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「蝶々が歩いていた」
蝶々が歩いていた
その美しい羽根を使うことなく
淡々と歩いていた
珍しい
ましてやアスファルトをボソボソと歩いている蝶なんて
中途半端な都会でしか見れないぞ
蝶々が歩いていた
何度かその羽根で飛ぼうとしたが
よほど疲れていたのか結局諦めて
淡々と歩いていた
珍しい
これは何らかの事情によって弱ってしまっているのか
それとも命が尽きようとしているのか
そういえばそうだ
暦からすれば夏なんてもう終わっていて
静かに虫たちは終焉を迎える時期にある
さぞかし熱いであろうアスファルトの上を
トボトボと歩いていたあの蝶々も
そろそろ長い旅が終わろうとしているのかもしれない
最期の場所まで遠くはないのだろうか
蝶々が歩いていた
その美しい羽根を使うことなく
どこへ向かう訳でもなく
淡々と歩いていた