第6話 響く剣戟
「ふわぁ〜……あ、おはよう」
「おう、よく寝てたな」
「うーん、爆睡してたでしょ?」
「まあな。さすがに起こすの悪かったしな」
「ふふ、ありがとう。今何時かな?」
「今は5時だな」「え!?4時間も寝ちゃってたのか!ごめん!」
「いや、気にするな。ゆっくりくつろいでいいんだから」
「いやでも流石に……」
「いいっての。何年付き合いあると思ってんだ……それに今日だけに限ってってことじゃないしさ」
「うん……ありがとね」
「おうよ。それで帰るのか?」
「うん。今日の夜ごはんは私が作るからねー。後でお裾分けしようか?」
「いや、わざわざそんなことしなくても……」
「いいの、それくらいはさせて、ね?」
「まあ、お前がいいならいいけど……」
「それじゃ、また後で来るね」
「ああ」
そう言って抜け道から家に戻っていった。
「さてと……」
俺は本を閉じ部屋を後にする。
居間に戻ると、まだ美里姉がいた。
「あれ?狭霧ちゃん帰ったの?」
「ああ、さっきな」
「そっか、焔今暇かしら?」
「まあ、一応」
「なら、ちょっと付き合ってくれない?」
そう言われ案内された場所は道場だった。
「なるほど、体動かす相手になればいいんだな?」
「そういうことー。ほれ」
投げ渡されたのは練習用の木刀だ。これでいつも剣の訓練している。
「さっ、久しぶりに本気で来なさいな」
「元から手を抜くつもりはないよ!」
互いに構える。
『物凄い気迫を感じる……これは本当に油断できない』
先に仕掛けたのは美里姉だった。
『早え!?』
「はっ!」
間合いを詰め、胴を狙う一撃を寸前で躱す。
「悪くない反応ね!でもそれだけじゃ倒すことは愚か、避けることも出来ないわ!」
「なら、その反応に追いつけばいいのさ!」
美里姉の素早い連撃を、体と木刀をうまく使い回避したり受け流していく。
「そろそろ、こっちもいくよ!」
「来なさい!」
こちらも素早い連撃を放つが、全て見破られ回避される。
「だいぶスピードが上がったけどまだまだね!」
「スピードだけじゃないさ」
「な!?」
振り上げる攻撃をするが、それはあくまで囮で本命は…
「翔舞一突!!」
胴に対する突きだった。
「ぐっ!!」
しかし寸前で木刀の切っ先で防ぎ、受け止められた。
「何!?受け止められた!?」
「ふぅ、危ない…」
あれほど器用に受け止められるとは思わなかった俺だった。
「ふふ、面白いわねー!でも、まだ本気じゃないわね焔?」
「さすがにわかっちゃうか……本気でやったら互いにボロボロになるしね」
「私はそういうの望んでたんだけどなぁー」
「勘弁してくださいよ……」
「もっと本気でかかって来ないとやられる…わよ!」
受け止められた木刀で押し出さられバランスを崩してしまった
「しまっ!?」
「貰った!!」
「くそっ!」
真っ直ぐ木刀を振り下ろす美里姉の攻撃を肩で受け、俺は同じタイミングで横に薙ぐように木刀を振る。
「おっとと」
軽く躱されて、結果俺だけダメージを受けることになってしまった。それに、木刀だからかなり痛い。
「って〜」
「甘いわねー」
「やっぱり見通されてたか……」
「攻撃が単調だしね。あれなら、踏みとどまって剣で受け止めるべきだったわね」
「迷いが生じたかな…」
「さてと、これくらいにしときましょうか」
「だね」
木刀を元に戻し、道場に一礼して去る。
「それより大丈夫?」
「これくらい問題ないよ。そっちは大丈夫だよね?」
「まあね、全部躱したし。それより私とやる時くらい本当の本気出したらどう?」
「それは……」
「遠慮するところは一丁前ね」
「いや、そんなことはないよ!!」
「なら……」
「ただ、今の俺には実力だけで勝負したいから」
「……そっか。ふふ、大きくなったわね」
「いや、まだまだだよ。俺には遂げなければ……越えるべき壁があるから」
「……」
そう、俺には幾多にも試練がある。ずっと、重い枷を引きずりながら今日も生き続けてる。
「少しずつでいいのよ。焔なら越えられるわ」
「うん」
「さてと、夜ごはん食べに行きましょ。私さっきのでお腹空いちゃったし」
「そうだね」2人で廊下を歩いて、居間へと戻る。