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くすのき君は妖怪が見えるけどそれはともかく趣味の人である。  作者: くずもち
第二章

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知り合いの先輩

「この学校は昔、工業科があったんだけど生徒数の減少とかで普通科だけになったんだ」


 この学校に来て日の浅い神木さんに説明しながら僕らは部活棟に向かう。


「……」


「その設備が丸々残っていて、部活動で活用してる。だから技術系の部活の種類が充実してるわけなんだよ。パンフとかよくよく読めば書いてあるかもだけど」


 気を紛らわそうとプチうんちくを披露する僕だったが、神木さんは自分以外の見える人が気になってしょうがないらしく、一向に落ち着く気配がなかった。


「それよりその先輩って……本当に見えてるの?」


 ついに我慢出来ずに尋ねてきた神木さんに、僕は出来る限り普通に答えた。


「え? ああうん。見えてるよ。妖怪に繋がりが出来ると会うこと自体はそんな珍しいことではないから構えなくてもいいよ」


「そういうものかな?」


「そういうものだよ」


 事実こうして顔合わせの機会は、神木さんが引っ越してきてまだ一か月も経たないうちにやって来たわけだし。


 そうこう言っている間に、元工業科の部室棟に僕らはたどり着いた。


 目的地の部屋には刀剣部という自己主張の強い金属製のプレートが張ってあった。


「刀剣部……そんなのあり?」


「法的には許可があるから問題ない……らしい」


 ここではノックは不要である。


 なぜならノックなんてしても全然聞こえないからだ。


「失礼しまー―――」


 僕が扉を開けた瞬間、ガンガンと金属音が腹に響いた。


 そして作業に没頭しているのはたった一人のこの部屋の主だった。


 赤く輝く金属を、ガッツンガッツンでっかい機械で叩いている。


 こういう専門機材が普通にあるこの部屋を、半ば一人で占領しているのがこの先輩なのだ。


「先輩! 安綱先輩!」


 僕は大声で声をかけてみる。


 何回か同じように呼びかけて、ようやく僕らに気が付いた安綱先輩はこちらを向いた。


「……お! 楠か! なんだ珍しいな!」


「どうもです! すみません急に」


「いいやどんどんこい! お前には世話になってるからな!」


 額に巻いていたタオルを外し、ニカッと笑う安綱先輩はさっそくいつもと違う発見をしたようだった。


「お? なんだ? 今日は女連れか?……お前楠だよな?」


「楠ですよ?」


 訝しむ安綱先輩に僕は苦笑いを浮かべて、神木さんを紹介した。


「なんとうちの新しい部員です。よろしくお願いします」


「よ……よろしくお願いします」


 だが簡潔な紹介なのに、安綱先輩はここに一番驚いたようだった。


「……んん? 部員? 模型部に部員が来たのか? しかも女子? あの幽霊教室に?……奇跡か?」


「地味にしつれー。日々過ごしやすい部室を目指してるんですけどね」


「いくら居心地をよくしたところでなぁ……。まぁいいか。で? なんだ? やばい妖怪でもいたか?」


 どうなんだと目を輝かせる安綱先輩の期待の理由を僕は知っている。


 違うと言いたいところだが、今回はまさに安綱先輩の期待通りなのを僕は知っていてここに来た。


「……そうなんですよねー」


「マジか! どんなだ!」


「何でも……タタリ化した鬼神だとか」


「鬼のタタリ!? ……鬼かよ! 最高だな!」


 おおお! と興奮して立ち上がる安綱先輩は強い妖怪大好きである。


 その理由は彼の特技に由来する。


 僕は生ぬるい温度の笑顔を浮かべて、頷いた。


「そう言うと思いました……じゃあ少し話しましょうか。落ち着いて部員の紹介もしたいので」


「おうおう、さっそく部長気取りだな? よし! ちょっと待ってろ! 片付けてくっから」


 安綱先輩はすっ飛んで行くような勢いで、話の準備を整え始めた。


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