第5話 御影家
「ただいま」
そういって出てきたのは妹だった。
「おかえり!どうだった?」
「どうもこうも何もないよ。面倒ごとはありそうだが……」
「そっか。とりあえずはってかんじだね」
「だな」
家は和風な作りをしていて、廊下は長く、部屋も多い。2階建てということもあり、使い余ってしまっているのが現状だ。玄関を上がって長い廊下を歩くと居間がある。
居間でくつろいでいる義姉がいた。
「おっ、おかえり焔」
「ただいま」
「うんうん、スーツが似合ってるわねー。軽く惚れちゃいそう」
「それは、流石にないかと」
「いやいや、普通にかっこいいと思うよ?ねぇ、かなめちゃん」
「そこであたしに振るの!?」
そんな話をしている横を通って、居間の横にある仏壇の前に座る。
俺の両親は高校の時に亡くなった。しかし、それは何者かによる殺人だった。残された俺とかなめは義姉である美里姉と一緒に暮らすことになった。美里姉も両親が幼い頃に離婚し、それを拾ったのが俺の両親で養子に迎えたということだ。
御影の家は代々武家の家庭で、しきたりや躾には厳しい家庭だった。しかし、険悪なムードは一切なく毎日楽しく過ごせていた。だが、そんなことが続くことは無かった。しかし、それを取り戻せたのは他でもない美里姉のおかげだった。
おかげで、今は新たな日常を送ることができている。
「お兄ちゃん」
「なんだ?」
「今日のお昼何食べる?食べてないでしょ?」
「ああ、そうだな……気分的にチンジャオロースが食いたいかな」
「分かった!出来たら呼ぶから」
「おう、悪いな」
仏壇を後にして居間に戻る。
「美里姉は何してたの?」
「うん?簡単な依頼をね……」
「今日も面倒くさいの来てる?」
「それはないかな?比較的家でできそうなものが多いから」
「なら、今日はゆっくり出来るかな。とりあえず、一旦自室行くよ」
「かなめには言っておくー」そういって、テレビを見始めた。
俺は自室に戻り、地下に行く階段を降りていた。地下はちょっとした書庫になっている。実はその奥には通り道がある。
「やっぱり来てたか。おい、狭霧!」
「えへへ、早く来ちゃった」
「まあ、別にいいけど。あ、そうだ昼飯食ってくか?チンジャオロースだけど」
「え?いいの?」
「いつものことだろ、気にするなよ」
「じゃあ、頂いて行こうかな」そう言って一度上にあがる。
「かなめ、狭霧の分もあるか?」
「なんとなく来る予感がしてたからあるよー」笑顔で答える。
こいつの予感は大体的中するから怖い。
ということで狭霧も一緒昼飯を食べることになった。
「うん!凄く美味しいよ!さすがかなめちゃんだね」
「いやいや〜、狭霧さんには負けますよ」
「ええ~、そんなことないって」
遠慮しがちに言うが実際上手い。
「まあ、さすが私が料理を叩き込んであげただけはあるね」
「あんまりそんなイメージしたことなかったけどねー」
どうやら叩き込まれたというよりかは、優しく丁寧に教えてもらったらしい。
その後飯を食い終わり、食後の読書をしている。狭霧も書庫におり俺の本を読んでいた。「ふわぁ……眠くなってきちゃった……」
「布団、出そうか?」
「うーん、お願いしたいな……昨日結局全然寝れなかったから」
「よっぽど、不安だったんだな」
物置から布団を出してくる。
「少しは肩の荷が下りて楽になったかなー」
「そうか。とりあえず用意したから寝てもいいぞ」
「ごめんね!ありがとう!」
そういって布団に潜り込んで寝てしまった。
『まあ、そっとしておくか……』俺はとなりで本を読み続けた。