能ある鷹は爪を隠すが、能あるピエロは顔を隠す
泣いてる子供を見たことがあるかい?
僕は、毎日のように見ている。僕の住んでいる街にはスラムと呼ばれるゴミ溜めがあるのだから。
そんな子供達は、大抵捨て子だ。僕は、泣いている子供が大嫌いだ。子供が毎日泣いているような街は、それ以上に大嫌いだ。
僕の生まれも育ちも、この街だった。いや、この街のスラムだった。僕は、今でも覚えている。実の両親に捨てられた日のことを。
忘れるわけが無かった。
悲しくないわけが無かった。
両親が嫌いなわけが無かった。
悔しくないわけが無かった。
寂しくないわけが無かった。
けれど、不思議と涙だけはでなかった。
世界は、理不尽なことで溢れている。齢6才にして知った現実だった。
この世界には「魔法」という忌々しいものがある。
この世界では、誰でも魔法が使える。大体4才から5才頃には誰でも使えるようになる。
僕は、6才の誕生日に捨てられた。
僕は、魔法が使えない。それどころか、魔道具と呼ばれている道具さえ使えない。魔道具は、使用者の魔力情報を読み取って無理やり、魔法を使用する道具だから・・・魔力というものがそもそも僕には、無い。
だからこそ、泣いている子供が嫌いなんだ。
泣いている子供は皆、動こうとしない。
足掻こうとしない。
ただ泣くだけだ。
だから、「大嫌いなんだ。そして、許せない。」
僕は、何も持っていなかった。今も何も持っていない。
泣いている子供達には、魔力がある。
僕には無かった。
こんなものただの逆恨みだと思っている。けれど、思わずにはいられない。
だからこそ僕は、ピエロになった。
何も持っていない僕だからこそピエロになれた。
持っていないと言うことは、失う物すらないんだ。
僕は、泣いている子供が嫌いだ。だから今日も、この街の何処かで人知れず子供を笑わせる。
ピエロの仮面を付けたまま。