パーティー1
門をくぐると相変わらずの活気のある町だが今日はどうやらいつもと違った。
なにが違うかというと夕方になると皆仕事が終わり始め飲み屋が賑わい始める頃なのにいまは皆がいそいそと駆け足で町全体でパーティー準備をしている。
「なにかあるんですか?」
俺は気になったので近くにいた人に尋ねてみる。
「なにっておめぇ、この町の救世様がおかえりになるらしいからその準備に決まってるじゃ......」
そう言いかけて目を丸くし、こちらを見るおじさん。
「お前さんたちなんでこんな早く!?一体どうやって、いやいやそれは置いとこう。ようこそおいでくださいました。少々こちらのお店にてお待ちくださいな」
おじさんは店の店主になにやら言って町の中央へ走り去っていく。
するとコトっと上品な紅茶とお菓子が運ばれてきた。
パッと振り返ると店主がニコッとお代はいりませんよということだった。
何が何だか分からないがくれるならありがたく食べさせて貰おう。
紅茶の香りを嗅ぎながら町の様子を眺める。チラチラとやたらこちらを見られては目が合うとニコッと笑ってお辞儀をしてくる人達。
「なんなんだろうな」
そう言ってテーブルの仲間を見るとお菓子を貪る育ち盛りの二人と蒼い顔をしながらもお菓子を食べようと葛藤している顔面蒼白女神。まともに話せそうな仲間がいないので町の様子を伺いながら先程のおじさんが現れるのを待つ。
ミュールではコーヒーをいただいていたがここの紅茶もいいな。香りを楽しみ、味を楽しみ、鼻を抜ける余韻を楽しむ。
半刻ほどすぎたほどで先程のおじさんと雰囲気あるおじさんが歩いてきた。
「改めてようこそおいでくださいました。ドラゴン退治の英雄を歓迎できて嬉しいですぞ」
「えっ」
俺達?とばかりに驚く。確かに結果的になんとか退治できたがそこまで感謝されることだとは思っていなかった。そもそも俺達だけじゃなく町の冒険者達も戦ってくれたから勝ちをひろったようなものだしな。
その旨を伝えたが戦いに参戦した冒険者が一同に俺達の戦いの様子を熱く語っていたらしい。その英雄をもてなす前にこの町を出ていってしまったことに後悔していたがミュールでの活躍とどうやらこの町に戻ってくるという話が伝わりいまに至るそうだ。
どうやって伝わったのか不思議だったがセツナが朝方出発前に親方のところに連絡したということだった。
(ここまで準備してくれているのに断るのも無粋か)
俺たちは町長に導かれるままに町の中央へと向かっていくことになった。
町の中央では入口以上に賑わいを見せておりものすごい活気があった。
冒険者達が興奮したようにこちらにタッチを求めたり予想以上に注目されて早歩きになってしまう。
そんなとき親方とロイさんが声をかけてきてくれた。