閑話休題1:誠と猫と不思議な2日 2
朝、陽の光を浴び、俺は目を覚ました。
俺は思いっきり毛伸びをする。
んん、気持ちがいいな。
それにしても、なんか周りが大きく感じるんだけど……
って――
「ニャッ!?」
ななな、なんなんだこれっ!?
どうなっているんだ?
手の先には指ではなく肉球。
何ということだろう。俺は猫になっていたのだ。
いやいや、他人事じゃなくてっ!!
て、いうかこれ夢だろっ!?
それにしては妙にリアルな夢だな……
と、とりあえず、早く目を覚まさないと! 厄介なのがやってくる……
「おや? 猫ですか」
遅かった……
部屋の扉を開けて入ってきたのは、絢介兄様だった。
「恐れ入ります、猫様。この部屋に小さい男の子はおられなかったでしょうか?」
「にゃにゃにゃ!」
いや、それ俺だし! ていうか、何真面目に猫に話しかけてるんだよ!
「そうですか。知るわけがございまさんよね。失礼致しました。そういえば、そのくせ毛は誠様に似ているような……まあ、扉は開けておくので、後は御自由に」
そう言って兄様は部屋から出ていった。
あれ……? 思っていたよりも猫に優しかったぞ? 兄様のことだから実験動物にでもされるかと思ったんだけど……
とりあえず、俺は部屋に出ることにした。
「にゃあ……」
いつも感じていたことだけど、この屋敷広すぎるだろ……
体はいつもより軽いとはいえ、なにせいつもより小さいのだ。もう、迷宮にすら感じる。
「にゃ?」
廊下を歩いていると、軽く扉が開いている部屋があった。
ここって、姉様の部屋だったっけ……?
「にゃあー」
おじゃましまーす。
部屋の中はとても綺麗に家具化揃えられていた。殺風景でもなく、モノが詰まっているものでもなく、とにかく絶妙だった。
そういえば、姉様の部屋に入るのは初めてかもしれないな。
ええっと、姉様は――
「ううん……」
勉強机の前で気難しい顔をして唸っていた。
流石に着替えのサービスシーンとはいかなかったか……
まあ、小説だしね。誰得だよね。
それにしても、姉様は随分と悩んでいるようだ。それほど難しい問題を解いているのだろうか?
俺はタンスの上に飛び乗り、机の上を覗く。猫って本当に身軽だなぁ……
どれどれ――
『いけないわ。私とあなたでは身分の差がありすぎる』
『そんなに俺が嫌かい?』
彼は私を追い詰める。
『そうじゃないけど……』
『俺が執事だから?』
『……』
何も言えない。それを言ってしまえば彼が私から手を引くのは分かっている。私は彼のことを……
『私はあなたの……っ!?』
「彼は私の唇に……」
姉様はノートに小説を書いているようだった。執事との禁断の愛的なやつですか。そういうのに憧れてるのかな?
まあ、うん。これは見なかったことにした方がいいかもしれないな。早いところお暇したほうが――
「あら? 猫?」
目が合ってしまった。
「あなた、見たの?」
目が怖い。相当怖い。こんなに怖い姉様は初めてなんですけど……
俺はフルフルと必死で首を横に振る。
「そう、みたのね」
姉様っ!? なんでペンとかコンパスとか、先の尖ったものを集めてるのっ!?
「に、にゃあぁぁあああああっ!!」
俺は恐怖のあまり逃げ出した。
「ち、外したかっ!」
待って! 本当に待って! さっきまで俺がいたところが針のむしろになってるんですけど!?
「絶対に逃がさない!」
逃がしてくださいっ!
俺は全力で廊下を走る。たまに頭の上を飛び道具が飛んでいく。正直涙目だ。
僕は扉が開いた部屋を見つけ、飛び込んだ。
3/2に続く




