カジノ1
今日は久しぶりに四人揃って宿を出る。
まだ朝早いためだろうか街中は人通りが少なく、いつもより足が前へ前へと進む。.....いやというよりも先を進む女性陣二人の歩みがとてつもなく速くて置いていかれないように早足になっている。理由はまあわかりきってるが、そんなに急いでも始まってないだろうよ。
予想以上に早くカジノへ到着すると、かなりの行列が出来ていた。前の世界でのパチンコ屋の朝みたいだ。どこの世界でもギャンブルが好きな奴はいるんだな。
あっ、ここにも天界にいるはずの女神様がギャンブル中毒だったわ。ホントにどこにでもいるんだな。
とりあえず俺達は最後尾へ並ぶ。カジノの開店まであと30分ほどなので軽く雑談をする。
まあ予算やら、なにをやりたいやら、このままこの街で生活しましょうやら。最後のはブレない女神を引っぱたいてツッコミを入れるのもいつも通りだ。
そんなこんなで開店をする。表のライトと音楽が鳴り響き一気に華やかな雰囲気になる。
行列もあっという間になくなり、俺達も中へと入る。
そして部屋に入るとそこにはとてつもないほどの大広間に豪華なシャンデリア、壁には装飾が施されており三階まで続く部屋中央の大階段には真っ赤なカーペットが轢かれている。
勿論色々なところにカジノの代名詞であるゲームをする場所があり沢山のディーラーがいる。見た限りでもカードゲーム、スロット、ルーレットの有名所は勿論、見たことないゲームも沢山催されている。
その何処も彼処も大勢のお客で賑わっており、入ったばかりだというのに少しテンションが上がってくる。
「すごいなぁ」
俺がふと声に出すが返事がない。周りを見渡すと三人が消えている。
キョロキョロと見渡すと受付なのだろうか?カウンターでなにかしている。
「ミラさん、お兄ちゃんに聞いてからのほうがいいって」
「ユウヤ君、お兄さんに言ったらダメって言われるから、言われる前にやるんだよ~」
「セツナさんの言う通りです!ユウヤ君もここ一番での思い切りを身に付けるためにも私たちを見習ったほうがいいですよ」
そうして大量のカジノのチップを受け取るミラ。
<ガシッ>
「なにをどう見習えばいいのかなぁ?」
俺はミラの頭を背後から掴む。
「エヘッ」
スパーンッとミラに叩きを与え、いまの状況を確認する。
お金を入れている袋が見当たらない。いつもは俺が持っているはずなのだが.....。
うん。その袋はいまこの駄目な女神が持っていますね。袋を取り上げ中身を確認する。
うん。空っぽですね。
逆さにしてみる。
うん。空っぽですね。
代わりに持っている大量のチップは、全てを物語る。
「はぁ〜。目を離すとすぐこれか。お姉さんこれ返金してもらっていいですか?」
俺は受付のお姉さんに声をかけた。
「勿論交換することも可能ですが、チップに交換したレートより下がってしまいますが大丈夫でしょうか?せっかくなので遊び終えてから交換なさったほうがいいかもしれません」
ゴールドとチップはそういう感じか。全賭けとかしない限りは大丈夫か。ならまあ最後に換金するかな。これはフラグじゃないぞ。
頭を抑えながらパーティーメンバーの方を向く。
「はい。これがお兄さんの分ね」
大量にあったチップを四等分したのだろうか。セツナが俺にチップを渡してくる。
.....。
ミラとセツナのチップがなにか多い気がするのは気のせいではないよな。
「おい。これホントに四等分───」
「セツナさんこっちこっち!席取れましたよ!」
既にミラはカジノをスタートしている。遠くから手を振る姿にセツナは目を輝かせてパタパタと向かっていく。
「お兄ちゃんせっかくだし、楽しもう?」
「あぁ。そうだな」
女性陣に頭を悩ますのも今日は忘れよう。とりあえず俺とユウヤもチップがあることだし、このチップで今日は遊ぼう。