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第三十四話 『禍』

このお話は初投稿版の59部分にあたります

 ぱっと明るくなり、目がチカチカする。

 先程とは真逆の、真っ白な世界だった。


「いた!」

 目の前に大きな黒い塊があった。

 以前晃が見たときよりも一回り大きくなっている気がする。


 リリリリリーン、リリリリリーン、と、共鳴の音が鳴り響いている。

 トモの家で五人そろったときよりも強い響きだ。

 かえってきた、かえってきたと喜んでいる。

 ひとつになりたいと引きつけられる。


 何もないあまりにも静かな世界なので、余計に共鳴音がよく響いて聞こえる。

 身体が震える。

 喜びか、恐怖か。

 わからない。

 色々な感情が湧きあがり渦巻いて、自分でもよくわからない。


「これが…」

 佑輝が思わずといったようにつぶやく。

 ナツも、ヒロも息をのんで黒い塊を見つめている。

 五人共何もできない。

 晃と同じく、自分の中に渦巻くものに翻弄されているのだろう。



 黒い塊はもごもごと動いている。

 白露を取り込もうとしているのだろうか。


 固まっていたのは、一瞬。

 すぐに気を取り直したトモが周囲と黒い塊の様子をうかがう。


「――まだ気づいていない。封印石を」


 ちいさくトモに言われ、胸ポケットから封印石を出し、右手に握りこむ。

 全員お互いが封印石を握ったのを確認し、ひとつうなずく。


 あとは『(まが)』を取り囲み、この石に霊力を込めるだけ。


 いよいよだ。あとちょっとだ。


 ヒロが全員に回復をかける。

 先程使った霊力ももどった。

 万全の状態だ。


「霊力圧縮」

 ぐ、と霊力を圧縮する。

 全員で呼吸を合わせる。

 吸って、吐いて。

 お互い準備が整ったことを目線で確認し、うなずく。


「行くぞ。囲むんだ」

 ひそりとトモが言う。

 うなずき、念の為左手に刀を持ったまま駆けだした。


 その瞬間!


 ビュッ!

 黒い塊から長いトゲが伸びてきた!

「ヒロ!」

 瞬時にナツがヒロにタックルをかけ倒し、ギリギリで回避した。

 わずかにかすった左肩の服がジュウウと溶けた。

 ハルの加護がなかったらと思うとゾッとする。


(まが)』は己の危険を察知しているのか、ビュッ、ビュッ! と不規則に長いトゲを伸ばして攻撃してくる。

 それを回避しながら五行の並びに位置取り『(まが)』を取り囲み、距離を詰めていく。

 あまり広がりすぎると封印の陣を展開する霊力が余計に必要になるとハルに注意されている。

 トゲトゲはすごいスピードで、しかも予測がつかないところから飛び出してくる。

 本数も多い。ウニみたいになっている。

 アクロバットみたいに身体を必死に動かしよける。よけながらじりじりと進む。

 もうすこし、もうすこし!


「ヒロ! まだか?!」

 起動できる距離がわかるのはヒロだけだ。

 トモの叫びにヒロも叫び返す。


「あと三歩! ――もう一歩!」

 ヒロの声にじり、じり、と何とか身体を進める。


「行ける!」ヒロが叫ぶ。

「よし! 石に――」


 トモの指示は続かなかった。

 黒い塊がぶわりと立ち上がった!


 ぶわわわっと丸から円柱形になり、あっという間に手足が形作られ人型(ひとがた)になった。


 大きな姿だった。晃の倍はある。

 顔にあたる場所には晃が吉野でみたあの面がある。


 人型をとると禍々しい気配がどっと増した。

 同じ空間にいるだけで苦しい。

 息をするだけで霊力が削がれていく気がする。

 空気の重さで膝をつきそうだ。

 それを何とかこらえるので精いっぱいで、五人共動けなくなってしまった。


 それでもトモが何とか声を出す。

「息を、整えろ!」

 その声にはげまされるように息をする。

 吸って、吐いて。

 身体に霊力が巡るように。


「込めるぞ!」

 トモが叫ぶ。


「それは、我のチカラだ」


(まが)』も共鳴に気付いたのだろう。

 己のチカラを持つモノが目の前にいると知り、白露を後回しにすることにしたようだ。


「チカラを、かえせ!」

 叫ぶやいなや人型をとっていた『(まが)』の下半身がぶわっと広がった!


 あっという間に黒いもやもやに取り込まれ、身動きが取れなくなった。

 もがくが、黒いもやもやからは逃れられない。


「そのチカラは我のモノだ! 我は王になるのだ! この国の、王に! そして!」


「トモ!」

 ヒロが叫ぶ。

「このまま起動しよう!」


「それしかないな!」

 トモも叫び返す。


「間違った世界を正すのだ!」


(まが)』の叫びに呼応して、晃達をとらえているもやもやが一気に本体に引き寄せられる。

 このままでは飲み込まれる!

 なんとかこらえようと足をふんばるが、向こうの引く力のほうが強い。

 ぐぎぎぎぎ、と暴れるも、どうにもならない。まずい!


「あらがうな! このまま封じるぞ!」


 トモの声に心が定まる。

 そうだ。こんなパターンも想定してた。

 大丈夫。まだ大丈夫だ!


「腕を!」

 封印石を握る右手はまだとらえられていない。

 ぐっと上げ動くことを示すと、他の四人も同じようにしている。これならいける!

 そのまま右腕を前に突き出した!


 引っ張られる勢いのまま、ドン! と『(まが)』本体に腕がささった!


 防具とジャージがいい仕事をしている。

 肌のさらされている顔はジリジリと焼けるようだ。

 早くしないとまずい。

 強すぎる瘴気に身体が保たなくなる。


「せーの!」


 トモの合図に五人で一気に封印石に霊力を叩きつける。

 途端、キンッ! と音がして、右手が熱くなる。

 あっと思ったときにはザアッと金色の何かが広がった。

 話していた封印の陣が展開したのだとわかった。


(まが)』の動きが止まった!

 このままいける!


 そう思った、その時。


 パシィィン!!


 封印陣が壊れた!

(まが)』に弾かれたのだ!


「――くそっ!」

「ダメだった?!」


 封印石を起動していたときには止まっていた『(まが)』が再び動き出した。

 先程のように一気にではなく、じわりじわりと引き寄せられる。


「トモ!」

「あきらめるな! まだ封印石は壊れていない!

 ヒロ、もう一度展開できるか?!」

「できる!!」

「聞いたな?! もういち――霊力を――」

「――――」




 仲間達の声が、次第に遠くなっていく。

 晃の視界が、だんだんと白くなっていった。

次話は明日19時に投稿します

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