長い一日の始まり
「さて、行きましょう。お嬢様」
そういっている執事はグラりと体が揺れた。
「あんた、大丈夫なの? 寝不足が祟ったわね」
「ええ。しかし、睡眠時間は確保するつもりなので問題ないかと」
「あんたは……」
また授業中にねるつもりね……
「それではお嬢様。私は保健室に参りますのでなにか御用があればいらしてください」
執事は教室に荷物を置くなり、保健室に行こうとする。
授業を受ける気すらないのね……
「ごきげんよう、由香、絢介君」
「ごきげんよう、瑠奈。今日は遅いのね」
私達の遅れて瑠奈が教室に入ってくる。ちなみに、ごきげんようという挨拶はこの学校の決まりである。
「おはようございます、瑠奈様。それでは、私はこれで」
「絢介君、大丈夫なの?」
瑠奈は執事の体が揺れるのに気づいたらしい。
「失礼ながら、なんのことだか良くわかりません」
そう言い残して執事は教室を出ていった。
「ただの寝不足よ。心配することはないわ」
「そう……なんだ。そう言う事にしているなら私は何も言わない方がいいね」
瑠奈は何か呟いた。
「えっ?」
「ううん。何でもないよ。ちゃんと、絢介君の事考えてあげないとだよ?」
「……?」
逆に私が考えてもらいたいものだわ……
「あ、先生が来たね」
程なくしてチャイムが鳴り、担任が教室に入ってくる。
そして、私の長い一日が始まった。