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第三十五話 憎しみの炎

このお話は初投稿版の60部分にあたります

 ――ここはどこだろう。

 おれは、なにをしていたんだっけ?

 

 白い世界の中で晃はひとり立っていた。

 頭の中がふわふわする。

 もやがかかっているように、はっきりとしない。


 

 チリ、と、何か熱くて激しいモノを感じた。

 あれ? と思った途端、ゴウッと炎が巻き上がる。

 炎に包まれても晃は動じない。

 自分がいつも扱うのと同じ、霊力の炎だと、自分に害を成すものではないとわかったからだ。


 赤い炎の中に何かが見えた。

 



 続く災害に疲弊し倒れる人々。

 疫病にかかり醜く死んでいる人々。

 一人でも救いたいと行脚していたお師さんを「落伍者」と笑い馬鹿にする都の僧侶達。

 その日口にするものすらなく死んでいく者がいることなど知らず、贅沢に飲み食いし、肥え、労働を知らぬ手で下の者を虐げる貴族達。



 誰が説明してくれるわけでもないのに、歴史に詳しいわけでもないのに、なぜか「そう」だと理解した。


 強い『想い』が流れ込んでくる。



 こんな世の中間違っている


 貴族と一部の僧侶だけが利をむさぼり、善人ばかりが理不尽な目にあう


 こんな世の中間違っている




 激しい炎の中、さらに人影が浮かぶ。


 晃と同じ位の年齢の少年二人が、何人もの大人の僧侶に取り囲まれ暴力を受けている。


 優しい言葉をかけていた枯木のような腕の老人はもう動かない。


 肌艶のよい豪華な衣の僧侶達があざ笑う。

 あいつは愚かだと。

 くだらないと嘲笑する。

 



 誰がこんな世にした

 何故こんな理不尽がまかりとおっている


 正すにはどうすればいい

 善人が幸せに生きられるにはどうすればいい



 その時、ゴウゴウと立ち昇り揺らめく炎の中に昏い人影が見えた。



「――歴史を紐解けば、現代(いま)の王とは簒奪者の子孫にすぎぬ。

 争って勝ち残った者が王となるならば、私が王となってもおかしくはあるまい」



 その声に、昏い笑みに惹きつけられる。


 チカラがあれば

 王になれば

 世を変えられる



 炎の中に倒れているのは、先程の二人の少年。

 血の海の中で虚ろな目をしている。

 ジメジメした暗い洞穴の中で息をひきとったお師さん。

 積み上げられていく亡骸。

 そんな世界を知らず、贅沢に生を楽しむ貴族や僧侶達。



 善人が幸せに生きられる世を

 善人が認められる世を

 そのために、チカラがほしい

 そのために、王になりたい

 チカラを得て、王になる

 今の王を排除して、我こそが王に



 チカラを得る方法は知っている

 強いチカラを持つモノを喰らえばいい

 喰らえば喰らうほどこの身にチカラが貯まっていく


 もっと、もっと強く

 我が王になるために



 次から次へと人を、獣を、妖を、チカラあるモノを襲い喰らう。

 己も『ヒトならざるモノ』へとなっていく。

 それでもかまわない。

 お師さんを、善人を虐げる世を正すため。

 我が王になるため。


 もっと、もっと。


 そのうち、強い人間か出向いてくるようになった。

 何やら言いながら向ってくるので喰らう。

 また強くなる。


「――おのれ、『(まが)』め…ッ!」

 ひとりがそんなことを言った。


(まが)』。

 ああ、そうか

 我はにごって『(まが)』になったのか


 それでもかまわない

 我がにごることで善人がしあわせになるのならば

 王になり、この理不尽な世を正せるならば

 


 やがて機は満ちた。

 数多の『ヒトならざるモノ』を従え、王を倒すべく都へ行く。

 あれからどのくらい時間(とき)が経ったのか、都は場所を変え新しくなっていた。

 それでも王を目指し進んでいたが、数人の人間に止められた。



 何故我を止める?!

 世を正さねばならぬのが何故わからぬ?!



 戦いになり、殺された。

 首を落とされ、落ちていく視界に思いだした。



 昔、どこからか、落ちた。



 気づくと知らない場所で。

 フラフラと何日も歩き、空腹の限界に達したときに食べ物があった。

 ガツガツと喰らっていたら、男に止められた。


 男。お師さん。


 名をくれ、言葉を教え、文字を、知恵を教えてくれた。

 共に旅をした。

 災害に苦しむ人々の、病に苦しむ人々のところに出向き、助け、祈った。

 雨の日も、晴れの日も、雪の日も共にいた。

 しあわせというものを教えてくれた。

 ただの兵器だった我を、ヒトにしてくれた。


 戦争だと教えられた。

 どことかは知らない。兵器はそんなこと知らなくていい。

 何かの薬を飲まされ、しばらくすると魔力が暴走する。

 その状態で相手の陣に突撃させられるのが兵器である自分達だ。

 普段食事を与えられていない自分達は、目の前の食料を殺し喰らう。

 たくさん殺す。腹が満ちるまで。

 ただただ殺す。相手がいなくなるまで。

 魔力が暴走しすぎて爆発して死ぬものもいた。

 それはそれで大量に相手の兵を殺せるからと何度も薬を飲まされた。


 そんな我を大切だと言ってくれるお師さん。

 そのお師さんを、あいつらは馬鹿にする。

 そんな世の中は間違っている。


 何故善人が虐げられなければならない?

 何故正そうとした我が殺される?


 憎い。憎い。

 この世の中が憎い。

 うらめしい。うらめしい。

 善人を虐げる僧侶が。贅沢をむさぼる貴族が。

 憎い。うらめしい。憎い。憎い。




 ゴウッと炎が巻き上がる。

 黒い炎に包まれる。

 黒い炎は自分を中心に渦を巻き、ゴウゴウと鳴りながら集束していく。


 この炎を使えば都を滅ぼせる

 王も殺せる

 都を滅ぼし、王を殺せば、我が王になれる


 いざ炎を展開しようとしたその時。


 リン


 鈴のような音がして、身体中から魔力が失われた。






晃達の世界で『霊力』と呼んでいる力を、『彼』のいた世界では『魔力』と呼んでいました。

誤字ではありません。


次話は明日19時に投稿します



このお話に出てきたハルとヒロの両親の若い頃のお話を、本日より連載開始しました。

「『霊力なし』『役立たず』と一族でうとまれていた僕が親友と奥さんを得て幸せになるまでの話」

全八話です。

こちらもよろしくおねがいします。

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