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今日から"にゃ"を付けて話すように①

 とてもいい匂いに鼻がぴくっと反応した。

 ああ、これは向かいの定食屋さんが鮭を焼き始めたんだ。

 よっぽどお腹がすいているのだろうか。焼き目が付く音までも聞こえる。


 食べたい。食べたい。


 焼きたての鮭の皮はこんがりとした色が付き、火照った身には油がじわり浮かんでいる。

 ほこほか山のご飯に具だくさんお味噌汁。だし巻き玉子を筆頭におひたし、和え物、漬物と小鉢も充実したフルコースな朝ごはんだ。

 では早速。

「いただきまー」

 「す」を言い終える前に舌を噛んだ。痛い。頭も痛い。

 顔をあげると怖い顔の大将がげんこつをかかげていた。

「ごるぁ、今日は早起きじゃねぇか鈴鹿。まだ店は開店前だ」

「何で私がここに。それより今日のご飯美味しそうですねー。一口頂けません?」

 痛い。とびきりの笑顔でお願いしたのにまたげんこつをとばすなんて今日も大将は野蛮だ。

 こんな美味しそうなご飯を目の前に食べるなという方が無理がある。それに追い討ちをかけるかのように、なぜか今朝の私は途方もなく腹ぺこなのだから。

「はぁー、相変わらず話聞かねぇな。いい加減目ぇ覚ませ。今日はな、俺の店がお猫様の飯係なんだ。だから街で一番早起きして特別メニューをこさえたの。申し込んでから待ち続けて三年、やっと叶った名誉をぶち壊す気か」

「それはおめでとうございます。今日は一段と食欲をそそるご飯だったのでついつい…。で、私のご飯は?」

 痛くない。少し威力の落ちた本日三回目のげんこつ頂きました。

 目の前の怒り顔も呆れ顔に変わり、諦めたように笑っている。

「そろそろお猫様直属の使者が取りに来るからもう少し待てや。無事引き渡したら作ってやるから。にしても今日のお前いつもと何か違うような―」


 言葉を遮って引戸が開いた。

 三角のとんがり耳に、しなやかな尻尾の影が戸口から伸びる。

 

「御早うございますにゃ、肴屋どの。ノミツブ隊の足係ウマと申しますにゃ。シマ様の朝ごはんを頂きに参りましたにゃ。」

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