伊集院の兄と妹
お昼休み。私達はいつもどおり、学校の中庭で昼食をとっていた。
「安心院由香! ここにいたのねっ!」
私たちの前に現れたのは、小さな女の子。身長は美玲ちゃんと同じくらいだ。
「姉様、この子は?」
「この子っていうな! 私はあなたよりも年上なんだぞ!」
美玲ちゃんは困った顔で私を見る。
「ええっと、美玲。そちらは伊集院舞奈。現生徒会長の妹で、一応私達と同じ高校二年生よ」
「いわゆる、合法ロリというやつですね」
余計な一言を付け加える、執事。
「合法ロリっていうな! このバカ!」
「はっはっは。バカにバカと言われるとはこれほど傑作なことはありません」
「う、うるさい!! どうせ、永遠の3位ですよーだっ!」
伊集院さんは自棄になっているようだ。こいつ相手に口喧嘩して、勝てる人なんかそうそういないのに。
「伊集院さん。私に何か用があったんじゃないの?」
これ以上茶番を続けられても困るから、本題に戻す。
「あ、そうよ! 安心院由香! あなたに生徒会長の座は譲らないんだからっ!」
ああ、やっぱりそのことなのね。
「いいわよ」
「――えっ!?」
伊集院さんは素っ頓狂な声を上げる。
「だから、譲ってあげると言っているの。私は好きで生徒会長を推されてるわけではないのだから」
「いやいやいや! ちょっと待ちなさいよ! 普通なら貴方には譲らないわ、的な雰囲気になるんじゃないの!? それが学園ものってものじゃないの!?」
「別にそうはならないわよ。生徒会長なんて、やりたい人がやるべきだわ」
「そんなのは私が認めないんだからっ!」
「……認めないといわれても……」
なんかもう、はちゃめちゃね……
「お、こんなところにいたか。愚妹が迷惑をかけているようだね」
「げっ……兄貴……」
私たちに近寄って来たのは先輩だった。
「ところで、由香ちゃん。君はいつになったら首を縦に振ってくれるのかな?」
ああ、もう……兄妹揃って面倒くさいわね……
「ですから、私は会長はやらないと何度言えば――」
「兄貴! 会長は私がやるって何度言えばわかるのっ!?」
「だから、お前には務まらないって何度いえばわかってくれるのかな?」
「わからないっ! だから私に生徒会長をやらせなさい、兄貴っ!」
「そんなんだから、お前に任せられないんだよ! この馬鹿」
「馬鹿っていう方が馬鹿なんだからねっ!!」
私達の前で兄妹喧嘩が繰り広げられる。
「やめなって、叔父さん、叔母さん。みっともないよー」
「叔父さんっていうなっ!」「叔母さんっていうなぁっ!!」
伊集院兄妹は声を揃える。
仲のよろしいことで。
「でも二人とも、そろそろ昼休み終わるよ? 先輩は舞奈に用があったんじゃないの?」
「あ、そうだった! 舞奈お前、俺の印鑑盗み出しただろ!?」
先輩は、思いだした、とでもいうかのようにポンと手を叩く。
「あっははー。なんのことだかさっぱりなのよ」
棒読みにしては、程がある。伊集院さんって隠し事ができないタイプなのね。
「ほう、やけに汗をかいているようだが?」
「ちっ、三十六系逃げるに如かず!」
「あ、こらっ!」
伊集院先輩は伊集院さんを追っていく。
本当にあの二人って台風の目よね……
それにしても、印鑑って何に使うつもりだったのかしら……?




