純粋少年と卑怯な執事
「それでね、それでね--」
客間に戻ると、美玲ちゃんが楽しそうに絢介と話をしていた。絢介は一応聞き上手だから、気持ちよく話している。
そのとなりでは、机に突っ伏す誠くん。なんだか、負のオーラが出ている。
「なあ、美玲。遊ぼうぜ。そんなやつと話しても退屈だろ」
「……? そんなことないよ? 絢介兄様とお話するの楽しいよ?」
さらにむすくれる誠くん。
さて、そろそろお察しかとは思うけど、誠くんは美玲ちゃんに気があるみたい。嫉妬してる小さな子供ってかわいいなぁ。
「ああっ! 絢介兄様! 俺と勝負だっ!」
誠くんはバァン、とテーブルを叩き、ビシッと絢介を指さす。とうとう、吹っ切れちゃったか。
「勝負ですか? いいでしょう。何で勝負をいたしましょう?」
「それは、これだっ!!」
誠くんがポケットから取り出したのは携帯ゲーム機だった。
「ソフトは先月発売されたファイナルハンター。クエストはラスボス。どちらが先に倒せるか勝負だ!!」
なるほど。誠くん、考えたわね。多分誠くんは発売当初からやっているだろうから、勝てると踏んだのね。
「いいでしょう。それでは、先攻をどうぞ」
誠くんはゲームを始める。
「ねえ、絢介。あなた、あれやったことあるの?」
「いえ、やったことはございません」
ということは、この勝負は誠くんの勝ちかな。
結果は--
「負けた……だと……? タイムは過去最高記録だったのに……」
「まだまだ、甘いですよ。私のプレイ時間は既に1000を超えているのです。それをたかだか200時間でこの私を超そうなど、生温うございます」
「ちょっとまてっ! これ先月発売だぞっ!? なんでそんなキチガイみたいな時間やってるんだよ!!」
「そうよ。あなた、さっきこのゲームやったことないって言ったじゃないの」
「ええ、製品版のゲームは初めてでございます。αテスターを嘗めないでいただきたい」
「αテスター……そんなの卑怯だろっ!!」
「いえ、私は誠様の勝負にのっただけです。勝負の方法も誠様が決めたことですので、卑怯と呼ばれる筋合いはありません」
いや、普通に卑怯でしょ……
美玲ちゃんは何がなんだかわからなかったようだけど--
「……兄様、すごい」
と、感動しているようだった。誠くん、美玲ちゃんが振り向いてくれるまではもうちょっとかかりそうね。
と、いっても美玲ちゃんは絢介のことを尊敬しているだけなんだけどね。




