パーティー2
「早い帰還だったな。腕試しのコロシアムならそこそこ稼げたんじゃないか?ははぁ〜ん。カジノでボロ負けしてすっからかんで帰ってきた。そんなところか」
ロイさんがかなりいい線の言葉をかけてくる。
「そんなことよりルナさんの様子はどうなんですか?」
カジノで負けたのが悔しいわけじゃない。ルナさんが心配だからな。あとで直接お見舞いに行くが現状を聞いておきたい。そう。悔しいわけじゃないからな。
首を横に振るロイさん。
「まだ目覚めない。そう心配するな。死ぬわけでもないし、もう少ししたらいつものように笑ってくれるさ」
俺達に心配させないようだろうか極めて軽い口調で淡々と答える。
そんなときスルッと後ろからなにかが抜ける感覚が.....。
「はいコレ!この短期間でこれだけ稼いできた私って凄くないです?」
抜かれたのはミュールで稼いだ(返してもらった)お金全額だった。
「おぉ。こいつぁすげ〜な」
ドシッと渡された袋を確認する親方。
セツナの頭を叩こうとした俺より先に負債神がセツナを退かし親方の持ってた袋を取り返す。
なかなか分かってるじゃないか。ここからさらに冒険しなきゃいけないんだ。全額返するのはまだ早一一。
「このお金はカジノで燃やすエナジーです。渡してなんかたまるものですかぁぁぁ」
スパッと斬輝の杖の柄で負債神の意識を断つ。
ふぅ〜。こいつはこういうやつだったな。
そんなやり取りをしているとユウヤから声をかけられる。
「お兄ちゃん達早く行こうよ。町長さん待たせたら悪いよ」
「すまない。そうだな。ロイさん、親方。あとで返済と今後についてまたお話させてください。ほらセツナもいくぞ」
セツナを呼びユウヤの後をついていく。負債神は相変わらず引きずってますよ。こいつの定位置はドラク〇の棺みたいに引きずられるそんなものなんだろうとさえ思えてきた。起きてたら起きてたでそこら辺でお酒を飲んで迷子になりそうだからちょうどいい。
町長が歩みを止めるとそこには盛大な料理と飲み物が置かれていた。中央にはなにやら25m四方の枠があり腕に自信のありそうな冒険者らしき人達が運動をしている。
「それでは準備はまだ完全ではありませんがこうして来ていただいたあなたがたを待たせるのもこの町のプライドが許しません。一日で足りなければ二日、二日で足りなければ三日と盛大に盛り上がろうではありませんか!」
なにやらスピーカーのようなものを町長が使い、その音声を町全体に響かせる。
そして村長の宣誓が終わると共にうぉおおおっと揺れる歓声。
そのあとはもう凄まじかった冒険者やら女の人やら、やたらお酒を注がれ食べきれないほどの食べ物をよそってきてもらい、美味しくいただく。
食べても食べてもよそわれるので適当に喋りながらだけどね。
周りを見るとセツナは冒険者の武器を見てやたら即興で改造をしている。なにか煙出たり爆発したりしたのを見かけたが見なかったことにしておこう。
ミラは予想通り酒を浴びるほど飲んでいた。樽のまま飲もうとしているのには引くわ。
ユウヤは中央の枠で冒険者相手にコロシアムのような対戦をしていた。武器はおもちゃの剣のようだし大事にはならないだろう。対戦している人達も笑顔だしいいことだ。
そんなことを思って飲食していたらトイレに行きたくなってしまった。
ちょうど近くにルナさんの休んでる宿があるので後日とは思ったが少しだけ様子を見にいってみるか。
俺は周りに見えない速度で一気に移動する。無駄に早いのもこういった時に役に立つものだ。してやったりのドヤ顔をして宿に入る。
宿主に挨拶をしトイレを借り、ルナさんがいる部屋と向かう。
ドアの前にはメイドが立っていたが軽やかな挨拶をされ扉を開けてくれた。
そして部屋に入ると月の光を浴びて眠るルナさんがいた。
キィっと静かに扉が閉まる。
外の賑わいが静まり返る。
一歩近づくと床のギシッという音が響く。
一歩近づく事に心臓の音も脳内に聞こえてきそうなほど静かだ。
そしてルナさんのベッド横にあるイスへと腰をかける。