始まる学園生活
学園ものの、能力バトルを書きたくなったので始めました。更新が遅れることも多々あると思いますが、どうか温かい目で見ていただければと思います。
ガキンッー ガキンッー
剣と剣とがぶつかり合って、激しい音がなる。その度に、この試合を見に来た観客達は盛り上がった。
『やれー!たたきつぶせ!』『そこだ!いっきにカタをつけろ!』『そのまま殺せ!』
周りの客からは汚い言葉が飛び交う。それもそのはず。この大会は裏の社会で生きる者達が集う、最悪の大会。見に来ているやつらも、きっとろくなやつではない。
「うらぁぁぁーーー!」
相手が大きく踏み込み、大剣を振るう。だか、それでは俺には届かない。
「なッー」
「シッ!」
向かってくる大剣を流れるようにそらし、自分の刀を一閃。
「ぐはぁぁ!」
それだけで相手の片腕が飛んだ。
『『『ウオオォーー!』』』
『いいぞ!〈ゼロ〉!』『さすが〈ゼロ〉だ!とどめをさせ!』
観客達の声は、俺には届かない。そしてそのまま、俺はまた刀を一閃した。
この世界には魔力者と呼ばれる存在がいる。魔力で己の武器を具現化させ、あらゆる能力を操る。なかには武器を使わず、能力だけで戦う者もいる。
魔力者という存在は貴重であり、世界の命運すらも大きく左右するほどの存在でもある。つい40年前までは、戦争も勃発していた。
そのような、常人には成し得ないことができる魔力者の卵達は、ここ、世界の中心都市レバノスへとやって来る。
レバノスには8つの魔導学園がある。そのうちの1つ、聖明学園に1人の青年が入学した。
「えぇーと。ここでいいんだよな?」
聖明学園の正門にその男はいた。灰色の髪に整った顔立ちで、真新しい制服を着ている。入学式は明日なのだが、この青年はわけあって今日、この学園に来ていた。
「まったく。澪も無茶言ってくれるな。自分の学園に入学して下さいと言うとは・・・。」
ここにやって来るまで、7時間はかかった。どーも飛行機はなれない。おかけでまだフラフラする・・・。おっと、早く行かないとまた怒られるな。さて、理事長のとこに行きますか。
「すみません。理事長室がどこにあるかご存知ですか?」
近くにいた在校生とおぼしき生徒に話しかける。
「うん?あら、もしかして新入生かしら?ええ、いいわよ。案内してあげる。」
「ありがとうございます。」
ーそして物語は動き出すー
理事長室までの道すがら、様々な生徒を見かけた。小柄から大柄、男子はもちろん、女子も意外と多い。これは退屈しなさそうだ、と青年は心の中で呟いた。
「はい、ここが理事長室よ。」
「わざわざすみません。」
青年は礼を言って、頭を下げた。魔導学園は通常の学校よりもかなり優遇されているので、とても1人では見つけられなかっただろう。
「いいのよ。それじゃあ、私はこれで。」
そう言って、赤髪の先輩は歩いていった。青年は理事長室前に立ち、ドアをノックした。
「入れ。」
中から落ち着いた大人の女性の声を聞くと、青年はなかに入った。
「失礼します。」
理事長室の中は意外と広く、とても整っていた。青年の前には1人の女性が座っていた。きちっとしたスーツを着こなし、長い黒髪を後ろで束ねている。まるでどこかの会社の社員のようで、そこらの男よりよっぽど男らしい。そのくせ大人の女性らしさもあるから不思議でならない。年齢は20代半ばといったところ。
「よく来てくれました。わざわざ遠いところを。」
と、黒髪の女性が言った。凛々しい声で言った。
「まったくだ。長旅は疲れる・・・。」
と、青年も返事を返した。端から見れば、1人の新入生が理事長に向かってタメ口を言い、理事長が敬語を話しているのだから、とても奇妙な光景に見えただろう。
「本当にすみませんね、和人師匠。」
自分が悪いとはまったく思っていないような笑顔をして、女性は青年に話しかける。
「まったく、謝る気ないだろ・・・。というより、今はいいけど、人前ではその呼び方はやめてくれよ。あくまで今の俺は1人の生徒にすぎないんだから。」
と、あきれた顔で青年は返した。
「ええ、もちろん。分かっていますよ。」
とてもいい笑顔だった。
「それにしても、2度目の学園生活を送ることになるとはな。」
「得した気分では?」
からかうような口調だった。
「まぁ、悪くないな。16歳というのも。それで、俺をこの学園に入れたのはやっぱり剣戟祭か?」
と問うと
「その通りです。」
と、理事長は肩をすくめて言った。
剣戟祭とは年に2回行われる、学生の魔力者達が集う最大の大会である。レバノスにある8つの魔導学園から10人ずつ代表選手が選ばれ、魔力を用いた試合を行う。ひと昔前までは、この聖明学園が1位を独占していたのだが・・・。
「近年はあまり戦績が良くないので・・・。」
「なるほどね。」
最近は戦績が悪くなる一方で、低迷している。理事長はデータを画面に表示し、青年に見せた。
「強い生徒はいるんですが・・・。それはほんの一部でして。その他の生徒は他の7校に比べて平均的に低い。次の剣戟祭はいわばチーム戦のようなものなので・・・。」
次回行われる剣戟祭はトーナメント方式ではなく、チーム戦に近い。試合はあくまでも一対一だが、勝った選手の学園にポイントが入り、負けた選手の学園はポイントが入らない。これを繰り返していき、最終的にポイントが一番高かった学園の優勝となる。つまり、1人が強くても、他の選手が負け続けては意味がない。
ちなみにその次の剣戟祭は選手個人によるトーナメント。この2つが1年に1回ずつ行われる。いわば、個人戦と団体戦のようなものだ。
「確かにそうだな。」
データを見ると、トーナメントの剣戟祭ではそこそこの戦績だが、団体戦はボロボロだ。
「ところで、他の新入生達はどうなんだ?」
「それなんですが・・・。」
ーコンコンー
と、理事長が言いかけた時、扉がノックされた。
「入れ。」
「失礼します。」
入ってきたのは1人の女子生徒だった。今までに見たことがないほど、きれいな生徒だった。雪のような銀髪でセミロング、瞳は髪と同じく青みがかっている。整った顔立ちで、胸は平均的。他の生徒のような白をベースとした制服ではなく、黒色の制服をしていた。おまけに、みんなは動きやすいようにミニスカートなのだが、彼女は膝上くらいまでスカートが長かった。この学園は制服のことに関しては甘いようだ。
「坂柳理事長、これを。」
その女子生徒は青年には目もくれず、理事長に書類を提出した。
「あぁ、わざわざご苦労。アイフォード。」
「では、失礼しました。」
女子生徒は青年を一瞥し、興味がなくなったかのように出ていった。
「澪、彼女は?」
「セレス•アイフォード。師匠と同じ新入生ですよ。ああ見えて相当強いですよ。」
「へぇ〜、そうなのか。」
青年は面白そうに笑みを浮かべた。
「ただ、あの子は人とあまり関わろうとしないんです。ひたすらに強さを求めて。強者にしか興味がないといった感じで。」
そう言いながら理事長はため息をついた。
「あの容姿ですから。周りの人間はほっとかない。でも彼女はそれをほぼ無視。そのことにイラついた人達が決闘を挑んで全員負けた。」
「なるほどねぇ。でも、新入生はなかなか充実してそうじゃないか。坂柳理事長。」
「ええ。もちろん師匠にも期待してますよ。宮野和人君。」
2人は同じようにして笑った。どうやらこの2人の師弟は似たもの同士らしい。
「さて、そんじゃ俺は帰るわ。明日からよろしく。」
「ええ、また明日。」
そうして和人は理事長室を後にした。