聖祭の役割分担
「では、喫茶店の役員を決めましょう」
一夜明けて、ロングホームルーム。私達のクラスは聖祭の役員について話し合う。
今日の議題は、担当場所とメニュー。担当場所は希望をとればいいのだけど、メニューは一人でも作れる人がいないといけない。その点に関しては絢介がいるから安心ね。その指導を引き受けてくれるかどうかは別として……
「大まかに分けて、ホール担当とキッチン担当ね。一応希望は聞くようにするわ」
アンケートの結果、ホールとキッチンの人数は綺麗に割れた。
だけど――
「人数が足りないわね……絢介、あなた手を挙げてないでしょう?」
「ええ」
絢介にしては珍しいわね。基本的にこういうのは、すぐに決めてしまうのに。
「そう。じゃあ、決まったら私に言いなさい」
「いえ、お嬢様。私はどちらもしたくありませんので、手を挙げなかったのです」
あいつは何を言っているこだろう……
「あら、そう。それじゃあ、あなたは両方の担当をしてもらうわ」
「お嬢様。それは些か理不尽ではないでしょうか? クラス委員とは常に平等を心掛けるもの。お嬢様の辞書には平等と言う言葉はないのですか?」
執事が平等とか求めるの……? というか、これは私のせいじゃないわよね?
「うるさいわね! もう決定事項よ! 私は店の管理をするからキッチンとホールは各自に任せるわ」
「管理? 由香は絶対にホール担当よ!」
そう発言したのは瑠奈であった。
「なぜ?」
「なぜってそんなのは簡単だよ。多分、客の半分は由香のファンだろうからね。ちゃんと接客してもらわないと」
「ファンって……大袈裟じゃない?」
「由香は知らないんだっけ? あの生徒会の一件があってから、更に人気を博しているんだよ? 通称裏会長ってあだ名で」
一体この学校の裏には何があるのだろう……
決して探ろうとは思わないけど……
ただ、一つ言えることは――
「瑠奈、それを広めたの貴方でしょう?」
「てへ、バレた?」
相変わらず悪びれないわね……
本当に噂が回るのは早いんだから……
「まあいいわ。一応、ホール担当もすることにするわね。それでは、メニューです。何か案はあるかしら?」
さて、黒板に書かれたメニューは、オムライスやナポリタンといった庶民的なものから、舌平目のムニエルやA5ランクの牛肉のワイン煮込みといった高級料理まで。
普通の学校の文化祭ならば拒否するところだろうけど、私達の学校では許可せざるを得ない。
というのも、ゲストがゲストだからだ。日本の有名人はいざ知らず。各国の有名人までもが、聖祭のゲストとして招かれる。そのようなゲストに適当なものを出すわけにはいかないのだ。
「とりあえず、メニューはこんなものね。材料はどこから仕入れたらいいかしら?」
出店には比較的に多くの予算が割り当てられるが、材料が材料なだけに、通常のレートで取引していたのではすぐにオーバーしてしまう。
まあ、売上分で追加すれば問題ないのだけど……
「それなら、あたしのうちが横流しするよ」
手を挙げて発言してくれたのは、横長栞さんだった。確か、実家は卸売業者だったはずだ。
「助かるわ。それじゃあ、お願いするわね」
これで、材料の確保は終わり。あとは、レシピだけど……
絢介が素直にやってくれるわけがない。料理が趣味だと言う人はいないのかしら?
「誰かレシピを作れる人はいる?」
といって、誰が手を挙げてくれるわけでもない。
「最悪、高級料理の方はいいわ。一般向けのレシピを作ってもらえないかしら?」
「それなら……僕が」
そっと手を挙げたのは、三田仁志くんだった。
たしか、三田くんは小等部にいる石動財閥のご令嬢の執事だったはず。
同じクラスに通うという私たちが少し特別なだけで、この学校に執事が通っているというのはあまり珍しくない。私達のクラスには絢介以外に執事はいる。ちなみに、その執事たちの御主人様は基本的に小等部や中等部にいる。
「そう。それでは、お願いします。とりあえず、これで決まりね」
これで役割分担は決まったわね。
「由香、高級料理の方はどうするの?」
瑠奈はクラス全体が思っていることを代弁するかのように発言する。
「それなら問題ないわ。レシピは不要よ」
「それってどういう意味?」
瑠奈はますます分からないという顔をする。
「簡単よ。絢介にはレシピなんて必要ないってことよ」
「少々お待ち下さい。誰も料理をするなどとは言っておりません」
絢介は私の発言に抗議する。
「そういえば、今年はゲーム会社のSOMYと任十堂のお偉方も聖祭に来るって噂ね。そこで、美味しい料理でも出したら好評価間違いなしね」
「お任せくださいお嬢様。私には一遍の抜かりも存在致しません」
自分で言っててなんだけど、単純すぎるのよね……こいつは……




