放課後と夕食と危ない執事
放課後。
「雨が降ってきたわね。傘、持ってきてないわよ」
「全く、これだからお嬢様は。天気予報くらい確認しておいてください」
ダメ執事はため息をついたかと思うと、カバンの中から折りたたみ傘を取り出し、私に差し出した。
「あんたはどうするの?」
「私は普通の傘があります。濡れたくはございませんので」
こいつは……
「普通は逆じゃない?」
「なんのことだか良くわかりません。私はこれから買い物に行きますから先に帰ってもらえると助かります」
買い物なら大きい傘が必要なのは無理もないわね。
「分かったわ。あれなら私も付き合うけど?」
「いえ、他にも謁見したいものがございますので、先に帰ってもらえると助かります」
「……わかったわ。じゃあ、先に帰って待ってるわ」
またこいつのコレクションが増えるのか……
「お嬢様、御夕飯にございます」
「ええ、ありがとう」
今日の夕飯は肉料理らしい。昨日は魚だったっけ。毎日、コイツは考えて作ってくれているのよね。
「これって、カツレツだったっけ?」
「はい。お嬢様でも料理名くらいはおわかりになられるんですね」
「失礼ね。私だっていろいろと食事をしてきたんだからこれくらいは分かるわよ」
「これは失礼いたしました。お嬢様のことですから肉は一括して肉と思われているかと思っておりました」
うん。やっぱり失礼よね、こいつ。
「あなた、私をなんだと思っているの?」
「はあ……? お嬢様はお嬢様でしょう? 他にあるのなら教えてもらいたいものですが……」
ダメ執事はコイツは馬鹿なのか? という顔で私を見る。
「あー! もう、うるさいわね!」
こいつが静かにしてくれていたらとてもいい食事の時間なんだろうけど……
ありえないわね……
「ご馳走様」
夕食を食べ終え、ナイフとフォークを机の上に置く。
「お粗末様です。それでは、ディナーも終わりましたから謎解きでも致しましょうか」
「だめっ! それだけは絶対にダメだからね!」
それをやられると、とっても困る。まだ少ししか進んでいない話が打ち止めになっちゃう。
「冗談ですよ。そもそも、謎なんてありませんし、そんな七面倒臭いことはしたくもございません。そんなことも分からないとは、お嬢様の頭は--」
「わー!! だからダメだってば! あんたは毒舌探偵執事じゃないんだから!」
本当にコイツは何を考えているのだろうか……?
あ、何も考えていないのか……
一つだけ言えることといえば。
「あんたが一番謎よね……」
私は小さくため息をついた。




