聖祭前日
そんなこんなで、文化祭前日の放課後。
「舞奈。ここの準備はどうなの?」
エントランスで舞奈を見つけたので、進行状況を尋ねてみる。
「全っ然、終わんないっ!」
舞奈はいつものように自信満々。
「あなたねぇ……いいから、早く終わらせなさい」
私達生徒会はだだっ広い学園の飾り付けを進めている。
文化祭といえば、泊りがけの徹夜作業というものをアニメなんかでよく目にするけど、この学校ではそれはほとんど存在しない。ていうか、この時代でそれが許されている学校って存在するのかしら?
クラスの出し物については余裕を持って二日前には終わらせるように指示してあり、二日間は出し物には使われない教室で授業が行われる。
それは、生徒会にも言えることなのだけど、飾り付けに関しては例外となる。飾りの中には生花もあるから、考えてみれば当然なんだけど。
ゲートの飾り付けなんかに関しては、業者に頼んであるから問題ないのだけれど、細かなところは私達の仕事になる。
現在は前生徒会役員と現生徒会役員を混じえて、絢介、美玲ちゃん、誠くんにも手伝ってもらっている。
「終わらせる前に、私はこのガキとの戦いを終わらせなければならないのよっ!」
舞奈は目の前にいる誠くんを指さす。仕事が終わっていない原因はこれか……
「ガキって言いやがったな!? このちびっ子生徒会長がっ!!」
今日で二人は三度目の顔合わせの筈なのだけど、短い期間でとても仲が良くなったようね。
なんだろう、身長が同じくらいだと、精神年齢も似通ってくるのかしら……?
「……言ったわね? 覚悟しなさいよっ!!」
「ああ、こいよ! ちびっこに負ける俺じゃないぜ! ――って、鳩尾っ!?」
舞奈の容赦ない攻撃が誠くんを襲う。
「ふん。これに懲りたら二度と私のこと馬鹿にしないでよね!」
舞奈はお腹を抑えて膝をついている誠くんの前で仁王立ちをする。なんだか、可愛いわね。
「そーだぞ、誠」
仕事を終えたのか、呆れたように俊がやってくる。
「ちびっ子にはどう足掻いても勝てないんだから諦めろ。あいつはああ見えてゴリラなんだか――」バタン
ホントに懲りないのはどちらの方なのかしら……
現生徒会の名物と化してきているこの光景。私の人選は正しかったのかしら……
「なぬっ!? 私の誠きゅんがお腹を抑えてるっ!? 私が癒してあげないと!!」
今度は瑠奈か……
「いつ俺がお前のモノになったんだよ!! って、舌なめずりしながらにじり寄って来るな! 癒えるどころか悪化するわっ!」
「ふふふふ。誠きゅーん」
なんだか、放置しておいたら大変な事になりそうね。犯罪の方向にまっしぐらって感じだし。
「瑠奈。それくらいにしときなさい」
ぽん、と瑠奈の頭を丸めた台紙で軽く叩く。
「ふぁーい。こっちの仕事は終わったよ。後残ってるのはここと講堂の飾り付けくらいじゃない?」
「講堂の飾り付けの担当って……」
「前生徒会の方達と絢介兄様です」
答えてくれたのは瑠奈と一緒に戻ってきた美玲ちゃん。
先輩方がいるからなんとかなっているとは思うけど、あいつがいるとなんだか心配ね……
「それより、俊兄様はどうしたんですか?」
美玲ちゃんは既に屍と化した俊に気づいたらしい。
「あいつは放っておいて大丈夫よ。寝ているだけだから寝かせておいてあげなさい」
「え? でも、なんか、液体が……」
「あれは墨汁よ。気にしなくてもいいわ。それじゃあここは、舞奈達に任せるわね。私達は絢介のところに行きましょう」
これ以上は、美玲ちゃんにとって良くないものを見せるわけにはいかない。
とりあえず、美玲ちゃんを連れて撤退することにした。




