チートな執事と真剣勝負
「……うぐ……兄様に負けるなんて……グスン……」
敗北感に打ちひしがれ、部屋の隅でまるくなる誠くん。私な誠くんの前にしゃがみこむ。
「どんまい、誠くん。ほかのことで勝負すればきっと勝てるよ」
「……ほかのこと?」
誠くんは捨てられた仔犬のような目で私を見る。正直、可愛すぎる。
「そう。他に誠くんが得意なことで勝負したらいいのよ。美玲ちゃんにいいところを見せないとね」
「べべべ、別にそんなんじゃないよっ! 姉様には関係ないだろっ!」
耳まで真っ赤にする誠くん。
「あら、そう? それならいいのだけど」
私は立ち上がり、くるりと踵を返す。
「絢介? ちょっとくらい手加減してあげなさいよ?」
「お嬢様。それはなりません。男同士の戦いはいつでも真剣勝負にございます。それを手加減などできません」
コイツにしてはえらく正論ぶったこというわね。
「で、本音は?」
「弱者を完膚無きまでに圧倒するこの快感。最高にございます」
…………最っ低ね……
「それに、私が手加減して負けても誠様は嬉しくないでしょう。全力でやって勝ってこそ初めての勝利なのですよ、お嬢様。そこに女性が絡むならなおさらです」
それを聞いた私は、きょとんとした。
なによ、たまにはいいこと言うじゃない。
「兄様! 今度はビリヤードで勝負だ!」
「ええ。受けて立ちましょう」
場所は変わって遊戯室。
「ルールはナインボール。2セット先取で勝負だ!」
さてさて、結果は--
「グスン……」
絢介の圧勝。これはちょっと誠くんに同情しちゃうわ……
なにせ、誠くんは一度もボールに触れることなく試合が終了してしまったのだ。執事のバンキングは完璧で、一巡目にしてすべてのボールをポケットに落としてしまう。
ビリヤード勝負って非情なのね……
それにしても、あいつのあの技術はどこから来ているのかしら……
「くそぉ……次はダーツで勝負だ」
半分涙目な誠くんは次々と勝負を挑んでは、ことごとく敗れていった。
「ゼエ……ハア……ハア……次は早押しクイズで勝負だぁぁああっ!」
「いいでしょう。して、出題者はどなたが?」
「じゃあ、私がやる!」
やる気満々に手を挙げたのは美玲ちゃんだった。
「了解いたしました。それではスタジオに移動しましょう」
「え? ちょっと待って? スタジオってどういうこと?」
「ええ。いつの日かこういう日が来るやもしれないと思い、作っておいたのです」
本当にコイツは何を考えているんだろうか……
何も考えていないような気がするのは気のせい……よね……?




