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第17話 ギルガメシュの告白

「告白されるかもしれない」

「へぇ……」


(誰よ! その身の程知らずの雌は!)


 キーと叫び出したい気持ちを厳重に心の金庫にしまい闇の海に沈めながら、


「で、誰なの? お兄ちゃんなんかに告白しようなんていう、変わり者は?」


 笑って尋ねる。


「宰相様に書類を届けに来る犬魔族の秘書さん」

「へぇ」


(犬魔族ですって! 八方美人でどの種族にも尻尾を振る異種族間の恋愛率NO.1のあの犬魔族ですって!!!)


「犬魔族は物好きが多いって聞くからね」


 プルプルと震えるこぶしを握り締めながらエリザベスは近くに会った雑誌を見るでもなく開く。


「でも飽きられるのも早いらしいし、真面目に受けたらお兄ちゃん火傷しちゃうよ」

「そうなんだ」


 チラリと兄の顔を覗き見たエリザベスは危うく開いていた雑誌を引き裂きそうになった。


(しまった! 今の発言は間違った!)


 変わり者の兄だ。本気の恋より、一夜限りの遊び。芸術家の十八番みたいな響きにどうやら逆に心惹かれてしまったらしい。


「──お兄ちゃん、でもよく考えて、本当にその子はお兄ちゃんが好きなの? お兄ちゃんの勘違いだったら、はずかしいよ」


 引きつった笑顔でそういうのが精いっぱいだった。


「うーん」とギルガメシュが腕を組んで考える。


「確かに……、でもすごく熱い視線を感じるんだよな。前までは俺が気が付くとすぐ目をそらされたから気のせいかと思っていたんだけど、最近は目が合っても目をそらさないでじっと見つめてきたりするし。こないだなんて、急にカッと目を見開いたと思ったら顔を真っ赤にしてニヤリと笑ったり」


 兄が見られていることは確かなようだ、しかしそれって恋する乙女の反応なのだろうか?

 さんざん近くで恋に恋する乙女ランランを見てきたエリザベスは、兄の発言に眉をひそめた。それと同時に少し冷静さを取り戻す。


『でも何かしらお兄ちゃんに興味を持っているのは確かだわ』


 ギリリと爪を噛む。


「お兄ちゃんの勘違いだと恥ずかしいし、ちょうどインターンシップで私も秘書室にいくから、それとなく探ってあげようか」


 面倒くさいけど仕方がないというようにエリザベスが提案する。


「本当か? でもそんなこと……」

「いいのいいの、ほらランランも恋バナ好きだし。仕事ばかりじゃ疲れちゃうじゃない、それに将来義姉になるかもしれないなら、なおさら今から仲良くしとかないと」


 珍しく優しい言葉をかける妹にギルガメシュが口元を手で覆う。


「エリザベス、お前って妹は、なんてやさしいんだ」

「うん、だからお兄ちゃんはくれぐれも早まって行動を起こしたりなんてしないでね」

「わかった」


 素直に感動する兄の姿を眼福とばかりに眺めつつ、まだ見ぬ犬魔族をどう問い詰めようかエリザベスは考えるのだった。

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