箱、ありましたっけ? ああ、ハニワの焼き物入れておいた奴があるか。梱包材とかいると思います?」


「ワレモノだからなぁ。やっとけやっとけ」


 鬼瓦ストラップは妖刀で封印を強化され、キッチリ梱包されて、手早くリュックに押し込まれた。


 中々綺麗に収まって、これなら帰りの電車でもおかしなことにはならないだろうと確信が持てるくらいには完ぺきな封印である。


 これでこの地の汚れも自然に消滅するはずだった。


「よし! 撤収!」


「ケガしてたら言えよ! 薬持ってきてっから!」


「ああ、僕、白のやつ回収して来ますね。下の方に沢があったんで、そこで弁当でも食べて帰りましょう! お稲荷さんあります!」


「いいね! だがハニワが躍ってるからダメだ! 駅前の公園にしろ!」


 すっかり気が抜けて、レジャーモードになった僕と安綱先輩。


「めちゃめちゃ手際いいなぁ……」


 そんな僕らと巨大なハニワとを見比べた神木さんは、なぜだかとてもとても遠い目をしていた。

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