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生徒会長荒れ模様

 とあるお昼休み。


「由香、廊下の方が騒がしいわよ」


「そうね。それで? なぜ私にそんなことをいうのかしら?」


「それは、だってさ。これだけ騒がしいってことはあの人が来たんでしょ?」


「そう、俺が来たのだ!」


 人の垣根から顔を出したのはいけ好かないイケメンだった。


「さて、瑠奈。次の授業ってなんだったかしら?」


「――って、無視ですか!? 反応してくれないと先輩泣いちゃうよっ!?」


「知りません。泣くならば人目の無いところでひっそりと泣いていてください」


 さて、この人物伊集院いじゅういんみのる。実はこの学校の生徒会長である。この学校のほとんどの生徒から好まれており、特に女子生徒からの人気が高い。


「瑠奈ちゃん……由香ちゃんがいじめるんだよー!」


 先輩は瑠奈に泣きつく。こういうところだけを見ると本当に生徒会長には見えない。


「まあまあ、先輩。何か由香に用事があったんじゃないですか?」


 瑠奈は伊集院先輩のことを先輩とは言ったが、実は先輩は瑠奈の叔父にあたるということは私だけが知る秘密である。


「あ、そうそう。由香ちゃん、俺は正式に君を次期生徒会長に任命しようと思っている」


 ふざけた顔が一転、先輩は真面目な顔になった。この聖学園では生徒会長が後任を指名する形式になっている。ちなみに、副会長、書記、会計も同じくである。


「何度も言っていると思いますが、私は生徒会長にはなりません」


「屈強に咲き誇る一輪の花も美しい。けれど、そろそろ曲がってくれてもいいんじゃないか?」


「お断りします。それに何故私にこだわるのです? 私よりも優秀な子はいるでしょう?」


「今更そんなことを聞くかい? 答えは自分でもわかっているはずだろう?」


「それは……」


 とても簡単なことだった。答えは私が去年一年間生徒会のお手伝いをしたから。基本的に生徒会長の後任になる人は仕事の仕方を教わることになるらしい。さっきも言った通り、伊集院先輩は瑠奈の親戚である。私は一年の時はクラス委員でよく生徒会室に顔を出していた。一応、生徒会室には生徒会以外は立ち入り禁止なのだけど、瑠奈のこともあってよく通っていた。クラス委員での功績もあってか一年の時はよく仕事を手伝わされた。まあ、こちらとしても利があったから手伝っていただけのことだけれど……


 というのは、私はこれでも安心院財閥の一人娘であり、お父様が亡くなって以来、書類のチェックや、サインなどといったいわば雑務をこなさなければならないのだけれど、学校生活が忙しいという理由をつければその仕事の量は格段に減る、ということ。


 そんな軽い気持ちで手伝っていた私が生徒会長に指名されると知ったときは開いた口が塞がらない状態だった。


「……私には生徒会長は務まりません……私では役不足です……」


 呟くような声で言った。正直、先輩にこの言葉が届いたかもわからない。


「そうか……わかった」


 やっとわかって――


「こうなれば何がなんでも由香ちゃんを生徒会長にするっ!」


 ――なかった……


「ちょっ……先輩、今の話聞いてましたか?」


「もちろんだ! っと、そろそろ時間だな。俺は退散させてもらうとしよう」


 そうして、嵐が去っていった。

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