ゆうせんなので
「ほっほう……なるほどな。それは中々面白い」
「しかし……そんなことが本当に出来るのか?」
「さてな。だが可能性はある。こいつの力はそういうものだ」
しばしジッと人形を眺めていた龍と虎はニヤリと笑みを浮かべる。
そこには先ほどまでのお互いにちょっと角のある感じは完全に無くなっていて、すぐに人形に飛び込んだ。
あっという間にドロンと煙が立ち込めると、そこには長身の女性と大柄の男性の姿があった。
「ほっほう……これが人型か。見事なものだ」
女性の方、白蓮様は黒と白の入り混じったワイルドな髪型をした美女だ。
ドイツ風の軍服姿に毛皮のコートがクールでビューティな仕上がりである。
「なるほど……先日の飛行機といい、実に面白い」
そして男性の方海青様は筋骨隆々で、短く刈り上げられた髪が男らしい。
パイロット風の皮ジャケット姿は、ハリウッド映画にでも出てきそうな雰囲気があった。
「……気に入っていただけました?」
出来る限り好みに合わせたつもりだが、こればかりは完成品を見せてみなければわからない。
固唾をのんで見守っていたが、二人には満足そうな笑みが浮かんでいた。
「うむ。なかなか良い。……せっかくの人型なのだからこのまま人間の町で少し遊ぶのもありだな?」
「そうだな。せっかくだからな」
だがついでにおかしなことを言い出して、僕は口元を引き結ぶ。
今まで黙っていた神木さんも聞き捨てならなかったのかギョッとしていた。
「え? ええ? そんなことができるの? 妖怪が? 普通の人には見えないでしょう?」
それは確かにもっともな指摘だが、不可能ではない。
「いや? 僕の作ったものを使えば普通に見えるよ?」
「えぇ……」
その気になれば一般人にだって普通に見える。
戦車の雄姿も普通に見えていたはずである。
まして人型の今の二人なら、怪談で語られるようなぼんやりしたものではなく、店で買い食いすることすら可能だろう。
それを聞いた神木さんは青い顔でフルフル震えていて、驚愕した面持ちで叫んだ。
「道理で七不思議がやけに具体的だと思ったよ!」
「全部僕のせいじゃないからね? そこほら個人のモラルの範囲で……」
渾身のツッコミは甘んじて受け入れて、僕は龍と虎に向き直った。
「盛り上がっているところもうしわけありませんが、でもそれは今回無理ですよ?」
焦りはしたが、僕は龍虎の言葉をある程度予想していた。
こっちだって準備がある。
僕のセリフを白蓮様は訝しむ。
「ん? なぜ無理なんだ?」
「なぜと言われるとこれから宴会ですし。まぁ格好がすこぶる特殊なので目立つこと間違いなしというのもありますが……」
「一向にかまわんぞ? 飛行機やら、戦車やらに比べればどうということはあるまい?」
「いや……まぁ大前提として物理的に無理かなと、その依り代有線なので」
「「「ゆうせん?」」」
龍と虎はともかく、神木さんまで声をそろえて首をかしげる。
僕が指差した龍と虎の背中には黒いコードが家の方に繋がっていた。
「……なんだこれは?」
「背中にスイッチがあるぞ?」
「ええ、背中のスイッチを入れると、目が光ります」
「「その改造いるか!?」」
「いやー楽しいかなって思って」
同時に龍と虎に吠えられたけど、簡易版とはいえ多少手が込んでないと僕の能力的な性能の方がね?
ものすごく気まずい空気を感じたが、ファインプレーなのではなかろうか?
白蓮様と海青様は素直にあきらめて、ドカリと用意していた赤い敷物に腰を下ろした。
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