カジノ4
向かい合うようにテーブルへと着く。
(改めて見ると物凄く可愛い子だな。佇まいが只者ではないが)
そんなことを考えているとルールを説明してくる。
「ここ1から20までの数字が書かれた20枚のカードがあります。シャッフル後に私と貴方に一枚ずつカードを配り、残りのカードは伏せていきます。お互い配られたカードを公開し、その後で伏せたカードから一枚を引いていただき自分のカードとの合計が22を目指すゲームです。しかし23以上は役なしになり、その場合は数が少なくても22以下の方の勝ちです。ちなみにお互い役なしの際は22に近い方の勝ちになります」
ルールは簡単だな。
了承してゲームが始まる。
美少女ディーラーはこちらをジッと見つめているが、そんなことはお構い無しに華麗に宙を舞いながらシャッフルされる20枚のカードに集中する。惚れ惚れするほどのカード捌きに周りからは感嘆の声が挙がっている。
そして宙を舞うカードを目にも留まらぬ速度で流れるように机へ並べられ、その中から一枚ずつが配布される。
(宙を舞う演出は悪手だったな)
俺は舞うカードを見て記憶しきっている。セツナに持っていかれたチップを含めて、負けたら無一文だと思うとこれまでに無いほど集中していた。
(道端で野宿なんてしたくない!俺に配られたカードは20、向こうのカードは1。仕組んでるよな)
「それでは配布したカードを表にしてスタートしましょう。先行は真さんからどうぞ。それではお互いカードオープン」
開かれたカードはおれが20、ディーラーは1。
(見れてなかったら圧倒的不利に動揺してたな)
周りからは、これは勝負決まったななどと囁かれている。確かに俺は2を引かなければその場で負ける。確率としては18分の1だ。普通なら絶望してただろう。
しかし逆にいえば2さえ引ければ絶対勝つのだ。悪い配布ではない。
そんな中縋るように見てくる女性仲間二人、勝利を信じている目でこちらを見ているユウヤ。
「まるで想定内と言った顔ですね」
美少女ディーラーが声を掛けてくる。
「悪いけど相手が悪かったですね」
はぐれメタル的なステータスによって鍛えられたこの動体視力が伏せてあるカードの内容まで把握している。
俺は確信して2であろうカードへ手を伸ばす。
「そちらのカードですか、では私はこちらのカードにさせていただきます」
美少女ディーラーもカードを選び言葉を発する。
「それでは真さんカードを開いてください」
俺の捲ったカードは勿論2.....。
では無かった。その数字は19。20と19で最弱の役なし。
「そのカードを引いたのはさすがですね」
そう言ってカードを捲る。そこには狙っていたはずの2がいた。
最弱の役なしの俺に対して、相手は1と2で役の中では最弱ながら勝負は美少女ディーラーの勝ちになる。
「そ、そんな」
俺は2と確信していた。宙を舞っている際もセットされてからも目を離さなかった。イカサマをするスキも与えなかったし、した気配もない。
「それではチップはいただきますね。しかし躊躇なくあのカードにいくとは、期待以上でしたよ。また後で会いましょう」
そんな言葉も耳に入らず、フラっと立ち上がる俺達三人。フラフラとカジノを出ていく。
かなりの頭金があったはずがあっという間に無一文になってしまった。
大敗も大敗だ。ギャンブル怖い。
ユウヤが少し遅れてトテトテと後を追いかけてくる。
はぁ〜。道端で寝なきゃな。どこで寝るか.....。