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私と執事と高校生活

「お嬢様、朝食の準備ができました」


 食堂の椅子に座って待っていると、芳しい匂いとともにあいつは扉から入ってきた。


「今日の朝食はサンドイッチにございます。先日までは和食でしたがそろそろ飽きがきていたようでしたので、僭越ながら変更させていただきました」


「ありがとう」


 こういうところは気が利くのよね。ダメ執事ながら、この仕事をやめさせられない理由がここにある。彼はやればできるのだ。まぁ、やれば、なんだけどね……


 ティーカップに注がれた紅茶を飲む。


 うん。おいしい。


 口の中に微かな薔薇の匂いが広がる。


「この紅茶は?」


「紅茶はディンブラを使用しております。お嬢様は既に目が覚めきっているようですので存分に味わうことができるかと」


「誰のせいよ! 誰のっ!」


「存じ上げません。それより、早くお召にならないとせっかくの朝食が冷めてしまいます。それに、学校に間に合わなってしまわれますよ?」


「わかってるわよ!」


 食事を済ませ、用意をしてから屋敷を出た。





 私の通う聖学院はいわゆる超おぼっちゃま&お嬢様高校である。


 学校に執事を連れてくるというのは日常茶飯事ではあるのだけれど、うちに限っては少し違っている。


「あんた……授業受ける意味よね……」


 私はとなりの机に突っ伏している男子に声をかける。


「いえ、お嬢様。最高の睡眠時間でした」


「うん。それ、最低だからね」


 ほかの人の執事やメイドはそれなりの年齢なのだけど、私の執事は私と同い年。故に、同じクラスで同じ授業を受けている。なんでこんなことになったんだっけ? お父様が生きている頃にうちに迎え入れたっていうのは覚えてるんだけど……ていうか、こいつはなんで執事になったんだっけ?


 コイツのことだから適当に、とかいう理由かもしれないわね。


「ねえ、あんたって……って、いない!?」


絢介けんすけ君なら保健室に行ったよ?」


 私の前の席の親友の瑠奈がやつの行き先を教えてくれる。


 寝むりに行ったわね……


 ……あいつは、自分が執事っていう自覚があるのかしら……


 ふっ、愚問すぎるわね。そんなものは皆無か……


「二人とも相変わらずだね、由香」


「そうかしら? あいつがマイペースすぎるだけよ……」


 私は思わずため息を漏らしてしまう。


「そうかな? 絢介くんは由香のことちゃんと考えてくれていると思うよ? それに、堅いだけの執事よりは全然いいよ」


 そういって瑠奈は苦笑した。多分、自分の執事のことを言っているんだろう。私はそっちの方がいいんだけど……


 隣の芝生は青く見えるというやつかもしれないわね。


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