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くすのき君は妖怪が見えるけどそれはともかく趣味の人である。  作者: くずもち
第二章

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森の中に佇む影

 人里で見ることは滅多にないが、このハニワは自然豊かな土地では割と見ることがある不思議な存在である。


「うん。ハニワ。結構山の中とかにはいるんだけど」


「ええ! そうなの!?」


 神木さんはものすごく驚いているが僕としては意外だった。


 古い森なんかでは見かける確率が高いのだけど、神木さんは出会ったことがないらしい。


「なんていうか……大地の精? みたいなもの? いろんなものを住処にしてるからバリエーション豊かだよ」


 しかしそのハニワがここまで弱っているとなると、事態はかなり深刻なようだ。


 すでにタタリの負の力が土地にかなり悪い影響を与えているのは、間違いなさそうだった。


「な、なんだか弱ってるみたいだけど……何かした方がいいのかな?」


「もちろん」


 オロオロする神木さんをよそに、僕はハニワを覗き込む。


 そして心なしかげっそりしているそいつに、ペットボトルから水を取りだして振りかけた。


 すると水を被ったハニワはカッと節穴のような目を見開いて、ピョコリと復活した。


「おお、効き目抜群だ!」


「ええ! すごい!」


「困った時の回復アイテムはやっぱりあると便利だね」


 海青様特製龍神印の清め水である。


 ではようやく話しかけられそうなので、僕は改めてハニワに尋ねた。


「大丈夫かな? 僕らはここにいるタタリに用があって来たんだけど、何か知ってる?」


 するとハニワはピョコンと元気に飛び跳ねて、山の奥を指し示した。


 そしてピョコピョコ自分から森に入って行って、こちらを振り返る。


「道案内してくれるみたいだ。行ってみようか」


「いやいや、最初から期待してただろ?」


「協力者はいて困ることないですよ?」


「そいつは違いない」


 安綱先輩が茶々を入れるが、そりゃあ期待していたとも。


 こんなところで現地の協力者なしはリスクが高すぎだ。


 僕は肩をすくめてハニワにさっさとついて行った。




 森を進むとドンドン闇が深くなってくる。


 それは視覚的なことだけではなくて、重苦しい空気が奥に行けば行くほどに積もっているようだった。


「空気が淀んでる……」


 神木さんはそのあたりの感覚が敏感で、誰より早く森の奥を見ながら顔を顰めていた。


「……それになんだか気持ち悪い」


「これがタタリの気配だよ。これを感じたら基本的に近づいちゃダメだ」


 そういう僕もさっきから嫌な予感がして仕方がなかった。


 そのまま歩き続けること1時間ほど、僕らには会話もなくただ歩くことだけに集中する時間が続いた。


 だが次第に歩調が狭まり、ついに案内のハニワが立ち止まる。


 そしてハニワはピョンピョンと神木さんのところにやってくると、その手の中におさまった。


「中々目ざといハニワだなぁ」


「……確かに。でもそんなこと言ってる場合じゃないぞ?」


 安綱先輩が額に汗をかきながら体を低く伏せると、僕と神木さんもそれに倣って息を潜めた。


 もちろんハニワがそうしたのは目的地に着いたからだ。


「……いるぞ」


「……いますね」


「あ、あれが?」


 僕らの視線の先にもう、そいつは立っていた。

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